第9話 ロップさんとの別れ
諸事情により編集しました。
<アスタ視点>
ロップさんが作ってくれた土人形の肩に乗せてもらい、俺たちはその高い視線からの景色を眺めていた。2体の土人形はゆっくりと平行に歩いて、俺たちを楽しませてくれた。
「わはははは!お~い、アスタく~~ん!」
隣の土人形に乗っているナエナちゃんは俺に手を振ってくれた。ナエナちゃんがこの状況を一番に楽しんでいる。前世の俺はそれほど高くなかったから、今改めて肩車されると新鮮味を感じる。この草原こう見ると、本当に広い場所だったんだなぁ。俺は高い視線から草原を見渡し、その自然豊かさを改めて感じた。俺はその草原の景色に感動し、無意識に頬が緩んだ。
ここって、こんなにきれいだったんだ・・・。
◇
土人形たちしばらく俺たちを乗せてその場に座っているロップさんの周辺を歩くと、再びロップさんの所に戻り俺たちをゆっくりと下ろした。
「2人とも、楽しかったかいのぅ?」
その場に座って俺たちを見張っていてくれたロップさんが俺たちに感想を聞いた。
「うん!とても楽しかった!ありがとう、ロップさん!」
「ありがとう・・・ございました。・・・本当に・・・楽しかった・・・です。」
俺の場合、楽しかったというより感動したといった方が正しいけど・・・どっちでもいいか。
「ふぉっふぉっふぉ。それは良かった。楽しんでくれて。」
パチンッ
ロップさんが指を鳴らすと、俺たちの後ろに立っている土人形たちは下に沈んでいった。そして数秒経たないうちに土人形たちは土に帰った。
今のが魔法解除なのか?これも使い勝手のいい魔法だなぁ・・・。
「ねぇねぇロップさん、私たちの村に来ない!村でもっと話そうよ!」
俺が考えている中、隣にいるナエナちゃんは座っているロップさんの手をつかみ、村に来るように提案をした。正直、俺はあまりそれをお勧めできない。俺個人はロップさんなら来てくれても全然良いんだが、他の住民がどういう反応するのか不安だ。なんせ西門からやって来た獣人族なんて、怪しいにも程がある。ペレーハ村の住民全員が暴力的ではないが、怪しまれるのが目に浮かぶ。
「そうじゃなぁ・・・。おぬしらの村は人族だけかのぉ?」
「うん、そうだよ!今まで獣人族だけじゃなくて他の種族も見たことないよ!」
何か疑問に思ったのかロップさんはナエナちゃんに質問し、それをナエナちゃんが返答した。
「・・・おぬしらの村の者、他種族を嫌っておるのか?」
「う~~~ん、分かんない。たまたま来なかっただけだと思うけど・・・。アスタくん、知ってる?」
ロップさんはさらに質問をしたが、答えが分からなかったナエナちゃんは俺に問いかけた。
「・・・俺も・・・知らない。」
首を横に振って返答した。さすがにそれは知るわけがない。ナエナちゃんの言うとおり“たまたま来なかっただけ”だと俺も思う。なんせここはウエスト大陸の中で最端の村とも呼ばれている。滅多に他種族どころか人族の客さえ来ない。ロップさんは目を瞑ってしばらく考えた。
「う~~ん・・・せっかくじゃがやめておこうかのぅ。」
「え~~!なんでなの⁉」
「わしが村に入って他の者を驚かしてしまうかもしれんからのぉ。」
ロップさんは申し訳なさそうに断るとナエナちゃんは納得ができないといった表情になり、さらに村に来るようにと説得する。しかしロップさんは首を縦に振らなかった。
俺はロップさんの考えは正しいと思う。ロップさんが出したその答えは、旅占い師の経験からと思う。今まででもそういった環境の村に入り、住民の視線を感じる中、その村で過ごしたことがあると思う。恐らく占いの客も来なかったのだろう。俺も誰かの視線を感じながら時間を過ごすのは嫌だ。だからロップさんの気持ちは少し分かる。
俺は一人勝手にロップさんの考えを解釈した。そしてロップさんを説得しようと話し続けているナエナちゃんを止めようと、俺は話しに割り込んだ。
「・・・ナエナちゃん。」
俺の小声の声が聞こえたナエナちゃんは口を止め、2人は俺の方へ向いた。
えっ、何で2人とも俺を見るの!?・・・あ、俺が声をかけたからか。
「えっと・・・ロップさん・・・困ってる、・・・無理に・・・誘っても・・・ロップさんも・・・楽しく・・ない・・・と思う。」
何だ今の話し方は!?一段とひどいな!2人ともちゃんと聞き取れたのかな・・・?ってか自分でもちゃんと話せたか自信ない。
俺は恐る恐る目線を上げると、納得してくれたのかナエナちゃんは黙っていた。よほどロップさんに村に来て欲しかったのか、それとも反省しているのか、彼女は少し落ち込んだ様子に見える。
しまった!今の言い方だとナエナちゃんが悪いみたいに言ってしまった!ああヤバい、何か言わないと!?
「・・・ふぉっふぉっふぉ!アスタ、何じゃおぬしのその喋り方は!カチカチじゃないか!ふぉっふぉっふぉ!」
ロップさんは俺に指をさし一人爆笑していた。
うん・・・そりゃ・・・笑われるよな。自分でもひどいって思っていたし。
「・・・ぷっ!?わはははは!うん、今のはひどかったよ、アスタくん!わはははは!」
ロップさんの笑いにつられたのか、さっきまで落ち込んでいたのが嘘の様にナエナちゃんも笑い出した。改めてそのことを言われた俺は顔が赤くなり、また目線を下げた。赤面になった俺は何も言い返せれなかった。
うっ、そこまで笑わなくても・・・。
「・・・じゃあさあロップさん、ここでなら話してもいい大丈夫?」
「おう、いいじゃろ。何の話が聞きたい?」
「うんとね~、それじゃあ・・・。」
笑い終わった女性2人は別に話題に切り替わり、その場で3人談笑を始めた。
◇
星暦2019年、夏の65日、土の日、夕方
ナエナちゃんはロップさんについて色々と質問しているうちに、気が付けば空は赤色になり太陽が沈もうとしていた。それに気づいた俺たちは立ち上がり、その場で別れようとした。俺とナエナちゃんは村に、ロップさんはお昼通った森へと。さすがに夜の森は危ないとナエナちゃんは説得するが、ロップさんの決定は変わらなかった。
「ふぉっふぉっふぉ。大丈夫じゃ!わしは野宿に慣れているし、心配もいらん!」
ロップさんは自信気で逆に俺たちを説得させた。ナエナちゃんは渋々納得した。
よほど腕に自信があるのか?・・・強いのは十分わかったが、それでも心配だ。
「ほれ二人とも、早く帰らんと魔物に襲られるぞぉ!ほれっほれ!」
ロップさんは俺たちを村の方向へ振り向かせて、俺たちの背中を押した。押された俺たちはまたロップさんの方へ振り向くと、ロップさんは俺たちに手を振って森の方へ振り返って歩き始めた。そしてまたフードを被った。俺たちはその場でロップさんを見送ろうとした。
「・・・お~い!ロップさ~ん!」
するとナエナちゃんは大声でロップさんを呼んだ。それに反応したロップさんは俺たちの方に振り向いてくれた。いきなりの事に驚いた俺も隣にいるナエナちゃんの方を見た。
「すぅ~・・・また遊びに来てね~!」
そう言いながら、ナエナちゃんはロップさんに手を振った。その顔は、とてもいい笑顔だった。ここからじゃ顔がフードで隠れてよく見えないが、ロップさんの口も笑っているように見えた。ロップさんはまた俺たちに手を振り、そして森の方へ歩き出した。俺はロップさんの背中を見ながら後悔した。
俺も・・・言えばよかったなぁ・・・。何でいつもこうなんだろう・・・。
「じゃあアスタくん、私たちも帰ろう!」
ナエナちゃんは俺の手首を急につかみ、村の方へ走り始めた。
「えっ、ちょっ、まっ・・・!?」
「速く速く!急がないとさっきの私の声で魔獣が出てきちゃうよ!」
自覚があるなら大声で言わないでよ!ってかそれロップさん大丈夫なの!?ロップさん・・・どうか・・・お気を付けて・・・。
ナエナちゃんは戸惑う俺を脅すようなセリフを言った。俺は心配になり走りながら森の方を見るが、すでにロップさんの姿は見当たらなかった。もう森の中に入ったのだろう。ロップさんの無事を祈りながら俺たちは草原を走り、村の西門へまっすぐ帰った。
◇
<ロップ視点>
星暦2019年、夏の65日、土の日、夜
アスタたちと別れてしばらく森の中を歩き続けた。森は外の光が差し込まないせいかかなり暗かった。そして何回か魔獣に遭遇しかけた。その度に『土中移動』を使って隠れてやり過ごしている。わしは“索敵”を使い、魔獣がいないところを通り、崖に向かった。この森の魔獣は意外にも少なく、スキルも数回使うだけで済んだ。
◇
しばらく歩くと森を抜けて崖に到着し、その崖に沿って歩き始めた。そこで初めて空が暗くなっていることに気づいた。夜の海風に当たりながら歩くなか、わしはある事について思案を巡らせていた。それはアスタの占いの結果だ。わしは今でも気にかけていた。
しかし・・・1つの可能性とは言え、まさかおとなしそうなあの子が将来邪龍に挑むとは・・・。水晶から見た当時のあの子を姿は、中々逞しい体格をしていたが、それでも流石に邪龍には・・・。っというより何故センター大陸にいるはず邪龍があの子の前に?この先、一体何が起きると言うんじゃ・・・。
こりゃあ本格的に邪龍鎮静に力入れんといかんのぉ。は~、ただえさえこの大陸の勇者と魔王の事で頭を悩まさえているのに・・・。まぁ、こうして自由に動けるの高ランクはわししかおらんからしょうがないがのぅ。とりあえず次の目的地は・・・『王都バリエンス』じゃな。あの頬付けしてばっかのジジィどもとは、今日こそ話を付けないとのぅ。アスタ・・・次会った時は、今日のことを謝罪し、ちゃんとおぬしを占ってやるからのぅ。
こうしてわしは冒険者ギルドの総本山、王都バリエンスに向かった。
◇
<アスタ視点>
星暦2023年、春の10日、無の日、早朝
ロップさんと別れてから約3年の時が経った。10歳になった俺は、神の恩恵を受けるためペレーハ村から出てとある王都に滞在している。
名は『王都ウルンスト』。通称『水の都』とも呼ばれ、王都の中に多く枝分かれした川が流れている。水はとても清らかで、住民はボートなどで水の上を横断や、徒歩では時間掛かる場所まで楽々と移動する。
父さんはお店があるため村に残り、母さんだけが付き添いで一緒に来てくれた。息子の記念日に力を入れているのか、母さんはこの日のために貴族が着てそうな服を俺に用意してくれた。前日に着いた王都の宿屋に泊まり、早朝に起きた俺はその服を着替えた。
正装かぁ・・・懐かしいなぁ。いや、今世では初めてか。前世と比べて思っていた以上に堅苦しいけど・・・我慢するか。
「アスタ・・・とても似合っているわよ。」
「・・・ありがとう、母さん。じゃあ、行きましょう。」
母さんが俺の姿に感激してくれた。少し身長が伸びた俺は、神の恩恵を受けるため教会へと向かった。
不自然な点があれば、是非ご指摘してください。




