第二部 第二話『見えない街』
境界を越えたはずなのに、世界は何も変わっていないように見えた。
建物も、空も、人もある。
ただひとつだけ違う。
――“存在の濃さ”が違う。
茜音の違和感
「ここ……さっき通った?」
茜音は立ち止まる。
同じ交差点。同じ信号。同じコンビニ。
でも、どこかが違う。
看板の文字が、読めそうで読めない。
(ちゃんと見えてるのに、頭に入ってこない)
月斗の解析不能
「ズレてる」
月斗は短く言う。
「空間じゃない。認識そのものが揺れてる」
彼の未来予測が、うまく機能しない。
(結果が“固定されない”)
(ここは予測できる世界じゃない)
氷雨の感覚
氷雨は黙って歩く。
足音が軽い。
なのに、地面が沈む感覚がある。
(ここ……現実じゃないみたい)
冷気を出していないのに、空気が少し冷たい。
“見えない人々”
道の向こう側に人がいる。
歩いている。
会話している。
でも――
近づくと、その存在が薄れる。
「……今の人、見えた?」
茜音の声が少し震える。
月斗の結論
「観測層が違う」
月斗は空を見上げる。
「ここは“現実の外側の下層”だ」
虚無機構・外層管理者
どこか。
白い部屋。
記録装置の前で、静かな声。
「境界外層、安定確認」
「対象群、観測下へ移行」
茜音の声
「じゃあ私たちって今……どこにいるの?」
誰も答えない。
氷雨の微かな変化
氷雨は周囲を見ている。
さっきまで普通だった景色が、少しずつ“薄く”なっていく。
(ここにいるのに、ここにいないみたい)
月斗の初めての“誤差”
「……おかしい」
月斗の声が少し揺れる。
「俺の予測が全部“途中で消える”」
接触
その時。
道の先に“人間ではない影”が立っている。
顔がないわけではない。
存在が“固定されていない”。
声が響く。
「外層進入者確認」
初衝突(軽い戦闘)
月斗が動く。
「重力固定」
しかし――
影は“固定されない”。
力が通る前に、意味が薄れる。
「効かない……?」
茜音の揺らぎ
「どういうこと……?」
茜音の声がわずかに乱れる。
その瞬間、周囲の空気も乱れる。
(感情が世界に影響してる……?)
氷雨の直感
氷雨は気づく。
(ここ……私たちの世界より“上”じゃない)
(むしろ……“薄い”)
退避判断
月斗が即断する。
「引く」
戦う場所じゃない。
ここは“戦えるルールが違う”
追跡の気配
影は動かない。
だが――
“見られている感覚”だけが残る。
茜音の一言
「ねえ……これ、ほんとに現実?」
誰も答えない。
氷雨の小さな答え
氷雨は少しだけ言う。
「……現実じゃないなら」
「壊してもいいのかな」
月斗の返答
「それはまだ早い」
最後の観測
どこかで記録される。
「外層適応開始」「対象群:認識干渉影響あり」「観測優先度上昇」




