第七十五章 弟妹英才教育 3.修行の計画(その2)
~Side ネモ~
木琴へのあの喰い付きっぷりを見りゃ解る。教科書的な「修行」をやらせるよりも、遊びの要素を取り入れた方が良いのは明らかだ。ついでに複数のレパートリーを取り揃えてやりゃ、更に修行に身が入るだろう。
取り敢えず火魔法に関しては、ネロの分だけとは言え目処は立った。ネイラは……うん、生み出した火の玉を自在に操れるように訓練させるか。ネロも一緒に。延焼には気を付ける必要があるが、この手の訓練は他の魔法にも応用できるしな。
水魔法と土魔法はそこそこ熟練度を稼いでいるようだが、魔力操作という観点から見るとまだ不充分だろう。こっちも火魔法と同様に水の玉と土の玉を生み出して、それを操る訓練と……そうだな。
水魔法の場合は霧を作り出す訓練でもさせてみるか。こっちはちょいと難度が高いから、まぁ目標にするくらいでいいだろう。あとは適当に干物作りのお手伝いでもさせておくか。
土魔法の器用度を上げるには、土で色々なものを象らせるのが基本だよな、やっぱり。前世で読んだラノベとかでも、土魔法で色んな物を創るってのはお約束の展開だったし。けど……そうだな。
固い土は練習には不向きだし、畑の土を弄らせるわけにはいかんから、ここはお兄ちゃんが砂場を拵えてやるか。川の砂でも浚ってきて水気を抜いたやつを、どっかの隅に纏めておけばいいだろう。創造性を育むんなら、サンドボックスは定番だよな。
遊んでいるうちに砂が湿ったら、水魔法で水分を抜かせてやればいい。水魔法の訓練にもなって丁度好いってなもんだ。
……前世の公園の砂場みたいに、野良猫とかが糞をしないように注意しておく必要はあるか。時々火魔法で加熱消毒させた方が良いかもしれん。
さて、問題は風魔法だ。こっちは動きが見えにくいから、そのままだと訓練が難しいんだったな。まぁ、魔力視を鍛えてやれば見えるんだろうが、ここはもっと直截的な解決法を採るか。
「お兄ちゃま、それ、なにするの?」
「四角い紙?」
「おぉ、こりゃ折り紙ってんだがな。これをこうして、こうやって……」
「「――わぁ!?」」
俺が二人に折ってやったのは、紙風船と紙飛行機だ。風の動きが目で見えないんなら、目に見える目標を作ってやればいいだけだ。
例えば、紙風船をこうやって風で浮かせ続けるように……っと、結構難しいな、これ。
「「むずかし~い」」
まぁ、上手くできるように頑張るんだな。初心者には紙飛行機の方が取っ付き易いか? こうやって飛ばしてやって、落ちそうになったら風を送ってやれば――
「「――わぁ♪」」
うむ、こっちはちゃんと上手くいった。弟妹たちも何とかやれそうだし、何なら二人で紙飛行機のレースをさせるって手もあるな。
あとは……空気の動きってのは要するに音波なわけだから、静音の魔法っていう手もあるが……弟妹どもにゃちと難度が高過ぎるか。それに身に着けたら身に着けたで、木琴を弾き放題に弾いたりして、母さんから叱られそうな気もする。……原因を作ったといって俺にまで迸りが来そうだな。却下だ。
実戦的というなら、風圧で出足払いなんてのもあるんだが……弟妹どもにゃまだ早いだろう。
残る木魔法だが……確かにバイオハザードを起こしそうで怖いんだが、〝魔法で起こした現象は魔力が切れれば勝手に収まる〟から心配は要らない……って学園で教わったんだよな。魔法で急速に成長させた植物は、魔力の供給が無くなれば成長を止め、極端な場合は枯れるそうだし。注意してやれば大丈夫だろ。
とにかく雑草を茂らせたって事は、或る意味でちゃんと木魔法が使えたって事だ。それを前提に、修行の計画を考えよう。
植物を相手にする木魔法は、対象とする植物の状態を見ながら使うのが基本って話だったから……こりゃ、祖父ちゃんのお手伝いで畑の世話をさせるところから始めるか。俺も木魔法はそんなに得意じゃない。……魔力の加減が難しいんだよ。弟妹どもに偉そうな事は言えないな。
『マスター 〝けいけんしゃはかたる〟って いうのはー?』
……そうだな。寧ろ俺の失敗談の方が有意義かもしれん。……うっかり範囲を指定せずに魔法を放って、自分たちまで草に埋もれた話とかな。
『おおきなおはなをさかせて よろこばれたって きいたけどー?』
……薔薇の蕾に成長促進の魔法をかけた時だな。あっという間に小玉西瓜くらいのサイズに成長しちまって、茎が折れそうになったから、慌てて強化の魔法をかける羽目になっちまった。
面白がったジュリアンが、実家に持って帰るとか言ってたが……忘れよう。
『そだてるのは だめー?』
『最低でも祖父ちゃんから育ち具合の見方を教わって、OKが出るまでは駄目だろうな』
祖父ちゃんなら寧ろ除草の方を喜びそうだが……前世じゃ2,4-Dなんて除草剤もあったわけだし、植物の異常生長を誘発させて枯らすなんて真似もできそうだが……枯れ葉剤に繋がりそうな魔法は控えるべきだろうし……うん、余計な事は言わずに黙っておくか。




