第七十二章 相乗り帰省道中記~六日目 道草~ 1.行人
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
~Side ネモ~
カソルの宿で一泊した翌朝、お嬢の意見を容れて三ギルドにスノーギガスの屍体を卸したんだが……想像以上の喰い付きっぷりだった。冒険者ギルドのサブマスが〝今年は豊年だ〟なんて言ってたから、スノーギガスなんざそこら中に出廻ってて、値崩れしてるんじゃねぇかと危ぶんでたんだが……
〝世間一般でスノーギガスが多いと言えば、それは被害が多いという意味であって、豊作だとか素材の流通が多いという意味ではありませんから〟
――と、何故かジト目で力説された。俺に落ち度は無いと思うんだが……解せぬ。
まぁ考えてみりゃ、「スノーギガス」って言うくらいだから、雪深くない場所には現れんよな。この辺りは王都よりかなり南になるし、雪もそこまで積もらんのかもしれん。だったらスノーギガスも出て来んか。
……お嬢が何か言いたげな視線を寄越してたが……結局何も言わなかったところをみると、大した事じゃなかったんだな、うん。
シィフォン峠で狩ったスノーギガスは二頭いたから、その二頭分を売っ払おうとしたんだが……
〝自分たちだけで独占したら他の者たちから怨まれる〟
――なんて事を言って辞退された。そんな大層なもんなのか、スノーギガス?
……王都の近くで個人的に狩ったやつ、肉は半分ほど食っちまったが、素材になりそうな分は一応取ってあるんだよな。
……そうだな、チャシクのギルドはそこまで大きくないし、俺の食い残し……って言うのもおかしいが、ともかく個人的に狩った分の素材を渡すだけで充分だろう。
残った一頭はウォルティナのギルドに渡すか。……ゼハン祖父ちゃんが文句を言って来そうだが、三ギルドへの義理を欠くわけにはいかんからな。
……なんて事を熟々考えていると馬車が停まった。何かあったのかと思って外を覗くと、目を疑うような光景が飛び込んで来た。
「……何やってんだ? ありゃ」
「大勢で家屋に火魔法を撃ち込んでいるように見えますわね」
「やっぱりそうだよなぁ……」
何かの破壊活動かと思ったが、それにしちゃ白昼堂々と事に及んで、臆する様子が微塵も無い。テロリストの態度とは思えんな。
いや……と言うか、あいつらって……?
『きのう ギルドにいた やつらだよー?』
あー……やっぱりか。何か見憶えのある連中だと思ったんだよな。俺の方を見て露骨にビクッとしたやつもいたし。
「そうですわね。幾人かは私にも見憶えがございますわ」
「あー……なら確定か」
ヴィクとお嬢まで見憶えがあるって事は、やつらは間違い無くカソルの町の冒険者だろう。って事は、アレは非合法な活動とかじゃなくて、ちゃんとギルドを通した依頼だって事だ。……地上げとか抗争の依頼でもあったってのか?
「いえ……あの家、妙に古びていません? 人が住んでいる様子もありませんし」
「あー……そう言われりゃ、そうか」
『なかには だれも いないよー』
中の気配を探ってもらったヴィクがそう言った事で、少なくとも住人を閉じ込めて蒸し焼き……なんて、猟奇な話じゃないのは確定したわけだが……さて?




