69話 王女様とデート③
串焼き肉にケーキと食べてばかりだったので、今度は公園へ行き2人並んでベンチに座っている。
(いやぁ~、王女様ってある意味化け物だよ。)
さっきのケーキ屋でケーキを食べていたけど、王女様は本当によく食べる。
多分、ホールにすれば3つくらいは食べたと思う。
お土産で2ホールを購入して、帰ったらみんなで食べると言っていたけど、多分、1回目の女性陣のお茶会で全部消えそうな気がする。
(まっ、喜んでいるから良いか。)
俺達の前には子供達が楽しそうにボール遊びをしている。
その様子を王女様が嬉しそうに見ていると、次にそっと俺の肩に頭を乗せてきた。
「こうしていると本当に平和なのにね・・・、魔王が復活してしまったから、いつ戦乱が始まるかもしれないのに・・・」
そっと王女様の肩を抱くと上目遣いで俺を見てくる。
「そうならないように俺がいるんだ。だから安心しな。」
「ありがとう・・・、だけど、レンヤさんに全てを押しつけている気がして申し訳ないわ・・・、私は何も力が無い・・・、王宮で見ているだけの事しか出来ない・・・」
「俺も1人ではないからな。アンもラピスもいるし、ソフィアも戻って来るからな。だけどなぁ~、ラピスから聞いた話だと、ソフィアはかなりヤバイってな。何か会うのが怖いよ。」
クスクスと王女様が笑っている。
「ふふふ、レンヤさんでも怖いものってあるのね。勇者って怖い物知らずと思ってたわ。」
う~ん、そんな事はないのだが、どうも当時の俺の物語のおかげで変にかっこいいイメージがついているみたいだ。
(正直、困っているよ・・・)
コロコロ・・・
子供達が遊んでいたボールが俺達のところに転がってきた。
そのボールが王女様の足に当たる。
「あらら・・・」
王女様が足下にあるボールを手に取り立ち上がると、そのボールで遊んでいた子供が慌てて走ってきた。
「ごめんなさ~~~い!」
子供が目の前まで来てからペコリと頭を下げた。
男の子だろうな。王女様を見てあまりにもキレイだからか顔が真っ赤になっている。
「ふふふ、ちゃんと謝れるって偉いわね。お姉さん、感心したよ。」
「えへへ、嬉しい・・・」
男の子がデレデレになって王女様を見ているよ。
「でも、こうして見るとお姉さんとお兄さんってお似合いだね。もしかしてカップル?」
そう言われた王女様も急に真っ赤になっているよ。
「そ、そ、その・・・」
そこは助け船を出してあげないとな。
だけどあまり誇張してもマズいだろうから、ちょっとはぐらかすように話そう。
「う~ん、君にはそう見えるのか?」
「うん!そうだよ!」
男の子が元気に頷いてくれる。
(良い子だな。)
「でもちょっと違うんだよ。でもね、お姉さんは僕のとっても大切な人に変わりないけどね。」
そう言って隣の王女様を見てみると・・・
ボン!
あっ!頭から煙が吹き出した。
「た、た、た・・・、大切な人って・・・、キュゥゥゥ・・・」
首まで真っ赤になって気絶してしまった。
(何で?)
「へへへ、仲が良いね。じゃぁ僕は行くよ。」
スタタタッと男の子が走り去って行った。
「おいおい・・・」
俺に膝枕された状態で王女様が気を失っていた。
(とほほ・・・、目が覚めるまで動けないや・・・)
しばらくすると王女様が目を覚ましたが、再び真っ赤になり始めている。
「うぅぅぅ・・・、恥ずかしい・・・、こうして膝枕されているなんて・・・」
こうして照れている王女様は本当に可愛いよ。
額に手を当ててゆっくりと撫でてあげると、とても嬉しそうにしている。
しばらくして王女様も気持ちが落ち着いたのか起きあがり、再び俺の隣に座っている。
「レンヤさん・・・」
「ん?どうした?」
「私って迷惑ではないですか?デートなら奥さん達とすれば良いのに、私みたいな部外者とデートなんて、本来は許されませんよ。」
「まぁ、みんながOKしてくれているんだ。それにシャルが元気にならないとみんなが心配するだろう。俺で良ければいくらでも協力するからな。」
「ふふふ、ありがとう。」
ニッコリと王女様が俺に微笑んでくれた。
「本来の私とレンヤさんはこうして一緒にいるのは許されない立場・・・、だからお願い・・・、もう少しこうしていたい・・・」
王女様の頭が俺の肩にもたれかかり体も密着してくる。
(今は気の済むまで好きにさせてあげよう。)
しばらく王女様と2人っきりで寄り添って座っていた。
「レンヤさん、ありがとう。良い思い出になったわ。」
スッキリした表情で王女様が俺を見ている。
「それじゃ、ローズの店に戻るか?」
「はい!」
元気に返事をしてくれた。
「あなた、準備は出来ているわよ。」
店に戻るとローズが中で待っていた。
嬉しそうに俺に抱きついてくる。
・・・
チラッと王女様を見ると・・・
ちょっと機嫌が悪そうだ。
(ははは・・・)
ローズに店の奥の部屋まで案内され、中に入ると大きなソファーとベッドが並んでいる。
ソファーは我が家にあるものよりも少し大きい。ベッドはさすがにあれだけの大きさは無理だったけど、大人2人が一緒に寝ても余裕があるいくらいの大きさだ。
「レンヤさん、これは?」
王女様が不思議そうにソファーとベッドを見ている。
「これはな、今は王都に向かっているじゃないか。王都に着いたらローズが商会を立ち上げようとしているのさ。その立ち上げた際の目玉商品として売る予定のものだよ。あの家にある家具を参考にして製作してあるから、今までのソファーやベッドと比べると雲泥の差だろうな。」
「確かに・・・」
うっとりとした表情の王女様がいた。あの家の家具の心地良さを思い出しているのだろう。
「あの心地良さは一度味わってしまうと忘れる事は出来ませんわ。」
そして、ギュッとローズの手を握った。
「ローズマリーさん!これは私は絶対買います!そして、貴族相手なら飛ぶように売れるのは間違いないですよ!」
「ふふふ、そう言っていただけると嬉しいわ。でもね、これはレプリカ品だし、オリジナルとどれだけ違いがあるか確認が取れていないのよ。私的には問題無いと思うけど、王女様がどう思うかチェックして欲しいのね。これはまだ試作品だから王女様のプレゼントにするわ。」
「ほ、ほ、本当ですかぁあああ!」
(おいおい、すごく食い付いているんだけど・・・、そんなに気に入ったのか?)
王女様がソファーへダイブして嬉しそうに座っている。
「極楽だわぁぁぁ~~~」
「ふふふ、どうやら気に入ってもらえたようね。」
ローズが嬉しそうに俺の隣に来た。
「そうだな、あれだけ喜んでいるんだ。大ヒット間違いないだろう。それ以外にも庶民用に低価格の小型魔導コンロとか色々と作っているし、ローズとラピスが手を組んだら本当にとんでもないと思うな。ライバルの商会が可哀想になってくるよ。」
「そこのところはちゃんと考えてあるわよ。私達もあまりやり過ぎないようにするわ。商売は持ちつ持たれつだからね。」
「さすがローズだよ。」
「うふふふ、そう言ってくれると嬉しいわ。」
俺から離れ王女様のところへローズが移動した。
「王女様、気に入っていただけたようで嬉しいです。」
そして部屋の出口へと移動した。
「ベッドの使い勝手も確認して下さいね。そうそう、シーツは替えを準備してありますので証拠隠滅は出来ますよ。それに、あの扉を開けるとシャワーがありますからね。」
(はいぃぃぃ?ローズよ・・・、お前・・・、何を言っている?)
「そうそう、私も今から夕方まで出かけますし、ちなみにですね、従業員も全員出かけますからね。夕方まで誰もいなくなりますから、留守番をお願いしますね。」
「ローズ・・・、何を馬鹿な事を言っている。そんなのは冗談じゃ済まないぞ。」
俺の言葉を無視してローズが手を振って部屋を出ていこうとしたので、慌てて後を追いかけようとすると・・・
「えっ!」
後ろからいきなり抱きつかれた。
「姫様・・・、一体何を・・・」
「レンヤさん・・・」
「お願いです・・・、もう少しこのままで・・・」
「姫様・・・」
「最初は物語の勇者様に憧れていました。とてもカッコ良くて私の理想の人でした。いつかは勇者様と結婚したい・・・、そんな風に思っていました。テレサには『子供じゃないんだから大人になりなさい』って散々と言われましたけどね。」
(あの物語はかなり脚色されているんだぞ。実際の俺とは全く違うのに・・・)
「そして、こうして実際にお会い出来て勇者様は物語以上の方でした。」
「姫様、俺の事は美化し過ぎだよ。俺はそんなに立派な・・・」
「いいえ!」
ギュッと王女様の俺を抱きしめる力が強くなった。
「あなたは素晴らしい方です。そうでしょう?大賢者様もアンジェリカ様、そして聖女様にテレサ・・・、みんながあなたに好意を持っているのです。あなたの人柄に惹かれて集まって来るのですよ。この町の人もそう、叔父様もあなたの事が大好きです。」
「そして、私も・・・」
「姫様・・・」
「私は王族の人間です。王族は自由に恋愛する事は出来ません。全ては国の為・・・、結婚も国同士の利害関係で婚姻を結ぶものなのです。そこに恋愛というものは存在しません。結婚してから愛を育むものなのです。でも、お互いに愛し合う夫婦はそんなにいません。それが王族であり貴族の世界なのです。」
「今は・・・、今だけは王族のシャルロットではなく、1人の男性を愛する只の女性シャルロットでいたいの・・・、許される恋ではないと分かっています。だけど、もう抑えきれない・・・」
「ですが・・・」
そうだよ、いくら一時の感情でも俺と王女様は立場が違い過ぎる。
今回は王女様のリフレッシュでデートをしていたのだぞ。
だけど・・・
それにしてはラピスもローズもこうしてベッドまで用意してあるなんて、よく考えれば準備が良過ぎると思う。
(はっ!)
【ラピス!】
【ローズ!】
どうしてだ?念話の反応が全く無い。
【アン!】
【マナさん!】
おかしい?アンもマナさんも反応無しだと?
もしかして・・・
背中に抱きついている王女様の抱きしめる力が更に強くなってくる。
「勇者様、いえ・・・、レンヤさん・・・、お願い・・・、夕方まででいいの、あなたとの愛の証を心身共に刻み込んでおきたい・・・」
「姫様・・・、いや、シャルだな。」
ピクッと王女様が震えて俺に抱きつく力が弱くなった。
振り返りお互いに見つめ合った。
精一杯の告白だったのだろう、王女様の顔が耳も首も真っ赤になっている。
「どうやら、みんなにお膳立てさせられたみたいだよ。みんなはシャルの事を応援しているみたいだけど、本当に俺で良いのか?」
「はい・・・、今の間だけでも、本当の恋人にして欲しいです。」
目を閉じて唇を突き出してくる。
(だけど、王女様の気持ちには応えられない。)
【レンヤ・・・】
【ラピスか!お前達!何を考えているんだ!】
【受け入れてあげて。】
【どうして?】
【アレックスがフローリア様に伝言していたの。実は今朝、フローリア様から神託があったのよ。内容はね、アレックス自身はレンヤが生まれ変わる時までは生きていない。だけど、レンヤとの友情は永遠だと・・・、将来、自分の子孫がレンヤと出会う事があった時、レンヤと一緒にいたいと思えば受け止めてもらいたいとね。その言葉は実は代々の王に伝えられているのよ。国王だけはレンヤが必ず生まれ変わって王国に現れる事を知っていたのよ。『俺達はずっと一緒』だって・・・、でもね、王女様はそんな話も知らないし、自分の意志でレンヤの事を好きになったわ。まさか、アレックスが予言した通りになるなんてね。】
【マジかい・・・、アレックス、お前って奴は・・・】
俺の目の前には目を閉じた王女様がいる。
(まさか、お前の子孫と一緒になるなんてな・・・、ラピスといい・・・、ソフィアといい・・・、そしてアレックス・・・、本当に最高の仲間だよ。)
「シャル・・・」
俺がそう呟くと王女様が目を開ける。
「やっぱり無理ですよね・・・、すみません、迷惑をかけました・・・」
「大丈夫だ。」
そう話すと王女様が目を見開いて俺を見つめた。
「そ、それってどういう事です?」
「俺とシャルの事はアレックスも認めてくれるってさ。父親じゃなくてご先祖様公認って、さすがはアレックスだよ。先を見通す力、賢王と呼ばれるのは伊達じゃないな。」
「け、け、賢王様って・・・、本当ですか?」
「あぁ、俺も今、ラピスから教えてもらったけどな。この話は父である国王様も知っているみたいだぞ。俺がいつの時代に生まれ変わっても大丈夫なように、代々国王様に語り継がれていたみたいだ。」
ワナワナと王女様が震えている。
「それでですか・・・、アーク・ライトが消えても父が落ち着いていたのは、そういう事だったのですね。勇者が甦ればアーク・ライトも勇者の元に返ると・・・」
「はっ!」
王女様が硬直してしまったが、しばらくすると目に涙が溢れてきた。
「かつての賢王様が私とレンヤさんの事を認めてくれるって事は・・・」
ゆっくりと頷くと王女様が俺の胸に飛び込んできた。
「私は一生、あなたと共にいます。生涯の愛を誓います。」
顔を上げ目を閉じ、再び唇を突き出してきた。
(王女様は覚悟を決めたんだ。俺も覚悟を決めないといけないな。)
「俺も一生愛し続けるよ。」
唇を重ねると、お互いに強く抱き合った。




