50話 王都の危機
砦での長い戦いを終え、俺たちは街へと帰還した。荒廃した砦の風景が徐々に遠ざかり、代わりに活気ある街並みが視界に広がる。街の門をくぐると、いつもの喧騒が聞こえてくるが、その中にどこか不穏な空気を感じた。
「やっと戻ってきたね。休む時間も必要だと思うけど…何か様子が変じゃない?」
葵が街を見渡しながら言う。確かに、人々の顔には不安の色が浮かんでいる。
宿に向かう道すがら、アルディアがこの世界の国々について話してくれた。この世界にはいくつかの大国があり、それぞれ独自の文化と軍事力を持っている。
1.セリオス王国
中央に位置し、この世界の経済と文化の中心地である。広大な平野と豊かな農業地帯を持ち、王都エリュシオンは壮麗な宮殿と強固な城壁で有名だ。
2.カレンデア帝国
北方に位置し、厳しい環境の中で鍛えられた強大な軍事力を誇る。侵略者の影響が少ない地域だが、逆にその軍事力を侵略者対策に向けている。
3.ラナスト連邦
複数の都市国家が集まる緩やかな同盟。自由な商業と独自の技術革新で栄えているが、軍事力は各都市に依存しているため、侵略者に対してまとまりを欠く。
4.ベリウス砂漠国家
砂漠地帯に広がる国で、独特な魔法技術と貴重な資源を持つ。侵略者の標的になりにくいが、その影響がゼロではない。
宿に戻り、情報屋から最新の情勢を聞くと、驚くべき事実が明らかになった。
「侵略者がセリオス王国の王都エリュシオンに攻め込んでいるらしい。奴ら、ついに本気を出したんだ。」
情報屋は焦った口調で語る。
「王都だと…?」
俺たちは言葉を失った。エリュシオンはこの世界の中心であり、堅牢な城壁と騎士団によって守られている。しかし、それでも侵略者の力の前では防ぎきれないのか。
「このままだと、王都が陥落するのも時間の問題だ。何とかして防衛の手助けをするか、対抗策を考えないと…」
俺たちは改めて状況の深刻さを認識した。侵略者たちの目的は明らかに全土の制圧だ。この世界を守るため、次の一手を考えなければならない。
侵略者が王都エリュシオンを攻めているーーその情報を聞いた俺たちは、急いで街を発った。皆の戦いで疲労は残っていたが、そんなことを言っている暇はない。この世界の中心とも言える王都が陥落すれば、世界全体が崩壊の危機に瀕する。
「急がないと....王都が危ない。」
俺は焦りを隠せず、馬車の速度をさらに上げるよう御者に頼んだ。
「でも、侵略者がどれだけの戦力で攻めているか分からないわ。準備はしておいた方がいいかもしれない。」
葵が冷静に提案する。確かに、無計画に突っ込めば返り討ちに遭う可能性もある。
「アルディア、お前の知識で何か助けになりそうなことはあるか?」俺が尋ねると、アルディアは少し考えてから答えた。
「エリュシオンの城壁は強固だが、侵略者の力が未知数だ。このままだと防衛が持たない可能性もある。だが、王都の中心には古代から伝わる防衛システムが隠されていると聞いたことがある。もしそれが使えれば....」
「それを探し出して、活用するってことか。」俺は小さく頷き、少しでも希望を見出そうとした。
数時間の移動の末、王都エリュシオンが見えてきた。しかし、その姿は想像を絶するものだった。壮麗な城壁は一部崩壊し、空には黒い霧が漂っている。城下町からは煙が立ち昇り、侵略者の軍勢が次々と内部へ侵攻していた。
「ひどい...こんなことになっているなんて。」
葵が呟く。俺たちは馬車を降り、徒歩で王都の内部に向かうことにした。
城門付近では、住民たちが恐怖で逃げ惑い、兵士たちが必死に応戦している。しかし、侵略者の圧倒的な力の前に防衛線は崩れかけていた。
「このままじゃ城内に侵入されるのも時間の問題だ。」俺は剣を握りしめ、周囲を見渡す。
「おい、あんたたち!戦えるならこっちへ来てくれ!」兵士の一人が俺たちに向かって叫ぶ。迷う間もなく、俺たちはその場に加勢した。
侵略者の兵士は無数におり、普通のモンスターとは比較にならないほど強力だ。だが、俺たちはすり抜けバグや腕伸ばしバグを駆使しながら、次々と敵を撃破していく。
「すり抜けバグで背後に回り込む!」
俺は敵の大きな斬撃を避け、壁をすり抜けて背後から一撃を叩き込んだ。
「腕伸ばしバグでまとめて相手する!」
アルディアが指示を出すと、俺は腕を伸ばして複数の敵を一気に薙ぎ払った。
侵略者たちを一時的に押し返し、俺たちは防衛線の指揮官から状況を聞き出した。
「侵略者たちは王城を目指している。奴らの目的は王都全体の支配ではなく、どうやら王家に関係する何かを奪うことのようだ。君たちが戦えるなら、王城に向かってくれ!」俺たちは頷き、王城へと進撃を開始した。その途中、街の様子はひどく荒廃していたが、ところどころで住民たちが隠れながら生き延びている姿が見えた。
「絶対にこの街を守らないと。」葵が決意を込めて杖を握りしめる。
ついに、王城の大広場に到着した。そこには侵略者の幹部と思われる巨大な怪物が立ち塞がり、兵士たちが次々と倒れていく光景が広がっていた。
「ここが正念場だな。」
俺は剣を握り直し、仲間たちと共に立ち向かう準備を整えた。侵略者の王がこの先にいることは間違いない。その力を前に、俺たちはどれだけ抗えるのか。




