4話 海を制せよ航海術
海を見て感動病にかかってしまったユピタ。心の中で海に勝つために、港一の船乗りに航海術を教わる。「俺」と「俺の最強」を探す冒険ファンタジー!
アマルガ「ボーヤ!よく聞きな! あたしらは海に勝てる! いくら海が美しくても、少なくとも大人なら見とれ死んだりはしないよ。なんでかって、あたしらはその美しい海をも利用して、たくましく生きていける己の腕に自信があるからだよ。」
ユピタ「俺に、航海術を教えてください。はぁ はぁ そうすれば、何とかなると思うんです。」
アマルガ「こっちだってそのつもりさ。この初心者向けの船、カラベル・ラティーナを教えるよ。とりあえず乗りな。」
磯香ただよう船着き場を、センリに担がれたまま進む。カモメの声も美しい。本当に、海に勝つことなんてできるのか?
アマルガ「一応名乗っとこうかねぇ。あたしはアルの長老アマルガ。40年くらい前は世界一の船乗りだった女さ。できる限りのことを教えるよ。あとは、おまえさん次第だ。いいかい、まず操船の基本は風だ。向かいたい方向が風上だったら三角帆をこの向き引っ張って…」
はぁ はぁ だめだ。話が耳に入らない。俺、死ぬのかな。海になっちゃうのかな。あぁ人だったころの思い出がよみがえる。短かった数日の人生、送る回想が、超スローになった今とつながる。時間の流れが歪み、今見えるだけを見渡せる。
そのとき、目に映ったのは、光り輝く船乗り。あれは、アマルガさんか?走馬灯も悪くないな。ゆっくり、はっきり、美しい世界を丁寧に見れる。開けた視界、青空の下、さえた頭に航海術の髄が流れこんでゆく。
ユピタ「海は、果てしなく美しい。だけど、何百年、脈々と継がれ、磨かれてきた、人が海を制する航海術…か、かっこいい!」
アマルガ「ようやくわかったかい。その気持ちだよ。この世は、あたしらの心をふるわせるもので満ちあふれてるんだ。一つの感動で終わるなんて人生損だ。心がゆらげる若いうちに、めいっぱい楽しんどくんだよ。いつかあんたの『最強』が決まるまで、な。」
ユピタ「アマルガさん!本当にありがとうございました。この船かりて、クレイバまで行ってきます!そうだ、トルのドルガンさんから、これわたされたんですけど、」
俺は押し花を取り出し、アマルガさんにわたした。
アマルガ「まあ、まあ、あいつったらいつのまにか、気の利く男になりやがって。これはあたしの一番好きな花さ。あいつは…あたしがこのバラになりかけたときに救ってくれた男なんだよ。」
うれしそうな顔をしている。いつか俺にも、そんな人ができるかな?
ユピタ「じゃあ、行ってきます!」
アマルガ「ああ、行ってきな!強くなれよ!」
センリ「たのんだで、ユピタ。おまえの航海の腕にかかってるんやからな。」
ユピタ「大丈夫、今の俺ならどこまでだって行けるさ。」
アマルガ「はあ、行っちゃったか。クレイバ…?なんかあったような気がするんだけどね。まああの二人なら心配ないわ。」
ユピタ「よし、このペースでいけば明日にはつくよ。」
センリ「ちょっと待て、ユピタ。海の中になんかおるで。サ、サメだぁー!どないしよ、船の上じゃ逃げれへん。」
ユピタ「うわっ、しかも前にも急に3匹現れたよ。ていうか、囲まれてる!」
センリ「たぶん、こいつの能力や。ピンチや!」
ユピタ「大丈夫だって。この波をレールにして、かけあがれば、ジャンプ!して、ほら突破できた。あとは帆を使ってまくだけ。」
センリ「ほえー、ユピタ自分すごいやん。これならたしかに行けそうやな。」
といい終わる間もなくあたりに雷雲が立ち込めた。
ユピタ「やばい嵐だ。でも、これくらいなら…」
ドンッ ウィーーン ガシャン
なんだ!?何かから攻撃を受けている!でも嵐のせいで見えない。船は横転し、俺たちは海へ放り出された。
ユピタ「センリー! 泳いで!」
センリ「ユピター! 最悪、クレイバで合流や!とにかく、死ぬな!」
それだけが聞こえ、俺たちは別々の方向へと流されていった。
ああ、またか。俺は何回死にかけるんだ?今だって、遅く流れる時間のなか、生き残るすべを考えている。嵐の中、影を頼りに状況を探る。あれは、船か?俺らの船の十倍はある。あれは、人影?人影が近づいてきて俺の顔をのぞきこんだ。そこで俺の意識は途切れていた。
1章完結!何者かに捕縛されてしまったユピタ。気が付くとそこは、船上専門技術学園モフィーであった。そして学科抗争が今、始まろうとしている!次回、2章 世紀末の船上学園、5話 電気科組長!助太刀するぜ




