プロローグ
人は英雄を好む。
英雄は分かりやすい。
強く。
正しく。
眩しい。
だから人は安心する。
救ってくれると思えるからだ。
問題を解決してくれると思えるからだ。
責任を背負ってくれると思えるからだ。
だから英雄は愛される。
勇者も。
英雄も。
救世主も。
皆そうだった。
だが。
勇者や英雄が去った後の歴史を知るものは限りなく少ない。
大陸歴七三二年。
魔王討伐を成し遂げた勇者アレクシスは故郷へ帰還した。
人々は祝った。
国中が歓喜した。
戦争は終わったのだと。
平和が訪れたのだと。
だが十年後。
その王国は滅んだ。
当然だ。魔王より強大な力を持つ者を人が恐れないわけがない。
大陸歴七六五年。
異世界から召喚された賢者レオナルドは革命を起こした。
腐敗した貴族を打倒し、新たな政治制度を築いた。
人々は歓喜した。
新しい時代の到来だと。
だが十五年後。
その国は内戦によって崩壊した。
当然だ。異世界の政治制度をそのまま転用したところで上手くいくはずもない。
大陸歴八一三年。
神に選ばれた聖女ミリアは多くの知識で百万人を飢餓から救い、その後も多くの人々を救い続けた。
人々は奇跡だと讃えた。
だが彼女の死後。
奇跡に依存した国家は何も残せず静かに滅びた。
当然だ。施されることに慣れた人間ほど欲深いものはない。
そこで本をパタリと閉じて、棚にしまう。
窓の外はもう闇に包まれている。そろそろ黒曜宮に戻らないとメイドたちがうるさい。
黒曜宮に向かいながらも考える。
英雄は救う。
確かに救う。
だが。
ほとんどの英雄は永遠に生きることはない。
そして何より。突出した人間が解決した問題は
真に人間が解決したということにはならない。
困ったら英雄が、勇者が、神が解決してくれると思ってしまうからだ。
異世界の力が関与すれば歪な技術進歩をした世界になってしまう。
世界は順当な進歩を遂げなければならない。
異世界の力が介入して進歩した世界など長続きするはずがない。
いつか必ずどこかで綻びがでる。
---私が、正さなければ---
そろそろ動き出しても良い頃合だ。
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帝国首都
黒曜宮。
夜。
巨大な窓から見える星空を眺めながら、一人の少女が立っていた。
黄金の髪に紅い瞳。
まだ十代半ばに見える少女こそ帝国皇女 シア・フローランティアである。
その手には一つの報告書。
最新の召喚計画記録。
ある王国が秘密裏に異世界人召喚を計画しているという情報。
少女は報告書を閉じ、机の上に放り投げて鼻で笑う。
「またか」
呆れたように。
心底つまらなそうに。
「何百年経とうが変わらんな」
部屋の扉が開く。
銀髪で淡紫の瞳の少女が静かに入ってくる。
「シア様」
「ノックくらいしろ、何の用だ。リセル」
「急ぎの報告ですので失礼しました。帝国内で進行していた召喚準備が
ようやく完了したようで、あと数時間ほどで召喚される見込みです。」
沈黙。
数秒後。
シアは静かに笑った。
その笑みは。
歓迎の笑みではなかった。
「なら、迎えに行くぞ。」
赤い瞳に冷たい光が宿る。
「召喚されるのはリセルの予想通りか?」
「ええ。生贄の量や術師の人数、星の並びを見ても大きなズレはないです。」
「そうか、では見定めてやろう。」
「この世界に順応すると言うなら見過ごそう。」
「英雄ごっこを始めると言うなら……その時は私が片付けよう。」
初めての方は初めまして。見たことある人はこんにちは。
今回が初投稿なのでいないと思いますが(´>∀<`)ゝ
書き溜めがないので不定期更新となってしまいます。
ですが、頑張って続けようと思っているので末永くよろしくお願いします。




