第七十五章 弟妹英才教育 2.修行の計画(その1)
~Side ネモ~
「え? 料理の手伝い? ……ネロに?」
「うん。まぁ手伝いって言っても火の番だけど。最初の手解きは俺がやるからさ」
弟妹どもの現状を確認した俺は熟慮の結果、属性魔法の訓練内容を見直す事にした。生活魔法の訓練は、基本的に今のままでいいと思う。何しろ「生活」魔法って言うぐらいだ。普通に生活してれば使う機会、言い換えると鍛える機会は幾らでもある。そんな機会に乏しい属性魔法の訓練計画を優先――ってのはおかしな話じゃない。
そこで具体的な方針だが、属性魔法のレベルを上げたり先へ進めるより、技の熟練度を上げるというのが無難だろう。大体、二人とも祝福の儀もまだなんだ。無理に修行を進めたって、碌な事にならないのは目に見えてる。物事何でも基礎が一番大事だからな。熟練度を上げて【魔力操作】の習得を目指す――これでいこう。
何しろ弟妹たちは俺と違って、【鑑定】を誤魔化すスキルを持ってないんだ。下手に魔力量を増やしたって、悪目立ちするばかりで碌な事にならん。【魔力操作】ならそう不審に思われる事も無い筈だ。
弟妹たちは魔法の威力を高めたいみたいな事を言ってたが……却下だ。ガキのうちからデカい魔力を身に着けたって、それに振り回されるのが目に見えてる。いやそもそも、魔力量なんてそう簡単に増やせるもんじゃない。……まぁ、子供のうちから魔獣の肉を食って、属性魔法をバンバンぶっ放してりゃ、ひょっとして増えない事も無いかもしれんが……んな事やってもデメリットしか無ぇわ。
一方で【魔力操作】をものにすりゃ、小さい魔力でも大きな事ができるんだ。〝発動の速さと射程を上げりゃ、ネズミなんざイチコロだ〟――とでも言ってやりゃ、弟妹たちを丸め込むのは難しくないだろう。
そこで魔力操作の訓練だが、同じ行動を同じように何度も繰り返す――これに尽きる。作業を延々と繰り返すのに飽きが来るってのが、【魔力操作】習得の最大の難関だ……ってのが、遠い目をしたエマ先生のお言葉だったっけか。
――そこで俺は考えたね。
十年一日の如き単調さがネックだっていうんなら、それに打ち勝つだけの強い動機を与えてやりゃあいいんじゃないかって。俺が目を付けたのが家事だった。
何しろ家事なんてもんは、ルーチンワークの最たるもんだ。しかも親のお手伝いって形なら、弟妹どもにやらせるにゃ打って付けだろう。
「でも、ねぇ……火の番くらいで修行になるの?」
「一定の火力を維持させる訓練をさせたいんだ。ほら、【着火】だとそこが難しいからさ」
「そうねぇ……」
母さんは少し渋ってたが、火魔法だと好い感じに焼けるというのが決め手になったみたいだ。……俺の【着火】だとそれが難しくて、焼け残りからいけそうな部分を探して食うしかなかったからな。
ま、妹にさせるのはまだ早いが、そこは弟の修行を見ていてもらうか。見るだけでも修行の一端くらいにゃなるだろう。
だが……これだけじゃ計画として不充分だ。第一、弟はともかく妹の修行計画については、何も考えられてないわけだからな。
――俺は更に考えたね。
(……要するに繰り返し続けても、退屈する事も飽きの来る事も無いような、そういう修行の形を目指せば良いわけだよな)




