前へ目次 次へ PR 26/31 二十六話:手紙 わたしには年の離れた兄がいる。兄は大学にあがってからよく旅行するようになった。携帯電話を持っていなかった小学生のわたしに兄は旅行先から手紙をしたためた。そういった儀式めいたことを好む兄だった。兄は遠方への旅行先で交通事故で亡くなった。わたしは大学生になり、時代遅れな携帯電話をようやく買い与えられた。その携帯電話の受信メールは送り先が表示できない旅行記で埋め尽くされている。残念ながら返信はできない。