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異世界魔法、観察してみたら  作者: 猫チュー
第二章 夏休みの雨編
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第86話 ゆびきりげんまん

 翌朝。

 使用人さんを手伝って馬車の上の革製トランクに荷物を詰めていると、女の子の声が響いた。


「あー!おにいちゃんだー!」


 聞いたことのある声に振り向くと、ケミ村で改良ポーションを使ったあの女の子がこっちに手を振っていた。

 ちょうど詰め込みは終わったし、シートをかぶせるのは御者さんにバトンタッチして、女の子の元まで移動する。

 隣にいた母親に軽く目礼をして、少女の頭を撫でる。


「久しぶりだね。無事に辿り着けたみたいで安心したよ」


 この世界の旅は、野盗に襲われたりするくらいには危険だ。

 無事で本当に良かった。


「ほら、お兄さんに返すんでしょ?」


「あ!」


 女の子が「思い出した!」みたいな表情をして、ポーチを開く。

 たぶん、師匠のタリスマンかな?

 でももう一度会えるとは思ってもいなかったし、あげるつもりで渡したんだよね。


「おにいちゃんありがとう!」


「どういたしまして。でも、これは君が持っていて」


「よろしいのですか?」


 そう問いかけてくる母親に頷き返す。


「ええ。元々そのつもりで渡しましたし」


 師匠にも既に報告済みだしね。


「お兄さんがそのお守りくれるって」


 女の子が満開の笑顔になる。

 それまでもニコニコ笑顔だったけどね。

 でも、そんなに喜んでもらえたのかな?

 

「おにーちゃん!ありがとう!」


「どういたしまして」


 かわいいなあ。

 優しい気持ちになれるよね。小さい子の無垢な姿を見てると。


「その子が例の子?」


 芽結の声に振り返る。

 いつの間にかみんなが宿から出てきていた。

 ほとんどが貴族の家のメンバーの中、平民の僕は率先してお手伝いを申し出ていたんだ。

 ……同じく平民のはずのメリアはみんなとお茶してたけど。


「そう!かわいいでしょ?」


「別に鈴の子ってわけじゃないでしょ」


 まぁ、芽結さんの仰る通りなんですけどね?

 しかしかわいいなぁ。

 村の子たちもかわいかったんだけど、あっちはどの子もどちらかというと悪ガキの類だった。

 それはそれでかわいいんだけど、こういう、純粋で光属性の子ってのもかわいいもんだなぁ。

 そう思っていると、


「や、やはりお貴族様だったのでは?」


 母親がなぜか狼狽している。

 その目は芽結たちと馬車の間を往復。


「ハーレムだって思われたんじゃないの?」


 貴族は側室持ちが普通→立派な馬車→大勢の女子たち。こういうことか!


「ちっ違うんです!」

 

 僕は慌てる。


「おにーちゃんもてもてだねー!」


「ちがうんだーーー!」


 母親以外のみんなが笑う中、僕の叫びが木霊した。


 数分後。


「――と、いうわけで、僕はただの平民で、貴族はそちらの女性方です」


 一人平民も混じってるけど。


「しっ、失礼しました!」


「い、いえ。わかっていただけたなら……」


 女の子の方はわかっていそうだったけどね。


 その後、双方の紹介をしてから少し談笑して出発することになった。


「おにいちゃんいっちゃうの?」


「うん。でもまた帰りにこの王都に寄るからそしたらまた会おうね」


「うん!絶対だよ!」


 ああ、そうだ。


「じゃあ、指切りしようか」


「ゆびきり?」


「僕の故郷に伝わるおまじないだよ。嘘ついたら針を千本飲ませるから、約束は守ろうねって約束する方法だよ。小指出して」


 女の子が小指を差し出してくるのでそれを絡ませる。


「ゆびきりげーんまん。うそついたらはりせんぼんのーます。ゆびきった!」


「きった!」


 女の子も「切った」だけ真似する。

 女の子は満面の笑顔だ。

 こっちもつられて笑顔になるよね。

 あ、そうだ。

 

「そういえば、この辺りに住んでるいらっしゃるんですか?」


 帰りに来ても、また会えるとは限らないしね。


「ああ、すぐそこの家なんですよ」


 母親が指さす方に目を向ければ、本当に目と鼻の先だった。

 こんないい所に、しかもわりと立派なお家よ?


「帰りに声をかけさせてもらってもいいですか?」


「この子も喜びますので、お手間でなければ」


 非常識じゃない時間にご挨拶に伺おう。


「じゃあ、また会おうね」


「おにいちゃんばいばーい!」


「達者でな」「「「またね」」」


 アルソはかなり彼女らしい言い方で、芽結とサクラとシノカは声をそろえて。

 ローン、クイザはおっとりと、レッタとカホクは無言で、メリアは大きく手を振ってくれた。

 使用人さんや御者さんも手を振ってくれている。

 やがて彼女らが家に入ったころ。


「本当にかわいい子だったね」


「でしょ?」


 芽結もかわいいって言ってくれてなぜか嬉しくなる僕。


「鈴の子じゃないんだけどね」


 そうだけど。


「じゃあ、出発しましょう」


 芽結が号令を出して出発することになった。

 帰りにまた会えるのが楽しみだなぁ。

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