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僕らは護られていた  作者: 齊藤さや
第一章
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セルバという街

 シュログに先導されるがまま住宅街を横断し、川の方とは別の位置にある門に辿り着いた。警戒していた門は、ちょうど門番の交代の時間だったようで、国を出ていく俺達は軽く挨拶しただけで通してもらえた。


「なあシュログ、セルバってまた警備厳重なのか?」

「ベルタンよりはマシらしいけど、二人ともなんか捕まることでもやったんか?」

「やってないよ。シュログじゃないんだし。ただコース君はナイフ持ってるでしょ」


 やっぱりロズは分かっててくれたんだな。シュログはなるほどと言った顔で手を叩いている。俺はジェルドに「武器はない」と言われた時、動揺が顔に出ないよう必死だったのに。


「そやそや、わいもメリケンサック持っとった。気ぃ付けなきゃあかんわな」


 そう言って笑っている。怪しく思われなきゃ平気だと思うけど、まず俺達の年齢からして無理だと思う。


 そのまましばらく歩いていると、シュログが音をあげた。


「もう結構歩いたんとちゃう? ここらで休まへん?」


 シュログが指差すのは、しっかり固められた道路の脇、一定間隔で植えられている木の側だった。


「まだ街からそんなに離れてないけど、見回りとか来ないのかな」

「わいに聞かれても知らへんで。でもまぁ大丈夫やろ、なんかあったらわいが真っ先に気絶させといちゃる! 大丈夫や」

「じゃあ良いか、今夜は寝袋だな。でもその代わり朝早くから歩くからな、シュログ起きろよ」


 もちろん急いでる訳じゃないのだが、何かシュログに課したかった。


「起きてへんかったらロズちゃん起こしてぇな」

「もちろん!」


 どうも上手くいかない……。










 結局シュログは当然のようにロズに起こされた。食事と片付けを済ませて歩き出す頃には、すっかり明るくなっていた。

 道中大きな袋を背負った人々と何度かすれ違った。


「あの人達みんな市場に持ってって売るんやで。野菜やろうか?」


 意外と今日は寝起きが良いみたいだ。ずっと喋っていたお陰で、それなりの距離も退屈せずセルバの目の前まで辿り着くことができた。こっちの門番はとても優しそうでにこにこ笑っていた。


「何しにセルバに来たんですか?」

「カナビラに行く途中で、一休みたいしたいんです」

「三人ともそうですね」

「はい」

「分かりました。カナビラまでは距離がありますからね。馬車も出てますし、利用するのも一手だと思いますよ」


 礼を言って門をくぐる。真っ先に見えたのは白く大きなお城。街の中心部に建っているようで、距離はあるが迫力がある。


「これからどうする?」

「まず今夜の寝床探さんとあかんやろ」

「……お金無いけどね」

「ま、まあなんとかなるやろ。ほら、二人は宿にいたんやろ? 働かせてもらったりとか出来るんやない?」


 住み込みみたいなものか。確かに可能性はありそうだ。


「なるほど、その手があったか。シュログにしてはやるじゃん」

「ほんとねぇ」

「だから何でたまに二人でわいを攻撃するんや……良いことしたんやけどなぁ」


 呟くシュログは放っておいて、宿屋を探す。言っていた通りあちこちに宿屋はあったが、当然ながらどこも良い顔はしなかった。合わせて吸血鬼のことと、カナビラのことについても尋ねてみたが、知らないの一点張り。余計怪しく思われたらしい。


「私も急に噂話とか世間話なんてされたらそれとなくあしらっちゃってたから……当たり前よね」


 ロズでさえこうなのだ、泊まる件も吸血鬼の話も難しいかもしれない。そう覚悟して何軒目だったか、ついに泊まり込みについて首を縦に振ってくれる所を見つけた。


「本当に接客の経験があるんだろうね?」


 そう何度も聞いてきたのは、中々ご年配の宿の女将さん。「カティナさんの宿で働いてました」とは言ったものの、案の定そんな"辺境"のことは知られてないらしい。

 今朝階段で転けて腰を痛めてしまったそうで、シーツを直したり掃除したりだとかをやって欲しいと言われた。けれど、幸いにもそれらは俺の仕事だったから早さと丁寧さには自信がある。

 ロズとシュログ、俺の二手に分かれて全ての部屋と廊下を掃除した。特に高い所なんかは埃が溜まっていて手間取ってしまった。確認まで終えてフロントに戻ってきたら、また疑いの目を向けられた。


「早すぎやしないかね?」

「きっといつも以上に丁寧にやりました」


 ちょっとムキになって言い返してしまった、と後悔したがもう遅い。あくまで俺たちは泊めてもらう身だった。

 試すような間のあと、女将さんが口を開いた。


「そうかい、そんなに自信あるならもういいよ。好きな一部屋使いな」

「ありがとうございます」


 誰よりも先に答えたのはロズだ。


「あんた、男二人とずっと居て辛くないんか」

「いえ、何か問題でも?」

「なんでもないさ。そのズボンが似合ってるって言いたかっただけだね」

「これくらいしか持ってないんです」

「そうかい……。珍しく同情的になるよ」


 女将さんは後ろを向くと、それ以上何も言わなかった。これから何をしようか。まだ明るいし部屋に(こも)るには勿体無い。

 そうだこんな大きな街だし、きっと図書館でもあるだろう。引き続きカナビラや吸血鬼について聞きながら、図書館を探して文献を漁ってみよう。

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