8.逃走
「ふうっ。」
ようやく逃げ切った。まさか、あのスケルトン?、あそこまで速いとは思わなかった。アンデット系なら遅いんじゃないかと思っていたんだが、結構速かった。とっさに道を曲がりつつ、栗花落さんに錬成して、壁をつくってもらったが、もう少し遅かったらやられていただろう。というか、よくよく考えたら、ダンジョンの床や壁って掘れなかった気がするんだが……。まあ、いいか。
「栗花落さん、出来ればそこから掘り進めたりできる?」
「え、出来ますよ。」
「なら、通路と2mぐらい離して掘ってくれる?土は回収するからさ。」
「分かりました。でも、MPが無くなったら掘れなくなるので掘れるところまででいいですか?」
「ああ。あと、出来れば2つの部屋にしてくれ。」
「え?」
「休憩のためだ。寝たらMPが回復するらしいし、ずっと緊張状態とか嫌だしな。」
「ああ、なるほど……。って、あ!」
おお!栗花落さんが何かに気づいたみたいだ!
「よく考えたら上るとか以前に、食料が無いじゃないですか!」
おお!よく気づきました!
「って、月見里さん、ニヤニヤしてる!何でニヤニヤしてるんですか!?」
「そりゃぁ、だって、気づいてたもん。」
「気付いてたからって、ニヤニヤするんですか!?他に何かあるですよね!?」
「栗花落さんがからかうと面白……、間違えた、それはだなぁ。」
「ちょっと待ってください!からかうと面白いってなんですか!?」
「シーっ!モンスターに気づかれる可能性がある。」
「うっ。」
まあ、モンスター、気づいたとしても俺の予想が当たっていれば一部を除いて入ってこれないんだよな。
「まあ、冗談はほどほどにして、実を言うと俺は食料と替えの衣服を持ってたりする。」
「ええっ!ど、どこにですか?」
「ああ、ここにだ。」
とポケットを指差してみた。
「え?まさかアイテムポーチなんてついてたんですか?このポケット。」
「いや、着いてないけど?」
「騙しましたね!」
「騙してない!俺はちゃんと見せたじゃないか!」
そう、人差し指に嵌めておいたアイテムリングを。
「いや、だって、ポケットを指差したじゃないですか……。」
「指差したけどポケットとは一言も言ってないw」
「ムキーっ!」
ヤバい、面白いwww 何この面白い生物www
何でこいつはボッチだったんだろうwww
「いやー、すまんすまん。そこまで怒るとは思わなかった。」
「次やったら埋めますからね!」
調子にのってからかってたら殴られた。顔にクリティカルヒット。あまり痛くなかったけど。
「で?その指輪はどこで手にいれたんですか?」
「ああ、これは~。うん。王城の宝物庫から盗ってき……、借りてきた。うん。拝借してきた。」
「盗んできたって今言いましたよね!?」
「気のせい気のせい、あっはっはっ(棒)」
「棒読みじゃないですかっ!」
いやー、ツッコミがいるって素晴らしい。しかも良質なツッコミをいれてくれる珍しい存在だ。
「まあ、何だかんだで、この中には食料が入ってるからな。1月は持つはず。」
携帯食料とかもこっそり集めてきたからな。しかし、こいつ、どんだけはいるんだ?まだはいる気がする。
「なら、安心ですね。1月の間に抜け出せればですけど。」
「まあ、そうだな。とりあえず、俺の推測なんだが、栗花落さんのスキル。あれは解釈が違ってると思うんだ。」
「そうなんですか?」
「ああ。おそらく、王様(笑)とかは栗花落さんの能力をマップの様なものだと解釈したんだろう。おおよそは間違っていないんだが、栗花落さんのは宝箱の場所とか隠れた部屋とかも見つけ出すことができると思うんだ。さらに、地質、まあ、例えば鉄がどれぐらい含まれているとか、そういうのもわかると思う。」
「と、いいますと?」
「栗花落さんって、錬成師だよな?」
「はい、錬成師です。」
「つまりだ。土から鉄鉱石を経ることなく鉄を産み出すことが出来るってことだ。となれば土から鉄の剣を産み出すこともできると思うんだが……。」
「なるほど!」
「あ、話変わるけど掘り進める際、この階層が一番下なら少しずつ下に掘っていっておいて。」
「分かりました~。」
とりあえず、味方なら一応知識の共有くらいはしといた方がいいだろうしな。まあ、俺の固有スキルについては詳しく話す気はないが。
「あ、部屋作れたら言ってくれ。布団とか渡してやるから。」
「布団まで入っていたんですか!?」
「念には念を入れて何セットか持ってきた。」
「用意周到ですね!」
「物事は常に最悪を想定して動くこと。これはなくなったじいさんから習ったことだな。」
「お爺さんすごいですね……。」
「まあ、嘘だけど。」
「嘘ですかっ!?」
「まあ、物事において最悪を想定して動くことは結局大切なんだけどな。じゃねぇとすぐ動けないからな。」
何が起こるかわからん人生。だから愉しいんだけどな。