第三部 第一話『神域』
光が収まる。
三人が目を開けると、そこには空も地面もなかった。
白く輝く無限の空間。
足元には、水面のように透き通る床がどこまでも続いている。
歩くたび、小さな光の波紋が広がった。
「……ここが、第七階層。」
月斗が静かに呟く。
その声さえ、世界に吸い込まれていく。
神域の空
空には巨大な歯車がいくつも浮かび、ゆっくりと回転していた。
その一つひとつが、世界の法則を刻んでいるようだった。
氷雨は胸を押さえる。
(ここ……私の力が反応してる。)
零界凍結が自然と発動しかける。
しかし今までのような冷気ではない。
淡い青い光が体を包んだ。
茜音の違和感
「声が……響かない。」
試しに呼びかけても、反響が返ってこない。
まるで、この空間には「音が跳ね返る」という法則すら存在しないかのようだった。
月斗の能力
月斗は重力を操ろうとする。
しかし空間は動かない。
「……違う。」
「重力がないんじゃない。」
「重力という概念を、この場所が許可していない。」
神域の番人
三人の前に、一人の人物が現れる。
純白のローブ。
金色の長い髪。
年齢も性別も分からない、不思議な姿。
「ようこそ。」
「神域へ。」
その声は穏やかだった。
名乗り
「私は長嶺咲希。」
「神域の番人です。」
茜音が一歩前へ出る。
「敵なの?」
咲希は静かに首を振る。
「いいえ。」
「ですが、あなたたちが資格を持つかどうかは見極めます。」
試練
咲希が指を鳴らす。
世界が揺れる。
三人の前に、それぞれ一枚の扉が現れた。
「この先には、あなたたち自身がいます。」
「過去でも未来でもありません。」
「本当の自分です。」
氷雨の扉
氷雨の扉には、氷の結晶が刻まれていた。
その奥から聞こえる。
「全部凍らせれば、もう誰も傷つかない。」
氷雨は目を閉じる。
その声は、自分自身のものだった。
茜音の扉
茜音の扉には、赤い花が咲いている。
奥から少女の泣き声が響く。
「本当は笑いたくない。」
茜音は息を呑む。
忘れたと思っていた、自分の本音。
月斗の扉
月斗の扉には、星空が映っていた。
その中から少年の声。
「未来が見えるなら、誰とも関わるな。」
それは昔の自分だった。
その頃。
神域の最奥。
巨大な黒い玉座の前に夜城零は立っていた。
「来たか。」
その視線の先には、世界核よりも大きな黒い結晶。
結晶の中から、ゆっくりと目が開く。
「観測は最終段階に入る。」
低く響く声。
世界そのものが震えた。
咲希の言葉
「この試練を越えられなければ。」
「あなたたちは夜城零に勝てません。」
「力ではなく、自分自身に。」
ラスト
三人はそれぞれの扉の前に立つ。
誰も逃げない。
誰も目を逸らさない。
そして、同時に一歩を踏み出した。




