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僕らは護られていた  作者: 齊藤さや
第一章
7/38

目が覚めた場所は

「……」


「…………」


 内容は聞き取れないが誰か二人が喋っているのが聞こえる。もっとよく聞こうと目はつぶったまま上体を起こす……待てここは何処だ? 確かに俺は居酒屋にいて、ロズを守って……。



 駄目だ、その先がよく思い出せない。俺が頭を抱えていると、ロズの声がした。


「コース君、おはよう。頭痛いの?」


 そして、聞き覚えのある声がもう一つ。


「ちっとやり過ぎたかなぁ。すまんすまん」


 怖々目を開けると、小汚ない部屋にロズと金髪の男がいた。そして俺はと言うとベッドの上だ。


「ロズ、俺はなんでこんなとこにいるんだ? それと、……」


 金髪の男は誰かと聞こうとしたが、口より先に思い出した。居酒屋で話していた男だ。


 そうだ、俺はこの男と話していたはずだ。そしたら気を失って……。はっ、ロズは無事なのか?


「なんでお前はロズといるんだ?」


 混乱やら心配やらで、指をさしながらだいぶキツい口調で言ってしまったと後から気づく。流石に失礼かなと思い直し、手はすぐに下ろした。


「なんでって……酷いなぁ。色々と大変やったんやで。なぁ、ロズちゃん」

「そうだよ。シュログさんが居なきゃ、コース君店で暴れだしてたんだから」


 記憶がないので何とも言い返せないが、取り合えず「すみません」と謝っておく。


「ロズ、このシュログって人と結構話してたのか?」

「コース君が気絶してから今までずっと話してたよ。それと、さっきから目が泳いでるけど、ここはクララさんの宿の部屋だよ」


 そうか、じゃあこのシュログって人が俺をここまで運んでくれたのか。尚更ばつが悪い。


「そういやぁ、わいの自己紹介がまだやったな」


 そう言うなり、金髪は立ち上がって俺を見下ろすような体勢になった。


「わいはシュログ。この街じゃ名の知れた、チンピラどもに恐れられてる"ナックラー"や」

「ナックラーって?」

「知らないのかい。(こぶし)そのものや、拳で闘う人のことや。まっ、わいはこの"メリケンサック"を付けるけど」


 シュログがポケットから不思議な形の金属の塊を取り出し、俺に見せた。先端は尖っているかと思ったが、案外丸くなっている。


「かっこいいやろ。一応相手があんまり怪我しないように流線型の物しか使ってないんや」


 かっこいいとは思わなかったが、形の由来には感心した。メリケンサックを返すと、すぐにポケットにしまわれた。


「そんでも、病院送りにはなるけどな」

「そんなに痛いんですか」

「気になるんやったら一発受けてみるか?」


 シュログがファイティングポーズを取るとロズは慌てて首を振った。シュログはそれを見て豪快に笑った。


「女性にそんなことするかいな。コースに一発お見舞いしてもバチは当たらへんやろうけど。そうそう、コースって呼んでええか?」


 昨日の今日会った人に呼び捨てで呼ばれることに何ら抵抗は無いが、殴られるのは嫌だ。当たり前だ。


「いいけど、何で俺が殴られなきゃならないんだよ」

「お世話になったからじゃない?」

「ロズまで肩持つのかよ、その、シュログの」


 またシュログが大笑いしだした。俺はちょっと膨れる。





 笑いが収まった頃、真剣な顔つきに戻ったシュログが口を開いた。


「こっからはロズちゃんにも言って無い話なんやけど、わいを二人の旅に入れて欲しいんや」


 俺は驚いてロズの方を見た。ロズも驚いているようだけれど、難色を示しているようではない。


「俺達は楽しい旅をしているんじゃない。二人で復讐をするだけだ。申し訳無いがシュログは入れられない」

「ほら、また二言目には"復讐"や。その気持ちも分かる……いや、そりゃ全部は分からん。分からんけど。でも心配なんや。感情に流されてしまって取り返しのつかんことになりそうで。それにこの辺の事なんも知らんようやし」

「確かに分からないけど……」

「良いじゃない。何があるか未知数だけど、危険を冒してまでシュログさんが来てくれるって言うなら」

「ロズちゃん言うなぁ、覚悟できとるからええけど。わいそこまで言ったか?」

「途中までの護衛ぐらいだと思ってた」

「ほらな……って逆にコースも酷いな。わいはな、復讐に手を貸すことはできんかもしれんけど、気絶させるくらいやったら誰にでもお見舞いする気やで。ここで燻ってるより二人を救えた方がええし。それに話聞く限り、吸血鬼(てきさんら)も数人どころじゃ無いやろ」

「あの日見ただけでも数十はいたな」


 言ってからはっとロズの方を横目で見ると、頭を抱えていた。あの日の話題はご法度なのに、気遣いが足りなかった。早く決断しなければ。


 始めは余計に人を巻き込む訳にはいかないと女将さんにも黙っていたけど、結局助けてもらっちゃったし……。


「シュログの好意は断れないな。……確かに俺達は未熟で弱い。世の中のことも全くと言っていいほど知らない。だから一緒に来てください」


 俺は立って頭を下げた。顔を上げた時、シュログは俺の目をじっと見て拳で胸を叩いた。


「勿論や。二人とそこまで歳離れとるわけや無いけど、知識や経験は豊富やから頼ってええで。生まれも此処やないからヴィレタレアン国のこととかも知ってるし」

「それどこにあるの?」


 俺も知らない名前だった。そもそも自国のことすらろくに知らない訳だけど。


「やっぱり知らんのか。この辺で一番大きな国や言うのに。ほんまによう旅に出る気になったなぁ」


 シュログは呆れ顔だ。吸血鬼のことしか考えてなかったんだ、仕方無いじゃないか。


「いやコース~、茶化しただけやのにそんな怖い顔で睨まれても……分かった分かった。わいが講義してあげるから」

「俺睨んでた? ごめんなさい」

「コース君すぐ顔に出るんだから」


 二人に言われて初めて気付く。本当に無意識だった。つい顔を触ってしまったが、確かに筋肉が強張っている。女将さんにも散々言われてきたがやっぱり直らない。


「その調子じゃ嘘もつけへんのやろ。……黙っている所を見ると図星やな。分かりやすいなぁ、ほんま分かりやすい」


 何も言い返せない俺が辛い。ええいやけくそだ。


「あれ、シュログに殴られた所がまた痛くなってきた。あぁ……」


 首の後ろを(さす)りながらバタンと大袈裟にベッドに倒れこむ。ロズが心配して駆け寄ってくれたのを尻目に、ふて寝に入る。

エセ関西弁にどうかお付き合いください

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