第一章幕間五 結束と孤立
広い会議室。
6人の男たちが向かい合っていた。
「では、レハチワの提案通りで異論はございませんな?」
バネロミア王の確認に、皆が大きく頷く。
彼らはナウォックの国主達であった。
セテラムは、戦争で負けたが、王は息子と自身の腹心を逃がしていた。
東に落ち延びたセテラム王子はリールトリーヴで匿われていたが、レハチワから親書が届いたため、この会議に参加することとなった。
オデロプ王がセテラムの王子に言う。
「これからは貴殿が王となって国を導かねばならぬ。精進されるがよい」
同盟の仲間の叱咤に、新たな王は頭を下げた。
「では、王としての初仕事だ。我らが協力するから、ラーンクへの書をしたためよ」
ニロパップ王が背中を押す。
国主らは新たなセテラム王の後ろであーだこーだ言いながら口を出し、彼に書状を書かせた。
「薬物使用と奇襲の糾弾。セテラム返還に、50年の不可侵の要求。不服があれば他国を交えて直接交渉。うむ。これならばよいだろう」
50年はツキーズの案だ。
実際は30年くらいで落ち着くと読んでいる。
また、奇襲はミカミイ要塞だけでなく、セテラム攻め時にも行われていた。
「あとは我々全員の署名だな」
そうして全員が署名をした。
「そうしたらば他国の署名だな」
全員でうんうんと頷く。
「本当はレハチワのあの使者殿があてにできればよかったのだが……」
「他国の使者殿を我々の都合で何日もお引止めするわけにはまいりますまい」
ブイニシャ王のぼやきにリールトリーヴ王が返す。
「レハチワの使者殿だと、なぜよいのでしょうか?」
事情を知らないセテラム王が疑問を口にする。
「そうか、そなたは知らなかったのだな」
「レハチワの使者殿は俊足で知られていてな。馬よりも早く駆けることができる」
「なんと!?」
「彼女であれば3~4か月で大陸を回りきろう」
「馬で一年弱の距離ですぞ!?」
セテラム王の反応がおもしろかったのか、少しだけ盛って答える王族たち。
「使者殿がいれば早くにセテラムが返ってくるかもしれぬのに、すまんな」
「皆様が謝る必要などございません」
セテラム王はそれに……と続ける。
「取り戻せる可能性が示され、皆様のお力添えもいただける。これ以上は贅沢と言うものでしょう。ただ――」
セテラム王のトーンが下がる。
「ボロボロになってしまった国を立て直すのにどれくらいかかるか?私でやれるのか?それが不安です」
「なに、そちらも我々が力を貸そうではないか。のう?」
リールトリーヴ王が問いかけると、皆から「そうだ」「そうだ」と声が上がった。
セテラム王は頭を机に擦り付けて感謝した。
ところかわってこちらは1年後のラーンク王の執務室。
「くそっ!くそがぁ!くそがぁ!」
ラーンク王は親書を睨み付ける。
「セテラム返還に飽き足らず、不可侵だと?しかも50年も!」
「これはもう、足元を見られているとしか」
「わかっている!」
ラーンク王は握った拳をわなわなと震わせた。
「直接交渉するしかあるまい……」
「そうですな」
「調子に乗ったやつらの顔を見るのは不服だがな」
苦虫をかみつぶしたような顔をする。
「すぐに書状を送れ」
「ハッ」
自分の代わりに書状を書くために退室する側近をしり目に大きく肩を落とす。
「いったい、不可侵条約を何年減らせるかな……」
ラーンク王の弱気なつぶやきは、誰にも聞かれることもなく消えていった。




