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恋する恋禁術士  作者: 藤白すわ
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第13話『金髪美女と金太郎』

 係員から何度も謝られ、病院へ行きましょうと言われたが首領の鎧には傷一つついていなかった。その頑丈さを説明したおかげで、何とか解放してくれたのがついさっきだ。気持ちは分かるが、折角のデートを病院の診察で潰したくはない。

 平身低頭の責任者達へ逆に謝りながら、事務所から出ていく。ジェットコースターの出口に当然のことながら不知火の姿は無い。間違いなく見たはずだが、あれは目の錯覚だったとでも言うのだろうか。

 あらぬ方向を見つめながら動かない首領に、心配そうな顔で背中を摩る九条。


「大丈夫ですか、山田君。やっぱり病院に行った方がいいんじゃないでしょうか?」

「ああ、ちょっと知った顔がいたような気がしてな。だが安心してくれ。あの程度の衝撃で壊れるほど軟な鎧ではない」

「いえ、鎧じゃなくて中の山田君が心配なんです」


 そっと両手を握りしめられる。


「どこか具合は悪くありませんか?」


 心臓がありえない速さで動いていますが、正常です。おそらく顔も真っ赤でしょうが、正常です。恋人がいるんですから、このぐらいは当たり前でしょう。


「本当に大丈夫だ、心配してくれてありがとう。こう見えて空金タワーから飛び降りた事もあるんだぞ」

「人生を諦めてはいけませんよ」


 そういう意味にとられたかと思ったが、そういう意味にしかとれない。普通は。

 いまだ表情の冴えない九条の為に、次は気分が爽やかになるアトラクションにすべきだ。スカッとするようなもので、九条の気持ちを晴らしてあげたい。パンフレットを眺めながら、どこか良さそうなものは無いか探す。

 視界の隅にオンボロな小屋が映った。古き良き時代のお化け屋敷を思わせる、いかにもといった和風のボロ小屋。しかし見た目とは裏腹に、最新技術が駆使された中では多くの恋人たちが恐怖に震えてしまうという。ここに入って抱き合わずに帰るカップルはいない、とまで言わせるほどのお化け屋敷。

 少なくとも、あれで気分は爽やかにならないだろう。


「じゃあ次はお化け屋敷にするか」


 入るけど。


「お、お化け屋敷ですか? 山田君は怖くないのですか?」

「あまり怖くはないな。その気になれば殴れそうだし」


 恋禁術を駆使すれば、幽霊に触れることも容易い。試した事はないが。公衆の面前でイチャイチャするカップルに比べたら、霊の方がよっぽど大人しくて助かる。と、以前はそう思っていた。

 今はアイオセンの方が怖い。


「どうする? 嫌なら別のアトラクションにするが」


 表情を引きつらせた九条。腰も引けている。だが自分の顔を叩いたかと思うと、顔からは迷いが消えていた。

 そこまで強い決意が必要なのか、最近のお化け屋敷は。


「大丈夫です。行きましょう」

「……嫌なら別のでもいいぞ?」

「いいえ! ここで逃げたら何の解決にもなりません! これは苦手克服の良いチャンスです!」


 どうやら九条はお化けが苦手らしい。それはそれで可愛らしいと思うが、本当に大丈夫なのかという疑問もある。

 ただ、決意した人間を止める事は難しい。それに折角やる気になっているんだ。その思いを後押ししたい気持ちだってある。

 決して抱き着かれたいわけじゃないが、九条の決意を無駄にしてはならない。首領も覚悟を決めた。


「分かった、行こう。何かあったら俺を頼ってくれ」

「はい。頼りにしていますよ、山田君」


 堅く手を繋ぎ、二人はお化け屋敷へと挑んだ。


「酷いわ! 私はこんなに愛しているのに……どうして他の女のことをばっかり見ているのよ! 私を見てよ! 私を愛してよ!」


 入るや否や、包丁を持った女の人が立ちふさがった。目からは溢れるように涙が零れ、かみしめ過ぎた唇からは血が垂れている。瞳の奥に宿った揺れる狂気は、しっかりと首領の方を見つめていた。

 二人が立っているのも墓地ではなく、どこにでもある普通のキッチンだ。ただ食器や小物が散乱しているだけで。


「や、山田君?」

 怪訝そうな表情で九条が見つめてくる。


「いや、俺も何が何だかよく分からないけど……お化け屋敷ってこういうもんだっけ?」


 女の人を警戒しながら、そろりそろりと次へと進む。さすがに刺してはこないだろうけど、このご時世だ。何があっても不思議ではない。

 入った時よりもしっかり手を握る九条。恐怖は感じているようだが、期待していたものとは違うような気がした。まるで誰かがアトラクションを強引に変えてしまったかのようで。


 頭の中にはアイオセンという単語が過るが、首を振る。そんなはずはない。ここで作戦行動が行われる予定は無いのだ。確かにこの手口はウチの組織っぽいが、その可能性はありえない。

 おそらくこのフロアの担当が家庭で色々と問題を抱えていたのだろう。そのストレスをココで発散してしまったのだ。そういう事にした。


「とりあえず次へ行こう」


 じっとこちらを見つめる女の人を無視しながら、順路に添って角を曲がる。

 スタイルのいい水着の金髪美女がいた。腰の細さをアピールするようなポーズでこちらを挑発している。お化け屋敷には似つかわしくない金色の髪が、薄暗い部屋の中でキラキラと眩しい。

 そして何よりも目立つのは胸。溢れんばかりに水着を押し返しており、大和撫子なにするものぞと主張しているように見える。ボリューム感のあるお尻と相まって、さながら押し寄せてきた黒船のようでもあった。


「…………」


 あまりにも突然の事で言葉がない。一体何が起こっているのか、確かめる為に金髪美女を凝視する。

 微動だにしない。ただ無言で黙々と、首領は金髪美女を眺めていた。


「……山田君?」


 隣から冷たい気配が漂ってくる。


「勘違いしないでくれ九条さん。金縛りだ。いや違うな。金髪縛りだ」


 正確な報告をしたことで、九条から放たれる冷気が強くなった。隣を見るのが怖い。

 だが仕方ないだろう。思春期の男子を相手に、こんな肉々しい女性を登場させたら、それは誰だって凝視する。九条が悪いわけではない。勿論、首領が悪いわけでもない。男の本能が悪いのだ。

 とはいえ、いつまでも見ているわけにはいかない。気が付けば隣に九条の姿が無かった、という事になっては困る。金髪碧眼の魔力に抗い、視線を逸らしながら先へと進んだ。掻いてもいない額の汗を拭う。


「ふぅ……恐ろしい妖怪だった」

「水着の女性にしか見えませんでしたけど」


 おそらく学校ではチアリーディング部で、アメフト部と付き合っているのだろう。何となくそんな顔をしていた。


「ああやって油断させたところで頭から齧りつく恐ろしい妖怪だ。大丈夫。万が一、妖怪が襲ってきても九条さんは俺が守ると誓おう」

「その時は遠慮なく、山田君の後ろに隠れますね」


 嬉しそうな顔で言われたら、反故するわけにもいかない。彼女には指一本触れさせないと心に決めた。

 そして順路通りに進み、角を曲がったところで今度は金髪のイケメンがいた。篠山ではない。英米の血を感じさせる、日本人ではないイケメンだ。なるほど自分の次は九条を試そうと言うのか。

 さきほどの己の失態を思い出す。相手はイケメン。こちらは赤い鎧。勝てる要素はどこにもない。せめて美女に目を奪われていなければ、まだ心の美しさで勝負できたかもしれないのに。これではもう、戦う前から負けは決まっているようなものだ。

 思わず膝をつきそうになる首領を、九条の手が引っ張った。


「どうしたのですか、山田君。先に進みましょう」

「……く、九条? 平気なのか?」

「平気と言われましても、普通に外国の方が出て来られただけですから。特に驚くような事もありませんよね?」


 男が美女に弱いように、女はイケメンに弱いものだと思っていた。だがそれは偏見だったのだ。世界には九条のような女性もいると、首領は生まれて初めて知った。

 感動の涙が出そうになるのを堪え、挫けそうになっていた足を叩く。九条が進もうと言ってくれたのだ。堂々と、イケメンの横を通り過ぎればいい。


「ああ、そうだな。行こう、九条」


 勝利を確信し、イケメンをやり過ごそうとした瞬間。背後のイケメンから不適に笑う声がした。

 まさかこれも罠だというのか。思わず振り返った首領の前で、イケメンは颯爽と己の服を脱ぎ捨てる。そこにいたのは全裸の男性ではない。先ほどの金髪美女だった。


「くっ! そ、そんな馬鹿な事があっていいのか!」


 あまりの衝撃に、思わず戻って美女の前に倒れこむ。

 ローアングルから見る水着美女はまた、格別の眺めであった。


「九条さん! ここは俺に任せて先に行ってくれ!」


 戻ってきた九条にヘルメットを脱がされそうになった。

 やめてください。やめてください。











 そうして、次のアトラクションを求めて歩き出したのだが。九条は頬を膨らませたまま、視線を合そうとしてくれない。


「山田君はエッチです」


 拗ねる彼女はとても可愛い。だが、このままにしておいて良いはずもない。それに、いい加減首領も気づいていた。こんな真似するのは、アイオセンをおいて他にないという事を。

 元々の計画に遊園地での活動は無かった。それは間違いない。おそらく、自分がいない間に何か不測の事態が起こったのだろう。それで遊園地までやってきたのだ。


 だが不幸中の幸いと言うべきか。まだ首領への個人攻撃には至っていない。つまり向こうも首領の存在には気づいていないということ。かといって、このままデートを続ければバレるのは時間の問題だろう。サングラスもどっかに飛んでいったし。

 デートコースは他にもある。遊園地に拘る必要はないのだ。


 そう思っていても、どうしても外せないアトラクションが一つだけ残っていた。幼い頃から憧れていた、彼女が出来たら絶対に乗ろうと思っていた乗り物。

 観覧車。

 あれに乗らずしてデートは成立しないし、あれに乗らないデートなど存在しない。全ての恋人たちの夢にしてゴール。観覧車に乗らないまま、この遊園地を後にすることなど出来ない。


「すまない。つい欲望に負けて。だけど、決して九条さんの事を嫌いになったわけじゃない。確かに金髪美女には見惚れてしまったけど、俺が手を繋ぎたいと思うのは九条さんだけだ」

「……もう、恥ずかしい台詞言わないでください」


 相変わらず視線を合わせてくれないが、今までのとはちょっと違うような気がした。

 そして、頭の中の篠山が警察も首領と手を繋ぎたがっていますよと言ってたが無視する。


「ただ、ここはアイオセンが活動を始めてしまったらしい。俺は何も聞いてないが、こうなるとデートを続けるのは難しいだろう。他の場所に行こうかと思うんだけど、どうかな?」


 九条は辺りを見渡した後、難しい顔で口を閉じた。


「九条さん?」

「あ、いえ何でもありません。山田君が連れていってくれる場所なら、どこでも楽しいですよ」


 危うく意識を失いそうになる。こんな子が隣にいながら、どうして金髪美女に見惚れてしまったのか。つい先ほどまでの自分を往復ビンタしてやりたい。


「そう言って貰えるとありがたい。ああでも、せめて最後にあれだけは乗っていこう」

「あ、観覧車ですね。実は私も、あれには乗ってみたいと思っていたんですよ」


 ここの観覧車は他の遊園地とは一味違うらしい。何が違うのかは乗った人にしか分からないという。なので首領も詳しい事は知らなかった。いつか彼女が出来た時、それを確かめてやると思っていただけだ。

 アイオセンの構成員を警戒しながら、観覧車を目指す。遊園地の目玉ともいえるアトラクション。自分が作戦立案者なら、これを見逃すはずがない。何かしらの対策をとっていると思うのだが。

 などと考えながら行ってみれば、観覧車の入り口に葛野がいた。周りには構成員たちの姿もある。割れたハートマークの覆面をした人間など、世界広しといえどもアイオセンの構成員ぐらいである。


「まずいな……入口を固められている」

「みたいですね。どうします? 観覧車は諦めますか?」


 首を左右に振った。


「いや、観覧車を諦めるという選択肢は無い」


 葛野達は、観覧車へ乗り込もうとするカップルに真実の火薬が詰まった爆弾を渡している。ぬいぐるみで偽装しているが、そうとしか思えない。

 狭い密室の中でお互い隠しているものが暴露されれば、それはもう阿鼻叫喚の地獄となるだろう。降りようにも降りられず、地上まで戻る時間を気まずいまま過ごすしかない。なんという恐ろしい組織だ、アイオセンめ。


「かといって正面突破だとバレる可能性が高い。そうなったら異端審問会は確実だな」


 葛野達にバレないようにしながら、なおかつ爆弾も受け取らない。難易度の高いミッションだ。だが絶対にここで引きさがらない。何としても観覧車に乗ってやる。


「何か方法があるのですか?」

「俺に任せて貰おうか。ちょっと準備をしてくるから、待っていてくれ」


 飛び出していった首領は、すぐさま戻ってきた。

 そして十分後。そこには熊にまたがった九条がいた。

 完璧だ。幸いにもリアルな熊の毛皮があったから、調達してきたのだ。これを着込めば、さしもの葛野とて自分が首領だとは気づかない。かといって熊が二足歩行していたらおかしいので、ちゃんと四本足で歩くことも忘れない。


 熊の首輪の紐を引っ張る九条という構図もありなのだが、残念ながら首輪はどこにも無かった。なので九条にはまたがって貰うことにしたのだ。

 のっしのっしと進む首領。構成員たちがぎょっとした顔で固まっている。遅れて気づいた葛野も、唖然とした表情で動きを止めた。


「……九条さんだよね?」

「いいえ、金太郎です」

「え、乗るの? 観覧車に? 熊と?」

「ええ、乗りますよ。観覧車で相撲をとらないといけないので」


 そういう設定にしてくれと頼んだ甲斐があるというもの。素直に納得してくれた九条には感謝の言葉もない。

 思考停止していた葛野だったが、本来の目的を思い出したのか。慌ててぬいぐるみを取り出した。


「えー、ただいまキャンペーン中でして。観覧車に搭乗されるお客様にはこのぬいぐるみをプレゼントしてまーす」

「結構です。相撲の邪魔になりますから」


 毅然とした態度で断る九条。想定外の理由に葛野も次の言葉が出てこなかった。


「それでは行きましょうか。はいどう!」

「ヒヒーン!」


 尻を叩かれたので思わずいなないたが、よく考えたら自分はクマだった。

 とはいえ、作戦は成功。見事に二人はバレることなく観覧車へ乗り込むことが出来た。


「ふぅ、一時はどうなる事かと思ったが。これで……む」


 熊の毛皮を脱ごうとする。しかし思ったよりも観覧車の中は狭く、上手く脱ぐことが出来ない。なにせ九条と向かい合って座っている、膝と膝が接触してしまう距離なのだ。脱ぐのは諦めるしかない。

 それにしても距離が近すぎる。こんな間近に九条がいるのかと思えば、ドキドキしてしまうのも無理はない。


「特に変わったものはありませんね。この観覧者には特別な何かがあるって聞いていたんですけど」

「あ、案外、あれは客引きの為のデマだったのかもしれないぞ。何かあると聞けば、みんなこぞって乗ろうとするし。それに、これだけ物理的に距離が近かったら心の距離も縮まるだろう。みたいな感じなのかもしれないな」


 多少強引な話だが、客寄せとは案外そういうものである。


「山田君は他の遊園地の観覧車に乗ったことがあるんですか?」

「いや、無いな。むしろ乗せない側だった」


 巨大なハムスターでもおいて、高速で回してやればいいのにと思う毎日だった。それが今ではこうして彼女と乗っているのだから。人生とは分からないものである。


「九条さんは?」

「私は……そもそも遊園地にあまり来たことがないんです。異性の方から誘われた事はあるんですけど。全部お断りしていたので」

「え? じゃあどうして俺と?」


 九条は迷ったように黙り、やがて顔をあげた。


「私、一生懸命な人が好きなんです。だから山田君となら行っても楽しいんじゃないかと思いました。今までの人たちは私の父の職業を見て、それに便乗する形で口説こうとしていましたから。そういう人とはあまり付き合いたくありません」


 恋愛至上主義の昨今、政府が主導して恋愛成就を促進させている。その要となるのが少子化解決委員会。その委員長の娘ならば、きっと恋愛にも積極的なのだろうと考える輩は多い。かくいう首領とて、最初の頃はそう思っていた。


「山田君は委員長の娘ではなく、私個人を見てくれたように思います。だから多分、私は山田君の告白を受け入れたんじゃないでしょうか。正直、自分にもあの時の気持ちはよく分かりません。ただ後悔してないのは確かです」


 その瞳には真剣さが宿っていた。疑いようもない。

 これが彼女の本音なのだと、確かめるまでもなく分かる。


「いや、それは俺も同じ気持ちだ。アイオセンの首領じゃなく、俺個人を見てくれたのは九条さんが初めてだ。君だけは鎧じゃなく、鎧の下にいる俺と接してくれたように思える」


 観覧車が動いていく。景色がゆっくりと下に流れ、空が段々と近づいてくる。

 狭い密室。身を乗り出せば顔がくっついてしまうほどの距離に、自分の大切な人がいた。

 ゴクリと唾を飲みこむ。

 何か言うべきか。しかし何も思い浮かばない。静寂が通り過ぎていく密室の中で、九条が恥ずかしそうな顔で口を開いた。


「距離、もっと縮めてみますか?」

「え?」

「心の距離を」


 そう言って、彼女は目を閉じた。

 いや、待て。有り得ない。ここなのか。ここでそうなのか。セオリーも何も知らないだけに、これが正解なのかどうか分からない。

 あるいは単に目にゴミが入っただけかも。しかし九条は目を開くことなく、じっと何かを待っている。何を。何を待っているんだ。

 そもそも、よく考えたら今の自分は熊だった。いいのか、初めてが熊とで。鎧ですらないんだぞ。


 だが、これ以上彼女を待たせるわけにもいかない。ここで何もしないのは、逆に失礼なんじゃなかろうか。自分の気持ちはいつだって変わらない。していいのなら、喜んでしよう。むしろさせてくださいと懇願したいぐらいだ。

 だが自分はいい。九条はそれでいいのか。いや、いいもなにも目の前が答えだ。こうして目を瞑って待っていることが答えだ。

 想いには応えなければならない。いや、応えたい。

 深呼吸して、気持ちを落ち着ける。

 そしてゆっくりと顔を近づけ――


「…………」


 九条の背後で蛙のようにガラスにへばりついた不知火と目が合った。

 半眼でこちらを睨みつける不知火が、ボソリと呟く。


「異端審問会」


 熊は口を押えて震えた。


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