山岡 康太
俺は山岡康太。男子バスケ部の副キャプテンだ。身長はあまり大きくないが、ディフェンスにはかなり自信があり、部の皆からはとても頼られている。顔もまあまあイケてて、いままでに5回も告白されている。
だけど、全てお断りさせてもらっている。……なぜなら、俺には最愛の人がいるからだ!
彼女は東堂光。俺の幼馴染だ。
光は可愛い。いや、可愛いなんて次元の代物じゃない。まさに神が作り出した最高傑作だ! どんな男をも振り向かせる美しさがあり、それでいて愛嬌もある顔立ち。海外のボディモデルにも引けを取らない、圧倒的なスタイル! 学力も学年トップ10には必ず入っており、バスケの実力に至っては既にプロからスカウトが来てるほどだ。まさに完璧、非の打ち所がない。
光の美しさはSNSにも広がり、なんと『〇〇高校バスケ部の超絶美少女』というタイトルでウォーミングアップ中の動画が拡散され、10万以上のいいねが付いた。TikTo〇でも人気者で、友達のダンス動画にちょっと映り込んだだけで、とんでもない数のいいねやコメントが殺到するほどだ。
だから光はモテる。……とんでもなく。
学校一の超イケメンと言われる先輩、同級生、後輩、大学生からの告白すらも、彼女はノータイムで断っている。
もちろん、俺も光が大好きだ! 初めて出会った幼稚園の頃からずっと!
俺は過去に2回告白しているが、どちらも「バスケに集中したいから」と言われフラれた。……けど、フラれた理由が「他に好きな人がいるから」とかじゃない。だからまだ期待している。絶対に光の事は諦めない。
俺のかっこいい所、沢山見せつけて、絶対に光を振り向かせてやる。
ーーー
そして、高校生活最後の大会。俺達男子は準々決勝で敗れてしまった。……でも、悔いのない良い試合だった事もあり、俺は清々しい気持ちで満足していた。
一方の光達は、大会の決勝まで進んだらしい。さすがだ!
よし! いい機会だ。この大会の後、もう一度告白しよう! 俺はそう決心した。
決勝が始まり、俺は応援席から光に声援を送った。そして、自分の目を疑った。
光が、今までに見た事がないくらいキレのある、凄まじいプレーをしていた。
「すげえ……」
周囲の男子達も、あまりの凄いプレーにどよめき、驚きの声を上げていた。
結果は圧倒的な優勝。本当に完璧だ!
閉会式が終わり、女子バスケ部の面々がエントランスの方へやって来る。その中には、大好きな光の姿も……。俺はすかさず、光の前に進み出た。
「光! すごかったぞ! まじでやばかった!」
「うん、ありがと」
光の反応が薄い。……さては照れてるな!
俺は大きく息を吸い込み、勇気を出して口を開いた。
「光! 実は大事な話があるんだ!」
「家に帰ったら光ん家に行くから待っ――」
「あっ! 関路さん!!」
「……え?」
俺の言葉を遮り、光が満面の笑顔で駆け寄り、力いっぱい抱きついたのは……全く見知らぬ男だった。
男はかなりの高身長で、長袖のシャツを着ていてもわかるくらい筋骨隆々だった。しかも、左手の甲から指にかけて、タトゥーが見えている
えっ……誰だよ……そいつ! 光! なんだよ、その顔!
大好きな男にすり寄るような甘い表情。そんな女の顔、10年以上一緒に居た俺にだって、一度も見せた事がないのに。
その後、俺はショックのあまり飯が喉を通らず、眠れない日々が続いた。体調不良という理由で、学校を丸々一週間休んでしまった。
ーーー
ベッドの中で、俺はずっと「なんで……誰だ……嘘だろ……どうして」と虚ろに繰り返していた。
あの男は一体誰なんだ。……明らかにヤバそうな男だった。顔立ちはかなり整っていて、男らしくも爽やかなイケメンではあった。
でも、それ以上に異常なのは身体だ。身長は確実に180を超え、服の上からでもわかる丸々とした筋肉なんて、生で初めて見た。……そして極めつけは左手のタトゥー。あれは完全に、普通の一般人じゃない。……絶対に反社か、それに近しい人間だろう。
ま、まさか光……脅されてるんじゃないか?!
そ、そうだ! それしかない……!
でも……光、凄い笑顔であの男に抱きついていた。あんな幸せそうな光……見たことない。
クソッ!! なんなんだよ! マジで意味わかんねえ……。
光……光! 光! クソ……クソ……うぅ……。
しばらくベッドで丸まっていると、スマホのLIN〇の通知が鳴った。
光か!? と飛び起きて通知欄を見ると、毎日連絡を取っているバスケ部の友人からだった。
俺はがっかりしてスマホを放り投げようとした。しかし、メッセージのプレビューに『光』という文字が見えた。すぐに画面を開いて確認する。
『光のストーリー見ろ!』
友人からの、焦ったような短いメッセージ。
嫌な予感がする……。全身から嫌な汗が吹き出すのを感じながら、俺は恐る恐るインスタを開き、光のアカウントへ飛んで、ストーリーのアイコンをタップした。
「え? え? は?」
画面に映し出されたのは、俺が今まで見た事がない、獣のように下品で、熱っぽくニヤけた光の顔だった。鏡越しに撮られたその写真で、彼女は……全裸で男の上に跨り、ピースサインをしていた。
俺の脳は、その画像が意味するものを理解するのを全力で拒絶していた。
「な、なんだよ……これっ!! ……なんなんだよっ! これはああああああ!!!」
「嘘だっ……嘘だよな……あ"あ"っ!!」
完璧で純潔だった俺の女神が、どこの馬の骨とも知れないヤバい男にぐちゃぐちゃにされている。
ショックで目の前が真っ暗になり、気が狂いそうになった。
そしてもう一度……ひどく震える手で、俺はスマホの画面を直視した……。
ーーー涙が枯れ……喉が潰れるまで叫んだーーー




