33話 そうしてここは「古代研究」都市と呼ばれた
あとむの能力で重力の発生源を止め、戻ってきたユピタたち。どうやら強い走馬灯を見ると、何日もスキップしてしまうようだともわかった。現在公表されている寿殿我族の秘密をすべて知ったユピタたちは、さらなる秘密を求めて旅を続ける。3章最終話 「最強だと思ったもの」が能力になる世界の旅。「俺」と「俺の最強」を探す冒険ファンタジー!
なにがなんだかわからないが、俺が陽炎のように儚い種族「寿殿我族」である限り向き合わなければならない問題だ。寿殿我族の秘密…
地を語る種族で、時を操る種族で、1000年に1度卵からかえり1年だけ生きる。奈落の下から聞こえた声、あの声の主ならもっと何かを知っていそうだが、あの探偵の親玉なら相容れることはできなさそうだ。
セムカ「ユピター、ユピター、ねぇ、話聞いてる?」
はっ、つい考え込んでしまっていた。ここは、クレイバの中心、誓いの宮。一夜明けて事件は解決し、平和な都市へと戻っていた。
…とはいっても、俺の走馬灯、重力の一時消滅によって地上では8日も時が過ぎていたのだ。
警部補「ユピタくん、跡武くん、無事でなによりだ。怪盗赤月光は自首し、世界警察本部のカミラリオンに連行された。跡武くんには礼を言っていたよ。懲役5年が終わったら真の科学者としてやり直すそうだ。」
あとむ「そうですか、それはうれしいですね。」
チェイサ「それにしてものう、赤月光が赤月照からもらった能力を使っていたとは、捕まらないわけじゃ。」
センリ「オヤジ、赤月照のこと、なんや知ってんのかいな。」
偏さんの恩人で、絶対に捕まらない能力者…と言ってたな。
チェイサ「知ってるも何も、わしが逮捕したんじゃ。もう30年以上前の話じゃけ。あとな、赤月照はわしの嫁、万里じゃ。」
ユピタ「え! あのお母さん?」
セムカ「お母さま!?」
センリ「昔から迅いおかんだと思ってはったけど、怪盗やってたんか。」
チェイサ「まぁ、のろけ話は今度会ったらたっぷり聞かせてやるけぇ。それよりも、今のお前らにゃあ義父上コマッズさんの研究が必要じゃけぇ、跡武坊に聞いてこいや。」
ユピタ「コマッズさんの研究? どうしてそれが必要なんですか。」
チェイサ「まぁ、行ってみりゃ分かる。センリ、楽しく生きろよ。」
いつもよりちょっと親らしかった警部は、イレブンスターをふかしながら宮の外へと消えていった。
さて、コマッズさんの研究について聞きに行こう、あとむはここにいるけど。
あとむ「コマッズ師匠の研究ですわね。師匠の研究所に行って話しますわ。」
ということで、コマッズさんの研究所へとやってきた。やはりクレイバ一広い研究所で、研究員が何十人もいる。だが、科学というより地理の研究に見える。
あとむ「こちらが師匠の研究されていた、『この星の形』ですわ。」
細長い地図があり、それを球に巻き付けたような図もあった。この球の中心線が赤道、軸と交わったところが極地であろう。しかし、赤道周辺の一周しか地図になってはいない。
あとむ「私は詳しくありませんので、ご主人様に交代しますわね。」
あとむがセムカをチラッと見た。
セムカ「はいはい、子守歌ね。もう恒例じゃない。 ♪生きる喜び~かみしめる歯はもうない~」
すやぁ 研究所のカチカチのイスなのに、なんて幸せそうな寝顔なんだ。あとむが眠り、跡武が起きる。
跡武「説明任されました。いきますよ。この星の外周だけ調べて、師匠は研究を辞められたんです。なんでも、立体的に知ることで最短交易路がわかるとか。最後にはお金に行きつく人です。」
センリ「せやな、あのケチじじい。」
跡武「そのせいで地図の続きは世に公表されず、この星が球なのかわからないまま40年がたったんです。現在は廻尾博士の地球説が有力です。だけど、僕はこれと違う仮説を立てて研究しています。それが地盤説です。」
! 今回盗まれた資料の内容か!
跡武「この透明球の赤道にだけ地図が書かれているでしょう。私の説では、この透明部分は存在せず、薄っぺらいリング状の地殻だけが宇宙に浮いている。つまり、僕たちが落ちた奈落は宇宙だということです。」
ユピタ「でも、それだと奈落に空気があったのがおかしくない?」
跡武「うーん、そうなんですよね。どうもうまくいかないのですが、少なくとも大地は薄っぺらく、裏返れる必要があるんです。」
セムカ「裏返る…? どういうこと?」
跡武は資料を取り出して見せてくれた。地表と、奈落の天井が入れ替わったってこと⁉
跡武「500年前より前の遺跡って、ヘンなんですよね。さかさまの家が地面につきささったような。このクレイバだって、奈落がなければ水が溜まっていくよくない構造をしています。世界の上下がどこかで逆転したとすれば辻褄が合う。そのためには、地殻が薄い板である必要があるんです。」
500年前…寿殿我族のいた時代。いったい何があったんだ? 俺はこれを知らなければいけない気がする。
跡武「そこでなんですけど、僕を冒険に連れて行ってくれませんか? 行くべき先は、この地図の南端にあたる遺跡、タイラナミッド。」
センリ「なんや、ワイもワクワクしてきたで。」
セムカ「調べに行こうよ!」
俺も運命に導かれるような思いがして、思わず跡武に手を差し伸べた。
ユピタ「行こう。この世の秘密を紐解きに。」
クスッと笑って跡武も俺の手を取ってくれた。
跡武「行きましょう。そのセリフはクレイバでの常套句ですよ。」
オプスクラ「おお、お前たち行っちまうのか。達者でな。」
…オプスクラさんのことぜんぜん忘れていた。結局クレイバ南西の大陸門まで見送ってもらった。
さらば、クレイバ。俺はさらなる秘密を探りに行く。
歩いてると、やはりよくしゃべるのは跡武だ。
跡武「そういえば、コマッズさんは研究の過程で、寿殿我族の遺したものから様々な分野のヒントを得たんです。古代を研究することで、この世の秘密を紐解いていく。そうしてここクレイバは、「古代研究」都市と呼ばれるようになったんです。」
跡武「遺跡まではかなりの道のりがあります。途中、透明王国ホワール、パリピの治める墓地メビウスガルドを通ります。」
ふーんと思って聞き流しているうちに、なにかものすごくいい匂いが漂ってきた。実は生まれてからまともな食事を一切していないことに、生後16日目にして気づいた。思いがけなくアスナロや跡武から食糧はもらったが、グルメに触れたことは一度たりともない。導かれるように匂いを追って走り出す。
ゴンッ 荒野に出た途端、何かにぶつかった。いや、何もない、…? けど、何かある。見えないだけだ。
跡武「ユピタさん! 大丈夫ですか? でも、つきましたよ最初の通過都市、透明王国ホワール。ここは、人も建物もすべてが透明なんです。」
…えええええぇぇぇ⁉
クレイバから旅立ち、新しい町についたユピタたち。そこは世にも珍しい透明人間が暮らす国、透明王国ホワールであった。透明でも、匂いと味は抜群! ホワールの料理に魅了されるユピタだったが…? 次回 4章 真実を透明化した王国 34話 食べる幸せかみしめる




