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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第七十話 ボーンストレンジャー

 記念すべき第七十話には、私が小さい頃から始まり、そんなに小さい頃があったのが嘘だと思うくらいに大きくなった本日になってもまだ「いつか会いたいと」と願っているアイツが登場します。

 あれは忘れもしない十一月三日。世間では文化の日とかいう祝日だが、文化も何もあったものではない2017年のこんな辺鄙な街で生きる俺には何の関係もない日だった。この日、俺はとんでもない奴と会うことになる。後でそいつについて、クラス一物知りの深町に聞いても「さすがに僕もそれについてはよく知らないな」と言ったくらいに得体の知れない奴だった。俺はこしのり、今年と来年を繋ぐ者。


「ふう~いい天気だぜ!」その日こしのりはいつもより早くに目が覚め、玄関の戸を開けて太陽の光を体一杯に浴びた。そして、郵便受けの下に設置した牛乳受けに入っている牛乳で朝の清き一杯をグビグビやろうというつもりであった。少々肌寒い十一月の朝に、パジャマの上からスカートを穿いた少年は、よく冷えた牛乳を飲む気満々で玄関から郵便受けまでの少しばかりの距離を歩いて移動する。

 彼の爽やかな朝はここで終わりを告げた。なぜってそれは目にすれば誰もが納得する光景がそこにあったからだ。郵便受けの下に人が倒れている。低い声で唸っていて苦しそうだ。

「何だ!人が倒れている」

 その人は痩せた体つきをし、スーツを身にまとっている。片手にはスーツ鞄を持っていた。営業マンをイメージさせる格好である。

「何だ。まだ7時半だぞ。おじさん、セールスに来るには早くないか?それに寝てないで起きなよ。風邪引くぞ」 

 こしのりは、意外と冷静な態度で倒れている男に話しかけた。

「あ……これはどうもすいません。ちょっとその、カルシウムが不足しているもので」

「そうか~セールスの仕事もつらいんだな。こんな世の中だし、こういうこともあるんだな」こしのりは屈んで男と話始めた。

「仕方無い。これ、俺の牛乳だけど、おじさんにあげるよ。ぐびっとやって、元気にセールスの仕事しなよ」

「これはかたじけない。お言葉に甘えてそのカルシウム頂きます」そう言って男は、地面に伏せていた顔を上に向けた。その時見えたのはスカート、そしてその中に広がる光景。スカートの中と言えば、パンツがあって当然。それも女性の。それがよく見ると、スカートの下はズボン。更に視線を上げると穿いているのは男とわかる。

 こしのりと目が合った男は「わっ!」と驚きの声を上げた。しかし驚きの声は一つだけはない。男と目が合ったこしのりもまた男と同じタイミングで「わっ!」の一声を上げた。その男がこしのりに驚いたの同様に、こしのりから見てもその男には人を驚かす異質な点が見られた。その男の顔は、こしのりが理科室でよく見た人骨標本そのもの見た目であったのだ。よく見れば、スーツから出た男の手も骨であった。郵便受けの位置する場所がやや影がかっていたため、こしのりがその事実を知るのが少し遅れたのであった。

「うわ~骨人ほねびとだ!」こしのりは驚くままに大きな声でそう言った。この場合なら、骨人間とか骸骨男と呼ぶ方が一般的な気がするが、こしのりは聞き慣れない骨人という言葉を選んだ。私はこの骨人という言葉の響きが嫌いではない。


 たっぷり驚いた後にこしのりは冷静に考えた。

 こしのりは、弱っている骨人がこちらに害をなすようにも思えないし、肌寒い朝の空気の中に置いとくののも可哀想と思ったので、とりあえず自室に骨人を招待した。

「ゴクゴク……ぷは~こいつは生き返りましたな~」牛乳を飲んだ骨人は元気になった。

「え、お前それで生きてるつもりなのか?」陽が昇ってから沈むまでを、無気力と怠惰にまかせてとりあえず呼吸だけしてやり過ごすような現代の若者に言ってしまいがちな一言がこしのりの口から飛び出た。

「ええ、我々は人のように皮がないですが、しっかり生きています。私なぞは三大欲求を需要し、供給もする文明人の一人ですよ」

「人……?」こしのりは頭に浮かんで当然な疑問を口にする。


「ふぅ……すっかり落ち着きました。あっ、自己紹介がまだでした。私、こういうものです」そう言って骨人はスーツ鞄から名刺を取り出してこしのりに手渡した。

「なになに……魂、透ける……」

「ええ、私の名は『魂』と『透』と書いてこんとおると言います。この世とあの世を繋ぐ案内人でして、まぁ皆さんが知るところでいう死神って商売をやっている者です」

「なっ何!死神だと!!!」、こしのりにとってこの出会いは、不思議なミニスカや巨神兵との出会いを抜いて2017年一位の驚きであった。

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