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以前、17・18として掲載していた物になります。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。
リリアの出産間近からリーファにお願いしていた配達も自分で行くようになり、それに当たり、同時に仕入れや薬草採取へ行くこともあるためムシコブにお願いして二台あったうちに一台の自転車の後ろに荷台を付けてもらい、荷物が載せられるようにしてもらった。
今日も配達と市場を同時に回り、食材も一緒に買っていると遠くで聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
「これ食べたい。」
「これから寝るのに食べたら太るぞ。」
「大丈夫、あたし細いから」
クリスタルだ。
また、知らない男と歩いている。
先週見かけたときは何度か見たことのある優男だった。
顔はあまり覚えていないが長い髪をみつあみにしていつも似たような服装だから覚えたが、目深な帽子で目元は見えない。
ギーのところに来ていた男も目深な帽子だったが毛色が違う。
この男、名前をゲーラというらしく、一度重度の脱水でギーに運ばれてきたことがあった。
「急いで点滴するから奥運んで!」
私がいつも寝ているベッドは診察台でもある。
そこに寝かせ二の腕をゴムで占めると針を血管に刺す。
点滴をセットして、扇風機を回し始める。
濡れタオルで体を拭いて、寒くなったらいうようにと伝えて少し離れたところに座った。
「様子は?」
ギーが覗いてくる。
「点滴で何とかなるわ。病院へ行くほどじゃないけどここまで気が付かないなんて何をしていたの?」
「炎天下で押し競まんじゅうされていた。」
お気の毒に、帽子を顔の上に乗せているため見えないが、確か顔は良かった気がする。
容易に想像できる中にクリスタルもいそうで笑える。
ゲーラが回復するまで、近くの椅子で二人おしゃべりをしていた中で点滴について改善はないかという話を熱弁してしまい、途中からギーは寝ていた。
この日はギーが定期的に休む日。
休みの日に会っていたのはゲーラなのだろう。
そんなことがあって以来、二人はバラバラだが、時々顔を出すようになった。
病人でもけが人でもないのだから来るなと言ったら手土産を片手に来るのだから無下にできず、安いお茶を出している。
気づいたときには三人でご飯に行くことになっていた。
私一人では外食はしないし、三人で行くときはゲーラが払ってくれるから少しいい物が食べられるのはうれしい。手土産に食事に、さらに時々花などプレゼントもくれる。
ギー曰く、狙われているらしい。
どうやら口説かれている最中の様だ。
全く興味ないが、
と、思ったが、ふと一人になるともうすぐ二十四歳になる。
結婚適齢期に入るだろう年齢だが、結婚のケの字、どころか恋人も初恋すらまだな女が何を言っているんだろう。
今は仕事が優先だ。
これが逃げのセリフだと何度もリリアに言われたが恋なんて興味がないというとそれも逃げだといわれ、もう何も言えなくなった。
サンスも忙しいのか、会合で追うことはまずなくなった。
手紙を出しても帰ってくるのは数か月後ということも多く、歩くとなかなか離れている彼女の店へ行くほど店を開けることもできず、きっと向こうもそうなのだろう。
私よりもずっと前から白衣を着ているサンスはカルミナの灰魔術師の中では有名で将来はご両親の後を継いで王宮務めになるのではないかという話だった。
王宮の灰魔術師だった夫婦が亡くなり、急遽募集した薬師は二人分の仕事をこなすのがやっとで余裕も知識も夫婦ほどではないことからここ数年見習いを育成することにも手を付け始めたらしいと聞いたが王宮で見習いとは少し私と立場が違う。
学ぶ環境が違う。
なんだかもやっとしてしまった。
「今日はもう店仕舞い?」
なんていいながら店のドアを開けて入ってきたのはゲーラだった。
その手には花束がある。
作り方が違うから店長の店ではない。
ゲーラが来店したらクリスタルにすぐつばを付けられてしまいそうだ。
「今日はこれ、と、あとこれも」
そう言って花束がすぐにカウンターに置かれ、差し出されたのはお菓子の包み。
「チョコレート!」
固形のチョコレートはすぐに溶けてしまうため市場には並ばず、リリアも城勤めでもらったものだった。
リリアのよく食べていたのと同じメーカーのチョコレートに歓喜してしまう。
「ありがとう。いいの?」
「もちろん。好きだって言ってたから、家族は妹しか食べないし、使用人に配っても余るんだ。もらいものだけど良かったら食べて」
「コーヒー淹れるね。ゲーラは何か食べる?」
「お気遣いなく」
と、言われるが一人だけパクパク食べているのは気が引ける。
お皿にチョコを並べている間に一つつまんでします。
カカオやミルクの香りに甘さが乗っかり幸せだ。
ゲーラにはナッツやドライフルーツでも出そうかと引き出しを開ける。
そこには昨日焼いたスパイスの入ったクッキーがあった。
一緒にハーブのクッキーも焼いてあり、数枚お皿に乗せる。
「お待たせしました。」
コーヒーとクッキーやナッツたちの載った皿をゲーラの前に置くと不思議そうにクッキーを一つ取った。
「あまり嗅がない匂いがする。」
「鼻が良いのね。薬を作るのにも使うけど、料理で使うために買ったスパイスを混ぜてあるの。こっちはハーブ。子供たちには不評だったわ。」
「だろうな。辛味が強いし、鼻通りが良くなる。」
どうやら気に入ってくれたようでコーヒー片手にクッキーだけが消えていく。
「今度は子供向けにショウコンとはちみつで作ろうかと思っているの。」
「その方が子供には食べやすいだろうな。ショウコンって風邪予防にもいいし、体を温めるから年寄りも食べたほうがいいんだけど、どうもあの辛味で嫌煙されがちだよな。」
「だからはちみつと合わせるの。レモネードだって酸っぱいレモンが甘くなったからみんなよく飲むのだし」
コーヒー一杯を飲み終わる間にチョコは一粒まで、じゃないと
「寝れなくなるぞ。」
知っている。
わかっているが紅茶よりもコーヒーと一緒に食べたい気分だったんだ。
「チョコとコーヒーの組み合わせは覚醒効果があるが胃炎を起こしやすい。気を付けろ。」
「知っているわ。ただの知識欲ではなくて、私はちゃんとプロになるために勉強したのだから」
「そうだった。余計なお世話だったな。」
ゲーラの話は面白い。
白魔術師の友人からいろいろと聞いているらしく、医療関係に詳しく、私の知らないことも山のようにその口から出てくるため聞き流すということはしないが私だって会合でプロとして認めてもらい、白衣を着ているのだから知っていることも多いのだと彼に言うがいつもにこやかな顔で流される。
もう、この話は終わりにしようとチョコをほおばり、二杯目はミルクを持って来た。
この島の家畜に鳥だが卵を産まずに出産する種類があり、ミルクラウンと呼ばれ、メスだけでなく、押すも母乳を出して子育てをする。
頭に王冠のような飾り羽を持ち、ミルク色の体が可愛らしいため、ペットとして可愛がる貴族もいる。
その場合、品種改良をされ、美しい尾羽を持ち、広げて威嚇してくる姿が人気である。
ゲーラはクッキーを食べ終わり、ナッツに手を付けたため
「クッキーまだあるわよ。」
「もらえるか?」
不人気で在庫はたくさんある。
「何だったら持って行って、私ひとりじゃ食べきれないから」
「助かる。小腹が空いたときにちょうどいい。」
お皿にクッキーを並べ、薬を包む紙でクッキーを包んで渡す。
その後他愛もない話をし、気づくと外は真っ暗、間もなく夕日だろうという時間に来たゲーラが悪いが
「お腹空いたような、空いていないような。」
「少し菓子をつまみすぎたな。また来る。」
何か言葉を返すこともなく、ドアが閉まるまでを見送る。
数日後、今度はギーが来た。
旦那様が風邪をこじらせたとかで白魔術師が出した診断書をもとに薬を出す。
「旦那様仕事が忙しいのね。」
「それもあるが後妻を取る話が出ていて、それでさらに心労が来てる。」
「クリスタルは何て?」
「知らない。旦那様が何度か呼び出しているけど屋敷には来ないから」
相変わらず遊んでいるのだろう。
私よりも二つ上のクリスタルの方が婚期を気にしていそうだが大丈夫だろうか。
ギーは急いでいないといって紅茶を出すように言うため試作品のショウコンとはちみつのクッキーを出すとゲーラと同じようにずっと食べていた。
「あなたたちって似てるわね。」
「誰と?」
誰なんて知っているのは一人ぐらいではないだろうか。
「ゲーラとよ。年も同じなのでしょう。どこで知り合ったの? 確か八歳ぐらいからお屋敷にいるわよね?」
ギーは視線を窓の外に移す。
外ではことも達が遊ぶ声がする。
「あいつは俺の奴隷解放印を買ってくれたんだよ。」
「奴隷解放印って高いわよね?」
収容日からの日数計算で値段は違うがたった一日早くても庶民の一年分の稼ぎが必要だと聞いたことがある。
貴族だからと言って子供のギーの解放印はそんなものではなかったはずだ。
「俺の父親は貴族で母親が奴隷で、父親に認知されなかったことで俺も産まれながらの奴隷だった。とはいっても、生まれた直後に没落してほかの奴隷だった人たちと王宮で一次預かりになって、そこで偶然ゲーラの親父さんと出会って俺を将来息子付きの使用人にするってことで俺の将来は決まった。」
ゆっくり紅茶を飲み、クッキーを咀嚼する。
「それで、五歳の時、ゲーラがそれまでにためていたお小遣いや親父さんの手伝いで得た利益を使って解放印を買ってくれたんだ。」
「それなのに、近くにいないのね。」
「いろいろあって旦那様に自分のところに来ないか声をかけてもらったんだ。」
いろいろ。私には想像できないだろういろいろなのだろう。
薬を持って帰るギーを見送り、表に出ると
「今日はいいにおいする!」
と、子供たちが集まる。
「今日のは自信あるわよ。なんせ子供下のお兄ちゃんが大喜びで食べてたからね。」
子供たちの前にお皿を持って行き
「中で座って食べなさい。」
「はーい!」
と、元気に返事をするとそれを見てほかの子供たちも集まる。
飲み物替わりの補給水を飲ませる口実にお菓子を配るようになったのは心に余裕ができた、そう、ゲーラと出会ってからだろうか。
悩みを理解して、アドバイスをくれるから気兼ねなく相談してしまう。
そんな相手、向こうからしたらいい迷惑だろうか。
口説かれている最中なら話題の一部として流してくれるだろうか。
まったく興味はないが
相変わらずギーもゲーラも店に顔を出す。
お客の切れたタイミングで来るのだからどこかで見ているのではないかと思うときもある。
「見られてんだろそりゃあ」
ぎっくり腰になり、湿布を買いに来た店長と座って話すのは久しぶりだ。
補給水は店へおろしに行くが受け取るのは店番のクリスタル。
だいたい男性を誘い込み、長話の末に花を買わせるところまではまあ、いいとしよう。
でも、その花を受け取るのがクリスタル本人なのだからそれはちょっと待ったというと
「だって、ちょっとからかっただけであんなに真っ赤になって可愛いじゃない。」
なんて帰ってくる。
そりゃあ、胸元も肩も大胆に開いた服の女性と話をして赤くなるのは相手の男性がまだまだ若い、十代後半だろう青年だったからだ。
娼婦と間違えられるような行動をしかねないクリスタルにいつもため息が出る。
キノミやムシコブは市場でよくすれ違うがあまり話をする時間もなく分かれてしまうため、やはりよく合うのは子育て中のリリアとその夫リーファだろうか。
薬屋近くの教会に託児所があり、預けて働いている母親も多いが大半は娼婦の子。
そのまま迎えにこず、併設する孤児院へ入ることも多い。
店の前で遊んでいるのもそこの子供がほとんどだ。
お迎えの帰りに顔を出してくれるため長いことあっていないということはない。
「クリスタルの男癖はなんとかならんのか? あの男はだめだ。うちに手を付けられるような空きなないが、お屋敷はどうだろうな。」
盛大な独り言の間、間で腰痛に耐える声を漏らしているため内容が全く入ってこないがまた変な男に捕まったのか捕まえたのか、補給水を届けに行ったときに見た服装もアクセサリーもなかなか高価な物だったと思う。
下級貴族の家に寮が多いからと配達に行った際、複数名の娼婦が出入りしていたのにすれ違っている。
その娼婦も着ていたようなブランドだ。
下級貴族ぐらいなら普段着にしていそうな程度の値段だが、庶民には手の出しにくい金額の物をあんなに持っているのだ。
男に貢がせているのだろうかといろいろ考え始めると止まらなくなるためやめる。
もうすぐ私も二十五歳、人のことをとやかく言う前に自分のことを考えなくてはならない。
先日の会合で国内では二年前に一軒、さらに何年か前に数件報告のあったネコアシマダラの感染者が出たらしく、現在は隔離され、適切な治療が行われているため感染拡大のかの可能性は低いが十分に気を付けるようにといわれ感染者発見時のマニュアルが配られた。
今までは口頭で注意で終わっていたためマニュアルになるのは珍しいという声がする一方、王宮の灰魔術師見習いに配った物だろうかという憶測や、ゲラダ王子が白魔術師となってからいろいろと法律などの改正も行われているため皆にわかりやすく知らせる方法を取ったのでは、という話も出る。
そのゲラダ王子も今日の会合にも出ているし、だいたい毎度出席しているらしいがこの白衣の集団、しっかり顔を覚えているか名札をつけてくれていないと老年層が多く誰だかわからなくなる。
見習いでも白魔術師は白衣のため、プロなのかどうかも記憶するしかない。
今のところは出くわしていないのは確かだ。
王子と一言でも話をすると仕事以外の話はできないのだと護衛に止められる。
世間話もできないのだから身分の高い人は面倒だ。
ここ数か月で一気に増えたのが病院への品おろし。
会合で知り合った白魔術師の経営する町医者では薬屋が遠いこともあり、その場で処方できるようにストックしていることも多い。
そのため三件の小さな病院と契約し配達している。
さらに、大口のお客として貴族のお屋敷の他に大病院からも注文が来た。
だいたいの大病院は複数の薬屋と提携し、絶対に薬を切らさないようにしているためそんなに量が多いわけではないがそれなりの数要請されるため毎日仕事で忙しい。
「ノノ、聞いてるか?」
「聞いてますよ。クリスタルの男癖は今に始まったわけではないんですから何だったら旦那様に報告しちゃってください。もういい年なんですから」
「そういってもなあ」
花屋の水は量を多く使うことからスペールディア家を経由してナトラリベスから安価で仕入れていることになっている。
実際は地下に水路を通して屋敷で溜めた水を無料で使わせてもらっているため帳簿には乗らない。
これが切られると一律料金とはいえ、上限が少なからず存在する料金で、そのラインを超えると割増だ。
明らかに超えてる花屋にとっては痛い話のため旦那様の機嫌はできるだけ良くしたいがクリスタルののびのびした暮らしの報告もひつようとなる。
そこに、ドアが開く。入ってきたのはゲーラだ。
店長はゲーラを見て固まるが彼が軽く手を挙げて挨拶すると私の方を向き
「彼氏か?」
と、聞いてくるため作りかけの湿布の材料を鼻の下に塗ってやると
「鼻が! 腰が!」
暴れだしそうになるためすぐに拭きとった。
塗ったのは少量だ。
少し、スースーする匂いがあるため鼻炎の時に鼻の下に塗ることがある。
「今日はお客さんがいたんだね。出直そうか?」
「前の職場の店長よ。知り合い?」
「君に送る花を買いに何度かね。」
「ふーん」
今までもらった中に店長の作り方の物があっただろうか。
まあいいや。
本人がいうのだから
「今日は何?」
「これを見せに来たんだ。」
そう言って紙束を渡された。一番上にあった紙に目を通すと
「白魔術師見習い試験?」
なんて書いてある。
それをなぜ、ゲーラが持って来たのか。
「最近診察や診断書なしで医薬品を買いに来る人がいるって言ってただろ。」
確かに言った。
半月ほど前だ。
医薬品。
白魔術師の診断がない限りは処方できない薬で適切な処方をしないと死に直面する可能性もある薬。
市販品と呼ばれる軽度の風邪薬や予防薬、脱水の補給水、二日酔いの酔い冷ましなどは薬屋の判断で処方できるがそうでない薬もたくさんある。
処方箋の機嫌は病院によってまちまちだが、私の店では一律三か月とし、継続して飲む場合は医師の診断書がないと出せないようにしてある。
にもかかわらず今まで飲んでいたから、何も変わったことはないからと言って勝手に薬だけもらいに来る人が後を絶たず、会合でこの話題を出すと各薬屋同じ現状に、さらに白魔術師も診断書無しに長期の処方はやめてほしいというのだから双方の意見は一致している。
なのにお客本人は大丈夫、変わらないと自己判断で薬だけくれればいいんだというのだから呆れている。
確かに、病院に行けばお金を取られるし時間もかかる。
それが嫌なのはわかるがみんなそうしているのだから同じ手順を踏んでくれと言って追い返すことも多い。
「だから、見習いの資格を取れば簡単な往診ができるでしょ。そうすれば症状の確認して、変化がないと判断されれば処方、何か気になることがあれば診願書を書くようにすればいい。」
確かにそうすれば楽にはなる。
知識も増える。
でも、
「それでも長期で病院で診られないっていうのは問題だわ。毎度ここで見たとしてもプロの白魔術師に比べたら見習い免許を持っているだけだもの。ここと並行して勉強しようにも病院務めはできない。」
そういうとじわじわ床が揺れだした。
ここはマグマの国、地下の深いところを未だマグマが動き回っている。
その振動が時々地上でも感じられる。
揺れが少し強いな。
なんて思っていると私の背後で物がけたたましい崩れる音がした。
立ち上がり見に行こうとするが
「まって!」
ゲーラに抱えられるように静止された。
「揺れが収まってから、俺が奥を見てくるよ。」
何も言い換えせず、揺れが止まったのがコップの中の水で判断し、ゲーラが奥へ進んでいった。
戻ってきたゲーラにどうだったか聞くと奥、店の裏の建物が崩れたという。
奥の建物は老夫婦が暮らしていた場所で、亡くなって以来、私も足は踏み入れていない。
あの家が倒れたのならばと見上げる。
店は一度改装しているといっていたが家と同じぐらい古い。
ここもいつ崩れるがわからないため時間があるときに柱の補強など、キノミ達にでも見てもらおうと店長に言う。
ゲーラは店長を支えながら帰っていった。
手元に残った紙の束は教本の様で、ペラペラめくっていくと半分に折られた紙が出てきた。
開いてみるとそこには試験が行われる日程があり、半年後だった。
半年でこれだけ覚えられるだろうか。
見習いになれたら今までとは違う規定を作らなくてはならない。
納品の薬作りや来店もあるためのんびりしている時間はない。
一日のスケジュールを確認し、早起きして納品分を作り、閉店後も作業、寝る前に勉強して、間に合うだろうか。
店番中も昔みたいに勉強しながらすればいいかと教本を開き、客がくるまで読みふける。
気が付けば時計は夕飯の時間、何か作ろうかと立ち上がると勢いよくドアが開いた。
「ノノ!」
もうしばらくここに来ることのなかったクリスタルが駆け込んできた。
「どうしたのそんなにいそうで、店長動けなくなった?」
いや、それならここではなく、病院へ行くはずだし、そもそも、来る人材が違う。
足が速いのはテリーの血が濃いキーファやハーフテリーのムシコブが適任だろう。
「違うよ、これ!」
そう言って見せてきたのは手紙が二通、王家からの手紙と見て分かる封蝋に宛名面の柄は狒々の透柄になっている。
そこに記さされた名はクリスタルの宛名とゲラダ王子の差出人。
「……よかったわね。でも、何の手紙?」
手紙をまじまじと見ていると二枚目の手紙が私の宛名ということに気が付く。
「あのね、今日は遅くまで店番だったの。予定もないし、店長どこか行っちゃうし、リリアとリーファは子供が熱出しちゃって、元奴隷の二人は裏でずっと作業してるしね。」
いたって普通の日常だ。
「そこにね。急にやってきたお客さんが私の手を取ってこれを渡してきたの。よく見たらゲラダ王子だったのよ! 王子から直接貰っちゃったの!」
なんだか嫌な予感がするが手紙をクリスタルの手から抜き取り封蝋を開ける。
優しく、なめらかな字体が美しい文字となり、書きしたためられているが内容に私は顔をしかめる。
『婚約者探しのパーティーを開くにあたり、あなたを招待いたします。』
とのこと、読み込めば自由参加。
参加の際は立食パーティーということで気楽な服装で来てほしいということ、家族の同行はできないが友人、姉妹と楽しんでほしいとあった。
「ゲラダ王子がお友達と一緒にぜひ参加してほしいって言ってたの。だからノノも一緒に行こう!」
「でもお店が……」
「一日ぐらい大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃないわ。」
日取りは約半年後。
この日に薬を取りに来るだろうお客さんは用意に想像がつく。
「お願いよノノ、王子にぜひノノと伺いますって言っちゃったの。あたしうそつきになっちゃうわ。ドレスとかの心配ならお父様にお願いしましょう。ノノのドレス姿見てみたいわ!」
「……調整するけど百パーセントいけるとは断言できないわ。この日の一週間前に大事な試験を受けるかもしれないし、期待しないでね。」
「ノノの期待しないでねはだいたいオッケーだから安心! だから服かして」
お屋敷に行く服を探すことをあきらめたようだ。
奥からワンピースを出し、クリスタルに渡すと
「ノノはもっと派手な物を着るべきよ。髪も眼も目立つ色なのに、地味な服と眼鏡、無造作に結んだだけなのかもったいない。」
「パーティーでは私はあなたの引き立て役なのよ。派手な格好はしたくない。」
それにそのワンピースは派手で着られないと思っていたリリアのおさがり、全く地味ではない。
「じゃあ、一端家に帰りましょうか。」
そういいながら服を着替え始める。
お店を出て、看板を外出中に回し、開店も閉店へ変える。




