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僕らは護られていた  作者: 齊藤さや
第一章
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シュログの信用

 目を覚ますと、部屋には二人とも居なかった。荷物はあるから出掛けに行ったらしい。暫く待っても帰ってくる気配が無いので、寝てばっかりで皺の入った服を着替えてから外に出てみる。

 街のことはさっぱり分からないから探すあても無いのだが、俺は完全にシュログを信用した訳じゃない。始めからシュログもロズが目的だったのかもしれないからな。まわりを見渡してみても店で見たようなガラの悪そうな人ばかりだ。店の看板を見ても人名の店名が多くて、何屋なのかも見当がつかない。

 闇雲に歩き出そうとしたが、ふと思い返して後ろを振り向く。そうだ、クララさんに聞こう。


「すみません、ちょっと聞きたいんですが」

「料金のことかな? 昨日女の子の方から延泊の申し出があったから今日の分は貰ってるよ」


 確かに一泊分しか払ってなかった。昨日のうちに払ってくれていたのか。俺不甲斐ないな。


「そうだったんですか。あの……騒いでしまいすみませんでした」

「汚さなければいいよ。聞きたいことはそれだけかな」

「いえもうひとつ、その女の子が今朝宿を出ていったと思うのですがどこに向かったか分かりますか?」

「あぁ、だいぶ前にシュログと出ていってたね。食べ物の話してたから『ナルサの気まぐれ屋』にでも行ってたんじゃないかな。食堂の三軒となりにあるよ。まだ居るか分からないけど」

「ありがとうございます」


 一礼して店を出たら軽く走りながらナルサの店に向かう。なぜ本気でないのか、そんなのは簡単だ。周りの人に肩でもぶつかったらどうなるか分からないからな。先日の一件で俺に喧嘩は無理だと悟った。ならば避けるだけだ。




 着いたは良いものの店には客が一人もいなかった。やっぱりもう二人は出ていった後だったのか。恐らくナルサという名の店主に話をしてみる。


「すみません、シュログさんがさっきこの店に来たと思うのですが」

「あぁ来たよ。食品をだいぶ買ってくれたけど、冬眠前か何かか?」

「……違うと思いますけれど。どこに向かったか分かりますか?」

「冗談さ、シュログを探してるのか。借金がどうの言ってたから、そこら辺のバーにでも行ってるんじゃないのか?」

「そうですか。ありがとうございます」


 店を出ようとしたが、店主は俺の顔をじろじろと見てきたので足を止めた。やがて店主は何か納得した顔をして言った。


「もしやシュログの隣にいた嬢ちゃん、あんたの連れかい? 人の女を取るような真似する奴じゃないから安心しなよ」

「本当ですか、信じていいですか」


 ロズが心配で、夢中で聞き返してしまったが、店主は苦笑いして答えてくれた。


「あぁ、十何年見てきた俺が言うんだから間違いない。あいつは喧嘩っ早いし逃げ足も速いが、盗みや犯罪に手ぇ染める奴じゃあねえ。盗み(まが)いの事はしてるけどよ」

「紛いって……何をしたんですか?」

「俺から言うのは告げ口みたいで好かないんで本人から聞いてくれ。俺が察するにあんたがシュログに会える頃には綺麗さっぱり()()できてるんと思うけどな」

「よく分からないですが、悪い人ではないんですね」

「あぁ街のチンピラ共以外からは好かれてるさ、奴は。あんた奴と知り合いじゃあ無いのかい?」

「色々あって三人で旅することになったんですが、何より唐突だったのでシュログさんの人となりを何も知らないんです」

「そうだったのか。だからあの量の食料……サービスすりゃ良かったかな」

「そのお気持ちだけで十分です。では俺は探しに行きます。お話ありがとうございました」

「おうよ、気ぃつけてな」


 二人は見つからなかったが思わぬ話が聞けた。シュログが悪い人じゃないなら無闇に探すより宿で待ってた方が良いかもしれない。逆に心配されちゃ堪らない。そう結論をだして来た道を戻りだした。

 宿が見えてきたと思ったら、俺が行った方の反対側の道から、昨日は無かったリュックサックを背負ったシュログとロズも見えた。安堵で駆け寄ると、俺の姿を捉えたロズが目を見開いた。


「もしかして私達を探してた?」

「もしかしなくてもそうやろうな。黙って行って、ごめんごめん。」

「何事も無かったからいいさ。でも何してたんだ?」


 そう訊ねると、シュログはばつが悪そうに下を向いた。


「ええとちょっぴり言いづらいんやけどな……」

「ここで立ち話もあれだし、荷物も置きたいから宿で話さない?」

「そうだな」


 三人で宿に入ると、クララさんが「会えたんだね」とでも言うように目配せしてくれたので会釈で返す。

 部屋に戻るなりシュログはリュックサックをベッドに投げた。


「重いなぁ、重い。これからこんなん持って歩くんか」

「そのうち馴れるよ」

「ロズちゃんが言うなら耐えなあかんな」

「男なのに力無いの?」

「そういう訳や無いで? わい身軽なのが好きやから、いつもポケットに詰めれば事足りるねん」


 確かに普通に街を歩くだけなら何も持たずとも困らない。


「財布も入れるの? 最近盗られちゃったんでしょ」


 ロズがそう聞くと、シュログはしばし黙ってしまった。まさか財布持ってないとか? そういえば、ナルサ(仮)さんから聞いた事を尋ねてない。お金がらみらしいし今聞くか。


「もしや財布元々持ってないとか? まさかな。ところで話変わるけどさっきまで買い物しかしてなかったのか?」


 ロズがばつの悪そうな顔にさっと変わる。思った通りだ。


「それなんだけどね、コース君……」

「いいやロズちゃん、わいから話すわ。どうやら何か知ってるようやし」


 「顔に出とるし」と呟くシュログの顔は寧ろ清々しい。


「わい達の第一目標は買い出しだった。わい生活出来そうなもん持ってへんかったし。ただ、旅する言うたら店のあんちゃん達が素直に行かせてくれへんのや。ここ何日かお金がな……底をついてぇな、ツケにしてもらってたんやな。それをロズちゃんに払ってもらったんや」


 言い終わると軽く頭を下げた。酒場で俺の話を聞いてくれてた時のように真剣な目をしている。


「これから案内してもらうんだしおあいこでしょ。コース君心狭いんだから」

「でも女将さんから貰ったお金だよ?」

「元々貰っちゃって困ってたんだし、丁度良いじゃない」

「そういう物じゃないだろ、お金って」

「わいもお金の分以上働くから。ロズちゃんを許してあげて」

「シュログは何で矛先すり替えてるんだよ」

「バレたか」


 舌を出して頭を掻くシュログは到底反省しているようには見えなかったけれど、街の人から信頼されているのも分かる気がする。……気のせいじゃないと良いが。


「さて、早速お返しにここら三国についてわいが知ってること教えたるわ」

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