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68話 王女様とデート②

目の前の光景が切り替わると、室内の風景が目に入ってきた。


「これが転移魔法・・・、本当に一瞬で移動してしまうのですね。」


キョロキョロと王女様が興奮した表情で周りを見ている。

目の前にはローズがニッコリと微笑んで俺を出迎えてくれていた。

「あなた、さっきぶりね。こうしてすぐに会えるなんて嬉しいわ。」

大きな胸をユサユサ揺らしながら俺に抱き着いてくる。


「おっほん!」


王女様が咳払いをして睨んできた。


「勇者様、今日は私とのデートですよ。帰るまでは私が勇者様を独占しますからね。」


ローズがニコニコしながら離れ王女様へ近づいた。

「これは王女様、申し訳ありません。少しでも離れてしまうと淋しくて・・・」

わざとらしく胸を振りながら泣く真似をしているよ。


「気にいらないわねぇ・・・、特にこの胸がぁぁぁぁぁ・・・」



「こんな胸なんか!」



ガバッと王女様がローズの胸を鷲掴みにし、グイグイと引っ張っている。


「こんなの取れてしまえぇえええ!」


「い、いやぁああああああああああ!」


何だこの2人は・・・

やり取りがラピスと同じだぞ・・・

ローズって胸を揉まれるのがデフォルトなのか?まぁ、これだけ大きいと貧乳派からは目の敵にされるのも分からないではないが・・・


だけどなぁ~、こうして見ているととってもエロい気がする。


(煩悩退散!心を無にするんだ!)




・・・



「はぁはぁ・・・、あんまり引っ張ると垂れちゃいますよ・・・、王女様も鬼畜ですわ。」


ちょっと涙目になってローズが俺を見ているけど、お前が王女様を挑発したのだから自業自得だろう?


「あなた、今夜は優しく揉ん・・・」

思わずローズの口を塞いでしまう。


(こいつはぁぁぁ~~~、何で更に煽る!)


慌てて王女様を見ると・・・


「ひょえぇえええええええええええええ!」


全身から真っ赤なオーラが立ち上り、王女様の背には般若の面が見える。その視線が俺とローズを射殺すのでは?と思うくらいに殺気を感じた。

(般若の面って・・・、何でそんなものが見える?)

王女様の目は笑っていないけど、口元だけがやたらとニヤニヤしてとても恐怖を感じる。

(王女様にあるまじき姿だぞ!)

あんな鬼神モードの王女様には立ち向えない!俺もそこまで無謀ではない!


「あんまり調子に乗ると・・・」






「どっちも・・・、もぎ取りますよ。うふふふ・・・」





下半身がキュッとした。



「「すみませんでしたぁああああああああああああああああああ!」」


俺もローズもマッハの速さで土下座をした。


(何で俺まで巻き込まれる?)



「姫様、すみませんでした。機嫌を直して下さいよ。」


しかし、王女様は腕を組んだまま冷たい視線で俺を見ているよ。

だけど急にフッと笑った。


「あははは!ちょっと意地悪し過ぎましたわ。ビビりました?」


(いや!絶対にあれは演技ではなかったと思う。素で怒っていたのに間違いない!)


「それでは許してあげる代わりに、1つ私のお願いを聞いてね。」


「は、はぁ・・・」


「今日のデートは私の事を『シャル』って呼ぶ事!絶対に姫様って呼ばないでよ。」


「分かりました。シャルですね?」


だけど王女様の機嫌が悪い。どうして?


「恋人設定なんだから敬語も無しよ・・・」


「分かったよ。『シャル』、それで良いかな?」


王女様がブルッと震えてトロ~ンとした表情になった。

「うふふ・・・」

嬉しそうに俺の腕を組んでくる。

「今日はずっとこうして腕を組んで歩くのよ。分かった?」


(おいおい、お願いは1つではなかったのか?いくつもお願いされているのだけど・・・)


「あなた、仕方ないわね。ふふふ・・・」

ローズが俺を見て嬉しそうに笑っている。

「こちらの方は準備までもう少しかかるから。しばらく外でデートを楽しんできなさいね。」


「あぁ、そうするよ。」


「それじゃレンヤさん。、お願いしますね。」


嬉しそうに王女様が俺の手を引っ張り外へと出ていった。




「う~ん、美味しい!」


王女様がマリーさんの串焼き肉を頬張り、ニコニコした顔で俺と手を繋いで歩いている。


「この串、えらく気に入ったな。」


「そうよ、こんな温かくてジューシーなお肉って初めて食べたからね。いつもは毒味したものしか食べていないし、お肉なんて冷めてパサパサなものがほとんどなのよ。昨日、アンジェリカさんが作ってくれた料理も最高だったわ。世間では王族の食事は立派だと言われているけど、正直美味しくないわ。パーティーの料理も豪華な見た目だけで全然美味しくないわよ。私にしたらね、見た目が悪くても出来たての温かい食べ物が最高だと思うわ。物語に出ている家庭の味っていうのは私にとって憧れなのよ。」


そうなんだ、王族って以外と窮屈なものなんだな。アレックスはそんな事は一切言わなかったし、アイツは城にいる事なんてほとんど無かった。まぁ、あの時は魔族との戦争の真っ只中だった事もあったし、勇者パーティーの一員として旅にも出ていたからな。


(どっちが幸せか・・・、俺だったら貧乏でも自由を取るだろう。)


それにしても・・・


(さっきのマリーさんの顔は面白かったよ。)




王女様のリクエストで『マリーさんの串焼き肉が食べたい』って言ったので、外に出てすぐにマリーさんの店に向かった。


「マリーさんの店は知っていたんだ。」


「そうよ、あなた達に会う前にそこで食べていたのよ。もうあの味が忘れられなくてね。あんな美味しいものは食べたのは初めてよ。」


(へぇ~、王女様まで虜にするなんて、さすがはマリーさんだな。あのアンでさえも気に入っていたからなぁ・・・)


そうやってしばらく歩いているとマリーさんの屋台が目の前に近づいた。王女様は俺の腕を組んで幸せそうにしているけど、こんな姿を親父さんに見られるのもなら何を言われるか分からないよ。


「こうやって周りを気にしないで自由に町中へ出かけられるって嬉しいわ。こうしていると、本当にデートしているみたいよ。レンヤさん、無理を聞いてくれてありがとう。」


「ふっ、シャルが喜んでくれるならいつでも連れ出してあげるよ。」


「本当に?言質は取ったから何度でも連れ出すわよ。覚悟しなさい!この指輪なら簡単に変装出来るから、王都でも自由に出かけられるわ。」


「ははは・・・、勘弁してよ。」


だけど、とても嬉しそうだし、王女様がリフレッシュ出来るなら俺も喜んで協力するよ。


店の近くに来たので王女様が組んでいた腕を離してくれたけど、今度は手を絡めて握ってきた。


(これって?)


こんな積極的な王女様だけど、ちょっと恥ずかしい。


マリーさんが俺の姿に気付いたみたいで、俺を見て固まっている。

そのまま近づいてみて、やっと元に回復したみたいだ。


「レ、レンヤ・・・、あんた、昨日王都に向けて出発したんじゃないのか?」


「ま、まぁ・・・」


「あんた、一体何をやらかした?もしかして姫様に変な事をして追い出されたのか?それに隣の女の子は誰なんだ?う~ん・・・、どこかで見た覚えがあるけど・・・」


矢継ぎ早にマリーさんから質問が来るけど、弱った、答えられないぞ。

よく考えたらマリーさんが言っている事は当然だ。

テレサの言った通り俺達の常識がちょっとズレている事を実感する。今後は注意しないと・・・


「マリーさん、私が無理を言ったのですよ。」


王女様が偽装を解き、マリーさんへ話しかける。

マリーさんも偽装魔法で今の姿になっているし、王女様がこうした事をしていたと分かってもそんなに慌てていなかった。

それどころかちょっと嬉しそうにしている。


「姫様でしたか・・・、わざわざお忍びでここまで?」


コクリと姫様が頷くと元の町娘の姿に変化した。

そして、マリーさんが俺を見てニヤッと笑う。


「レンヤ、あんたも隅に置けないね。恋人繋ぎで歩いているなんてね。上司に見られるとマズいから、この事は私だけの胸に納めておくよ。」


「すみません、ここの味が忘れられなくて、レンヤさんに無理を言って来ちゃいました。でも、この手の繋ぎ方って?」

王女様が不思議な感じで俺と繋いでいる手を見ている。


「こうやって指を絡めながら手を繋いでいるだろう?これが『恋人繋ぎ』って言う手の繋ぎ方だよ。まぁ、恋人同士なら腕を組んで歩くっていう手もあるけどね。どちらかというと、この手の繋ぎ方がさり気なくて私は好きだけどね。」


「あっ!」

意味が分かったのか、王女様が慌てて手を離したけど、マリーさんはまだニヤニヤ笑っているよ。


「テレサ・・・、何て事を教えてくれたのよ・・・、これははぐれてはいけないからシッカリと握る方法だからと言っていたのに・・・、うぅぅぅ、嘘を言ったのね。帰ったら覚えてなさい・・・」


(テレサが犯人かい!)


「それじゃ、サービスだ!いくらでも食べていきな。腕によりをかけて焼いてあげるからな。」



王女様がマリーさんが焼いてくれた串を美味しそうに食べているよ。本当に気に入ったんだな。その姿をマリーさんも嬉しそうに見ていた。


(それにしてもよく食べる・・・、あんな細い体のどこに入っていくのだ?)


「おいおい・・・、シャル、いくらでも食べられるかもしれないけど、まだ行くところがあるんだぞ。そこでも食べるんだからちょっとは抑えてくれないか?」


「う~ん、仕方ないねぇ~」

とても残念そうだけど・・・


(そうだ!)


「シャル、指輪に収納魔法の機能が付いていたじゃないか?その機能を使えばいくらでも持ち帰りが出来るぞ。しかも、収納している間は時間経過が無いから、いつまでも出来たてのままで熱々の串焼き肉が食べられるからな。」


「えっ!本当に?」

すごく嬉しそうに指輪を見ている。

「それじゃ!マリーさん!ありったけのお肉を焼いて!お土産に持って行くわ!」


「おう!豪気だね!待ってな!急いで焼いてあげるからな。」


せっせと焼いているマリーさんの隣で、王女様が出来たての串を次々と収納している姿は意外とシュールだった。


しばらくして・・・

「ははは!今日はもう店仕舞いだよ!こんなに売れたのは初めてだな。ありがとうさんよ!今度来る時はもう少し仕入れしとかないとな。」


上機嫌なマリーさんのお店から離れて露店街を歩いて行く。




ちなみに、今回買った串焼き肉は、王女様がたった2日間で食べ尽くしてしまったと・・・


「あんまり美味しいから、ついついつまみ食いしちゃって・・・」


てへへ・・・、と可愛らしく王女様が謝っていたけど、あれだけの肉をつまみ食いレベルで食べ尽くすとは・・・


女の人には秘密が色々とあるものだと実感した。




「さて、次はここだよ。」


ローズが経営しているケーキ屋だ。アンもラピスもお気に入りになって、この町を出るまでは毎日のようにケーキを食べていた。王女様もそうだけど、アンもラピスもあれだけ食べても太らないって、ホント不思議だよ。マナさんは太るのを気にしてそこまで食べていなかったけど、女性は甘いものがホント好きだよな。


(王女様はどうかな?)


「へぇ~、こんな町にもケーキを置いているんだ。」


「知っているのか?」


「もちろんよ。メイドの間では有名な話よ。王都でも最新スイーツですごい噂だったのよ。」


「そうなんだ。でも、ケーキって王宮でも食べていたのだろう。」


しかし王女様が首を振った。

「見た目がケーキのモノはね。噂に聞いていた生クリームなんて食べたことは無かったわ。私が食べたケーキは昔からある油っぽくて目茶苦茶甘いだけのバタークリームのケーキよ。冷やす必要も無いし、日持ちもするからね。トッピングのフルーツだけ当日仕入れて仕上げるようなモノだったのよ。」


「それならここは最高のお店だよ。クリームは生クリームを使っているし、甘さも控え目だから仄かに甘いスポンジとの相性も最高だな。」


「うわぁ~、とっても楽しみね。」


王女様が嬉しそうにしながら俺の腕を組んで店内に入っていく。

テラス席で2人向かい合ってケーキを食べていた。


「ふふふ・・・、こうしていると本当のカップルのようね。最近王都で流行っている小説のシーンと同じよ。私の立場だと叶わない事だったわ。テレサと大賢者様に感謝ね。」


突然、王女様がモジモジしながら俺を見ている。


(どうした?)


「ねぇ、小説のシーンだけど、真似をして良いかな?一度してみたかったの・・・」


どんどんと顔が真っ赤になっているよ。何をしたいのだろう?

ケーキをフォークで一口大に切り分け、その1つをフォークに刺して俺に差し出してくれる。


「はい、レンヤさん。」


(うわ!目茶苦茶可愛い!スッゲェ照れる!)


パクッとケーキを口に入れた。王女様を見るとすごく嬉しそうだよ。


(それなら・・・)


俺もケーキを切り分けてフォークに刺して王女様の口元へ差し出した。


「本当に恋人同士みたい・・・」


そう呟いて俺の差し出したケーキを食べてくれた。


「レンヤさん、これって間接キスになるわよ。私とキスしたのと同じだから責任を取らないといけないわよ。」


「い、いや・・・、それは勘弁してくれ・・・」


「ふふふ、冗談よ。」


王女様がクスクスと笑っている。

昨日も1日俺達の馬車にいたけど、ここまで楽しそうにしてくれなかった。

多分、自分の立場もあったから気を遣ってくれていたのだろうな。

王女様の気分転換にこうしてデートをしているけど、喜んでいるみたいだな。


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