表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第1章 アスタ・サーネス
9/96

第8話 魔力量に問題

諸事情のため編集しました。

タイトル旧「魔力量に問題?」です。

 俺に占いをしてくれているロップさん、始まって数秒後、その真剣な表情はなぜか少し歪んでいた。そしてしばらくすると、また真剣な表情に戻った。しかし心なしかナエナちゃんの時とはまた真剣みを感じる。ロップさんは“ん?”という謎の言葉を最後に、黙々と占いを続けた。


えっ、いったい何が見えているの?!



30秒経過


 ロップさんはまだ水晶玉の光を見つめ占いを続けている。俺とナエナちゃんも何も言わずに待っていた。


「・・・ねぇねぇロップさん、まだ終わらないの?」


 ナエナちゃんが痺れを切らしたか、ロップさんに問いかけた。確かにナエナちゃんの時と比べ長い。彼女の時は10秒ぐらいで終わったのに。


 本当に何が見えているんだ?・・・まさか!?


 ここで俺はふとあることを思い出した。俺は他の人より違った点がある。それは、俺は前世の記憶を持って別世界から来た転生者ということ。この世界で約7年間での生活で忘れかけていたが、今この状況で思い出した。恐らくロップさんの占いが時間かかっているのはそれが原因だろう。俺とナエナちゃんは水晶玉を見ているロップさんを見つめ続け、返答を待った。


 ロップさんの占いが相手のどこまでのことを知ることができるのかは分からないが、もし俺が転生者ということがバレたら・・・ヤバい!何をどうされるのかは予想できないけど、とにかくヤバい!


「・・・ん?」


 ようやくロップさんが返事をした。占いが終わったのか、水晶玉の青色の光が徐々に弱くなっていき、そして光は無くなった。どうやら今になってナエナちゃんの質問が耳に入ったようだ。


 そんな立派な耳を持っているのに聞こえてないって・・・。しかも何でまた“ん?”なの?


「あ~、いや~すまんすまん2人とも!つい集中していたんでのぉ!聞こえておらんかった!」


 ロップさんは笑って長かった理由を説明した。


 集中していた?だから聞こえていなかったのか?何をそんなに見つめていたのだろう・・・。まさか本当に俺が転生者ということがバレたのか?


「それで、アスタくんは将来どうなるの?」


 ナエナちゃんが聞き直した。心の中で心配を抱く俺は、その答えを黙々と待っていた。


「えっと・・・何も見えんかったんじゃ。」


 残念そうにロップさんは占いの結果を報告した。


 何も見えなかった?だからあんなに集中して見つめていたのか?ってかどうゆう原理で水晶玉を使って占うことができるんだ?


「え~なんで!?何で見れなかったの!?」


 俺よりもグイグイと質問してくれるなぁ。緊張して口が堅くなる俺にとってはありがたいけど。


「え~と・・・恐らくアスタの魔力量が少ないのが原因なんじゃろぉ。」


 ロップさんは俺を見つめて言った。その時のロップさんの顔は、本当は言いたくなかったという表情をしていた。


 俺の魔力量が少ない・・・?


「・・・なんで・・・魔力量が少ないのが・・・原因・・・ですか?」


「え~とのぅ、・・・この水晶玉を占いたい相手の前に置くとな、その者の魔力に反応して光りだすんじゃ。ナエナは火魔法の適正を持っているから赤色に、アスタは水魔法の適正を持っているから青色に光ったんじゃ。そしてわしの魔力をこの水晶玉に注ぎ入れることで、その者の一つの未来の一部始終をわしだけ映像として見ることができるのじゃ。」


 ロップさんは再び俺たちの前に水晶玉を出して説明してくれた。その言葉を聞いた俺は、水晶玉の原理や仕組みがさらに気になり、1人で頭の中で混乱していた。



やはり水晶玉のあの光の色は、俺らの適正魔法に反応した色だったのか。ん、待てよ?“その者の一つの未来を見ることができる”って、それってもはや予知能力じゃないの!?・・・さすが異世界だなぁ。


最終的にこの一言で強引に納得させた。混乱している俺を差し置いて、女性2人は話を続けた。


「へぇ~そうだったんだ!でもアスタくんの時も、ちゃんとそれ光っていたよ?」


 ナエナちゃんがまた質問をした。水晶玉に気を取られ、俺は本題をすっかり忘れていた。確かに彼女の言う通り俺の時も色は違えど水晶玉は光っていた。


「先にも言ったがこの水晶玉にわしの魔力を注ぎ入れるんじゃが、その時にわしが注ぐ魔力の調整を間違えて、多く魔力を注ぎ過ぎると映像が乱れて見れなくなるんじゃ。え~と・・・つまり・・・。」


「つまり?」


 ロップさんが言いにくそうな表情で言うなか、ナエナちゃんが言葉を繰り返して聞いた。俺は何となく悟った。ロップさんが何を言いたいか。


「つまり・・・じゃ、アスタはわしが調整しきれんぐらい魔力量が少ないんじゃ・・・。とてものぅ・・・。」


 その言葉を言い終わると3人は静かに固まり、風を切る音だけが耳に入った。ロップさんは水晶玉を静かに鞄の中に片付け、ナエナちゃんは俺に気を使っているのか何度も俺の顔を見て何かを言いたそうにしている。


 ・・・正直、俺は誰かに気を使われているこの雰囲気が嫌いだ。俺のせいでこういう雰囲気になるのが前世から嫌いだった。


 自分が喋ればこの雰囲気が終わることを知っていた俺は、すぐに行動に移した。


「・・・ありがとうございました。」


 俺は座った状態でロップさんに一礼してお礼を言った。最初に言う言葉は何でもよかったが、とりあえず占いをしてくれたお礼を言った。


「えっ?な、何がじゃ?」


「占いをしてくれたことです?」


 ロップさんは不思議そうな表情で問いかけてきた。予想していなかった一言にロップさんの顔は動揺を隠しきれなかった。それもそうだ、普通の子供がその一言だけで済むとは思わなかったのだろう。確かに魔力量が少ないのはショックだが、水晶玉が光り出したということは少なからず魔力はあるのだろう。生活に必要な魔力量があれば俺はそれで良い。なかったらなかったで別に今の生活とあまり変わりはないから正直気にしない。それよりも俺なんかのせいで二人が気に病むのは、俺はそっちの方が嫌だ。


「・・・占いできてないんじゃが?」


「してもらえただけで・・・俺は嬉しかったです。」


 不服そうな表情でロップさんは質問してきたが、俺は不快な思いをさせないように自分の思った感想を言った。


 正直に言うと転生者ということがバレていないことが、俺にとって一番嬉しかったことだけどな。もしバレたらどうなるのか分からないからなぁ・・・。やっぱり技術向上のため拉致されて、魔法かなんかで記憶を抜き取られるのかなぁ・・・。次から占い師に会うときは気を付けよう。・・・次があれば。


 また1人でそう黙々と考えていると、唐突にロップさんは俺の頭に手をのせて優しくなでた。


「えっ、なっ、えっ・・・!?」


 いきなりの事に、俺は変な声を上げてしまう。ロップさんの眼を見ようとするが、恥ずかしく顔があげられなかった。


「アスタ、おぬしはやっぱり・・・良い子じゃ!」


 ロップさんは笑顔で俺をほめてくれた。まだ俺の頭を触り続けるロップさんに、俺は恥ずかしくて何も言えなかった。その横にいるナエナちゃんはなぜかずっと黙ってこっちを見ている。心なしか少し残念そうというか不満そうというか、とにかく暗い表情をしていた。


何でだろう・・・?


<ロップ視点>

 ふぉっふぉっふぉ、照れとる照れ取る。かわいいのぉ。


 わしは頭を撫でられ恥ずかしがるアスタで楽しんでいた。最初は励ましなどの意味でやっておったが、今は楽しんでやっている。


それにしても、この子はいったい・・・。


 手をアスタの頭からどかし、少し赤面になっているアスタを見てわしは考えていた。

 自分で言うのもあれじゃが、わしは今まで占いを失敗したことはなかった。今まで未来が見えなかった者は誰1人いなかった。100人の人も全員の未来を見てきて、それを告げてきた。もちろんそのまま告げているわけではない。その者にとって良い未来が見えたらそのまま告げ、それほど良くない未来だったらそれを伏せて良い未来になるために助言をする。それがわしの占いじゃった。そして今日も、2人の小さな客の未来も見えていた。そう、2人とも。

 わしはどんなに魔力量が少ない者でも必ず占いで未来を見てきた。魔力量が少ないなら、その分わしが調整すればいい話じゃ。少なくともわしがしてきた中で、魔力量が原因で占いができなかったことは一度もなかった。そう、一度もない。


「・・・そうじゃ!2人にまた面白いもんを見せてやろう!」


 わしはこの沈黙の間を切ろうと、二人に話題を振った。興味を示した2人はわしをじっと見てくれた。


「いいか!よ~く見とれよぉ・・・。」


【土魔法:ミル・ゴーレム】


 わしは隣に大人サイズの土人形を2体作った。わしが創造した魔法の中でこれが一番興味を持ってもらいそうな魔法だったからこれを発動した。


「すご~い!土の生き物だ!」


 ナエナは立ち上がり、興味津々に土人形に近づいた。アスタはその場に座ったままだが、目は少年のごとく輝いていた。本当に魔法に興味があるんじゃな。


「お前たち・・・。」


 わしは土人形に命令を出した。1体はナエナに、もう1体はアスタに近づかせた。


「うわ!?」


「えっ、ちょっ!?」


 2体の土人形は2人を持ち上げ肩車させた。いきなりの事に最初は戸惑った2人だが、その高い場所からの視界に感動してくれた。


「たか~~~い!」


「・・・ッ!」


 土人形に2人を乗せたまま歩かせて、2人に高い世界を堪能させた。ナエナは予想通りはしゃぎ、それに対しアスタは相変わらずの無言のままだった。わしはその場に座ったまま、土人形に乗っているアスタを見て考えていた。


 喜んでくれているんか?ほんと変わった子じゃのぅ。ほんとに・・・変わった子じゃ。

 アスタ・・・嘘をついてすまん。実はわし、おぬしの未来も見えていたんじゃ。しかし、あの未来をおぬしに告げることは、とてもじゃないが心苦しくてできない。だからわしは、魔力量が少ないと嘘をつき、少しでもおぬしをあんな未来を送らぬようにしたかったんじゃ。すぐに嘘だとバレるじゃろう・・・じゃが、これがせめてわしがおぬしに告げれる言葉なんじゃ。


 わしが見たアスタの未来とは、成長したアスタが伝説級のモンスターである邪龍に、剣を持って戦いを挑む姿であった。水晶越しで良く分からなかったが、その握っている剣に帯びていた大量の魔力から観て察するにかなりの実力者になっているだろう。しかし相手は伝説級。どんなに実力をつけてもたった1人の人族では絶対勝てない。過去にも何人か似たような占いに出た客がいたが、アスタのは明らかに異例でだった。その挑むアスタの顔は、金や名誉といった欲のためではなかった。恨みや悲しみ、そして怒りを感じさせる辛い表情だった。

 だからわしはあえて魔力量が少ないと言って、アスタが強くならないように助言した。自分でもうまく言ったとは思っていない。他にももっと良い言い方があったと思う。だけどこれ以外はすぐに出なかった。たまに自分のポンコツさで頭を抱える。わしは未来ある若人を見ながら、その小さな背中に疑惑を感じた。


 この先おぬしに一体何が起きるんじゃ・・・。この先おぬしは何者になるんじゃ・・・。アスタ、今日出会ったばっかじゃが分かる。おぬしは本当に良い子じゃと。だからこそ気になる。アスタ・・・おぬしは何者なんじゃ・・・。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ