第84話 異国の香り
ついにブイニシャに入った!
こっちの世界に転生してからは、国外は初だ。
いや、元の世界でも海外経験ないんですけどね?
「うーん。そんなにレハチワと変わらないなあ」
変化のなさに僕がぼやくと、
「そうですかあー?」
「まだ国境を越えたばかりですし、そうそう変わるものではございませんわよ」
ローンとクイザがそれぞれ反応してくれる。
ローンとクイザでは感覚が違うらしい。
まあ、日本に居た時も、県境を超えたら急に景色が変わったりとかはしなかったし、そういうものか。
てか、国と国が陸で繋がっていると、国境越えってすごくあっさりしてるな。
川は渡ったけどね。
少し行くと――
「あれは……薪か」
薪が円柱型にたかーーーーーく積んである。
「北部で取れた薪は現地で細かく切られてこうやって薪として乾燥させるそうですわよ」
「あの量をこっちまで持ってくるのは大変そうですね」
「馬車でゆーっくり持ってくるのですわー」
ローンさんのしゃべり方もゆっくーりですわー。
「あれは?」
薪とは別に何か干されてる。
「あれは……干し野菜ですわね」
クイザが言うには夏野菜なんかを干しているらしい。
へぇー。
日本では見た事なかったなー。
いや、あんまりあちこち行けたわけじゃないから、日本でもあったのかもしれないけどさ。
「国外に来たって感じがしてきたなー!」
僕が言うとクイザがクスクス笑った。
「レハチワでも、ああいう光景が見られないわけではございませんわよ」
あ、そうなの?
まぁ、そっか。
木材とか全部ブイニシャからの輸入ってわけじゃないか。
タキンチにも個人の家になら薪棚があったけど、ああいう円柱形のは初めてだなー。
さらに進むと――
「あれ?なんか酸っぱい匂いがしない?」
「木酢ですわねー」
木酢ってなんですか?ローンさん。
「炭を作る過程でー、できるらしいですわよー」
そっかー。
炭も作ってるんだねー。
「二人とも、色々教えてくれてありがとう」
二人はニコニコ笑顔を返してくれた。
ごっはんー!ごっはんー!
宿について一休みした後の夕飯である。
この旅の間色々な町でご飯を食べたけど、それぞれ違うものが出てきて面白かった。
今日は何が出るのかなー?
待っている間にこういうのに詳しそうな人物に聞いてみた。
「木酢って何ですか?」
「ボクの席にわざわざ来たと思ったらそういうことか」
だって解説役は必要じゃん?
「キミなら知ってると思ったが……。木酢は炭を作る過程で出る煙を冷やすとできるものだ。高級品だぞ」
ほえっ?
レッタのような上級貴族の口から高級品なんて単語が出てくるなんて思わなかった。
「何に使うんですか?」
「キミはタキンチの出身だろう?本当に知らないのか?」
そう言われてもなあ?
タキンチって言えば農業だけども。
「木酢は殺菌や防虫剤として使われるんだ。農薬としての用途もあるぞ。ただし濃度はしっかり管理しないと大変なことになるがな」
でも高級品の農薬なんて使って利益になるのかな?
「高級作物に使うなら問題ない。むしろそういう目的で使うものだ」
また思考を読まれてた。
あ、そういえば炭って言ってたな。
「あの、木炭って……」「お待たせいたしましたー!」
ちょうど料理が届いてしまった。
続きは食べながらになりそうだ。




