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1 美女がいる役所的な何か

君は神隠しという現象について知っているだろうか?

それは人知れず行方不明になる人のことで、日本のみならず世界中で観測されている。

もちろん中には戻ってきた人達もいるが、日本での失踪事件の発生件数が毎年万を超えることも知っているだろうか?

中には個人的な理由により失踪した者、他者の欲望のせいで犯罪に巻き込まれた者など様々いるがそんな中でも特異な消え方が神隠しである。


神隠しとは神様が人を連れ去ってしまったり、神様がいる空間に迷い込んでしまったりなどという他の世界に行ってしまう現象だ。

それは基本的に個人に現れる現象であるが時にして集団規模にも及ぶこともある。

そう言った意味では今回起きた神隠しは最大規模であると言えるだろう。

なんせ、村が一つ消え去ってしまったのだから。

まあ、人間の危機本能と見知らぬ力のある者の誘導により難を逃れる人の方が多くはあったがそれでも撒き込まれた人の数は万に近く多大な影響が起こることを予測させた。


だが神隠しにも発覚するパターンと発覚しないパターンがあった。

今回は発覚しないパターンの方で何かしらの介入があったのか元の世界の人々はそんな村があったことを完全に記憶からも書物からも消え去ってしまっていた。

こうして地球と呼ばれる星の日本という国で村一つと一万二千人もの人間がそこから人知れずいなくなったのだった。




「まさか自分がそんな現象に巻き込まれるなんてな」


そして行き着いた先が役所を想像させる巨大な空間だとしたらどうするよ?

そこには一万二千人もの人間がいたらしい。

いたらしいというのは俺がその集団の中でも目覚めるのが遅かったからであり、そこで働く人達からの説明を聞きのがしてしまったからだった。

なので暴動が起こりかけていたとか一悶着が起こりかけていたが起こそうとした人間が拘束されてどこか別室と思われるところに連れて行かれるのを見て皆冷静になって諦めたらしい。

改めて説明を聞くとそう言った感じのことが起こってしまったため、それに対応するための処理を行っているらしい。


全く現実感が湧かなかった俺ははあそうですかと言って夢見心地のまま並んでいる列の最後尾に並んだ。

何だか思考に圧力がかかっているかのような不思議な無気力感を味わいながらふらふらと時間が経つごとに前に進んで行く。


そしてその処理の番が俺に回って来た。


「高塚晴喜さんですね。どうぞこちらへ」


担当することになったのは無機質な顔をした美女であった。

まるで機械のようなその言動に俺は躊躇するが一応言うことを聞いて案内されたブースに通され、奥にあった対面式のソファーに腰を下ろして目の前の机の上にあった紙に目を通した。

それはこの後の自分をどうしたいか決めるアンケートのような物であり、その書かれている項目に俺は興味を引かれた。


行先に地球だけでなく異世界という言葉が書かれていたためだ。

それに転生だとか転移だとかいう欄があり、俺は異世界の転移を選んだ。

容姿も変更できたのだが俺は変更無しを選択する。


「では次に貴方が行く世界では貴方がどのような存在として顕在するかを示すためのクラスというものがあるためそれをクジで決めます」


そう言われて差し出されたのがコンビニでよく見る箱の中に手を入れてくじを引くスピードくじだ。

言われるがままにくじを引いて俺が引き当てたのは『土地神』というクラスであった。

おいおい職業的なものだと思っていたのにこんなのもあるのかよ。


「ふむ……」

「あの……、何か問題が?」


問題も何も只の人間がいきなり神になったりしたら大問題だと思うのは確かに問題だと俺でも思うが。

俺が引いたくじを見て無表情だった美女の表情が僅かに変化したのを感じ取った。


「いえ、珍しい物だと感じたまでです。異世界転移を望むものが急増しているのもそうですがこうも高ランクのクラスを取得する者が多いとは。世界は変わりつつあるのですね」

「はあ。つまりは俺の他にも似たような人が多いんですか」


俺の問に美女は頷いた。

何でもクラスは個人の欲求や魂に強く影響するものであるため、似通うことはそうそうないのに今回はどうやら似たようなクラスやら影響の強そうなクラスを得た人間が多いらしい。


「こうも多いと行く世界の変更をしなければいけませんね」


ぽつりと呟かれた言葉に俺は何だか底知れぬ不安感を感じた。

それはもともとは平穏でほのぼのと生活できる世界だった行き先が波乱が待ち受ける魑魅魍魎の世界へと変更されてしまったかのような底知れぬ不安であった。

その言い知れぬ不安に頭にかかっている圧力が若干和らいだ気配がある。

どうにかせねばと働かない頭で思考を巡らす。


「あー……流石にこの如何にも凄そうなクラスでも能力の使い方など分からなければどうしようも無いのですが」

「それもそうですね。ではそのように手筈をします」


そう言った美女によって俺の思考に土地神としての能力、その世界でいわゆるスキルという力がいくつか備わっていることを知ることができた。

知らずに行ってたら死んでいたかもしれない。

いや土地神とかいう神なら消滅とかもあり得るのだろうか。

どちらにせよごめんこうむるところだ。


「では最後に、貴方が異世界にて望むことはなんですか?」


今までの無機質な質問とは違う何かの意志を感じさせる言葉に俺は意識を強く保つ。

そう意識することで頭にかかった圧力が弱まる気がした。

取りあえず行く世界は物騒な気がしてならないので生き延びる術が必要になる。

幸いにも『土地神』とかいう優れたクラスであるようなので基本能力は高いだろう。

だが俺の他にも似たような存在がいるということはその世界にも似たような存在が五万といる可能性が高い。

なら力に胡坐をかかずに自惚れず、更なる力の獲得を目指すべきだ。


「土地神であっても成長する力を」

「……分かりました」


力強く、確かな意志を持って吐き出された言葉は美女に受け入れられたようであった。

それが俺の限界であったのか頭にかかった圧力によって徐々に意志が薄れていく。

どうやら俺は眠りにつこうとしているようだった。


「次の世界で貴方に幸多からんことを」


呟かれるようにして吐かれた言葉は俺の心と体を暖かくし、俺は圧力に抗うのをやめて意識を手放した。

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