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七つの国に架かる橋《加筆修正作業中》  作者: くるねこ
本編 サンス・オール
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 カルミナに向かう馬車の中、私は第一王女スカーレット様の膝の上に座らされている。


「お姉様は本当にかわいい女の子が大好きね。」

「もちろん。この子も、あなたたちも、私は皆を守るために国を守っているのよ。」

「もう、お姉様ったら、だったら私たちの事も抱きしめて下さいな。」

「順番だ。」

「さっきからそればっかり」


何なのだろうか。

スカーレット様は女性の奴隷を多く所有されている。

でも、皆が皆、奴隷とは一線を期している。

一般の女性よりも華やかな服を着て、可愛らしく着飾っている。

そんな女性たち十数名に囲まれた馬車は窮屈だ。

人間よりも、服の暈で窮屈だ。

現に私も、スカーレット様に同行すると言う事でドレスを身に着ける羽目になっている。






 国際会議。


数年に一度行われる各国国王の国政報告会と言う事になっているが他国の悪事をばらし、制裁を加えるのが主な話し合いの中心となっている。

国王、女王が会議を行っている間に第一王位継承者もまた、次期国王、女王として話し合いを行う。

その場には他兄妹も参加可能で見学する者も多い。

特に第二王位継承者となればいつ継承権が回ってきてもおかしくなく、話し合いの内容はよく、把握しておく必要がある。


 私たちナトラリベスは今回の開催国であるカルミナの隣国ということもあり、一番に到着。

誰かに会う事も無く、()迎賓館(げいひんかん)へ入った。

各国の迎賓館は大使館横に存在する。

紫迎賓館は王都と国境の川の間にあるため、他国の者に会う事はまずない。

ここですべての国がそろう予定の五日後まで過ごす。


「サンはこのまま私の物にならないか。カルミナに帰らずとも、私の下で何不自由なく、その美しい容姿のままいてくれればいいのだ。」

「スカーレット様、私も老います。人間は老化が目に見えてはっきりする生き物です。いずれ見にくい醜態をさらすことになります。」

「だが、グリゼオは老いても美しい。死の間際までその美しい姿を保つだろう。母様もだからこそ、グリゼオの男をそばに置く。醜態なんて見せることがないからな。」


アナ女王がグリゼオを民に招きたいのはもしかすると老いない容姿を手に入れるためだろうか。

長い年月を生きるだろう大きな体のテリーやピスティア。

周りが老いて行き、自分だけが変わらないことを怖いと感じる者が多く、相談を受けるケースもある。

早死にの薬を出してほしいとも言われた事もある。

スカーレット様もアナ様の将来の不安を若い姿を愛でることで紛らわせているのかもしれない。


 王女たちはカルミナ国内へ出て、買い物に観光にと楽しみ、王子たちは兵士たちと警護に当たる。私は一部の奴隷たちと共に迎賓館内のお風呂場で久しぶりの温泉を味わっていた。


「気持ちいい。久しぶりだ。」

「サンはずっとカルミナに居たの?」


スカーレット様の奴隷の一人、ピアが話しかけてくる。

彼女はこの島近海で沈没した船の乗客で偶然ナトラリベスの海岸に流れ着いた。

そこで奴隷商人に捕まり、今現在に至る。

産まれた時から片足の動きが悪く、いつもならスカーレット様に抱かれて移動しているが今日はここに残ったようだ。


「はい。三か月ほど前まではずっとこの国で灰魔術師をしていました。」

「働くっていいわね。あたしはこんなんだからあと三年で解放印を押されるけど、どうやって生きていこうか不安なの。」

「ピアさんにだってできることは沢山ありますよ。それに、あなただからできることもたくさんあるはずです。これからの三年は自分にできることを探してみてはどうですか?」


そういうと彼女は笑顔を見せてきた。

でも、それは不安な色のままだった。

奴隷から解放され、喜ぶ半面、不安も重くのしかかってくる。

その流れから黒魔術師、墓師を選ぶ者も多いのかもしれない。

いつの時代も人手不足だ。

解放奴隷を嫌う国民はいない。

奴隷だったからと言って差別されるのは稀なことだが、物書きができないと仕事を任せられないと、断られることもある。

差別はなくとも格差は大きい。






 カルミナの使者が全ての国王、女王がそろったと伝えてきたのは四日後だった。

反対国のリポネームは内戦の状況から早い出立だったようで無事に到着したようだった。

国には第二王子他、数名の王族が残っているらしい。


 王子たちの話し合いの場へ皆が移動し、奴隷や側近たちは一つの部屋へ集められた。

そのため、


「サン」

「サンクトゥス、そこで何をしている。俺たちがどれだけ探し回ったと思っている。」


ミュールとカフカスが目の前に立っている。

周りも、グリゼオの私がいることにひそひそと小声で話をしているのが見てわかる。

そこに、


「サンス!」


そう言って、二人を払いのけて、目の前に現れた人物は私を抱きしめた。

少し痛いぐらい強い。


「フロント、痛い」

「ああ、すまない。だが、あの後どうなったんだ。何で今、ナトラリベスの奴らといるんだ。」


両肩をしっかりつかまれ、少し怖いぐらいの気迫で、それだけ、心配をしてくれたのだろう。


「こいつがお前の頼ると言っていた兄か?」

「はい。リポネームの三十二王女のニホン様の夫でフロントと言います。」


ミュールが聞いてくるため答える。


「リポネームのことはお前からの要請だから女王陛下も船を出したが、ケティーナは基本、他国に助けは出さない。同盟は組まず、どこの国とも均等だ。そうであることがこの島のためだと考えている。内戦が終息し次第すぐに送り返すからな。」


ミュールは少し怒っているようだ。

迎えにはホエ王子が来てくれた。

それにミュールも同行していたのかもしれない。


「心配をかけてしまって申し訳ありません。私自身は問題なく、ナトラリベスの王子様たちやスカーレット様にとてもよくしてもらっています。この会議が終わり、帰られる際に開放してもらえると言う話になっています。」


 「でも、それってアナ女王には通っていないお話でしょ。大丈夫なの?」


ピアが聞いてくる。


「そんなの、こっちからの要請だ。解放した奴隷をまた奴隷として扱っているのは犯罪だ。我が国の民である以上、法は守ってもらう。」


カフカスが入ってくる。


 「失礼いたしますが、サンス様はウィーンドミレにてすでに妃となられています。すぐにわが国に返還を要請していると思うのですが」


ライラが話に入ってきた。


「いや、禁止されているウミューシュを売った罪でアクアムからも重罪人として各国に要請を出しているはずだ。それを無視してナトラリベスは何を考えている。」


今度はなんだと思ったら全く知らないシャチのテリーが現れた。

彼はおそらく、アクアムの鯨王の側近で有名な者だろう。

また面倒くさい。

気が付けば、私の周りには多くの者が集まっていた。


「でっち上げの犯罪で裁く方が犯罪だ!」


フロントは言う。


「そもそも、アクアムへ入国するルートを通らずに旅をしていたサンがいつ、どうやって希少なウミューシュと出会い、捕まえたというんだ。デマにしてもほどがある。」


ミュールが言う。


「そうだな。それに売人に会う事を極端に避けていたのに、どうやって売るんだ。」


カフカスがあきれた声を上げる。


「話が終わったなら、サンス様は頂いて帰ります。」


ライラが私の腕をつかんだ。


「ダメよ。こんなところで逃がしたとなればあたしたちアナ様に絞殺されるじゃない。」


隣に座ったピアもまた、私の腕をつかんだ。









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