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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ


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第十九話 頭隠してちょっとだけしか隠れていないお尻を探せ

 こしのりと丑光の二人は教室の机を向かい合わせになるようにくっ付けて夏休みの宿題の残りをやっている。

 彼らが通うポイズンマムシ市立毒蝮学園高等部では教室にエアコンを設置していない。いくら温暖化が進んだからと言っても、ただでさえお外で遊ぶことの減った現代の子供達にエアコンなんて与えたら更にだらけたもやしっ子になってしまうからという理由で学園長がエアコン設置を強く否定したのだ。よって今日のような九月の昼なんかは教室は超暑いのだ。


「ところでこしのり」

「何だ、丑光」

「暑いよね……そんで、宿題終わらないね」

「だね」

「エアコンを設置すればいいのに。そうすればもう少し勉強だって……」

「……やらないよな。だから付かないんだよ。俺が言うのも何だが、エアコンを付けたらもっと快適に授業中の居眠りをするだけでもっと成績が落ちることになると思う。これは自信を持って言える」

「そう考えると、僕らがギリギリで何とか留年にならない成績を修めているのは学園長のおかげなわけだね。う~ん、そう考えると彼には感謝だね」

 暑くて敵わないが、エアコンがないことはある意味で自分達のためと思った二人であった。


「時にこしのり」

「なんだい、丑光」

「うん、僕はね、久しぶりに学校に来て気づいたことがあるんだが」

「なになに?」

「うん、それがね、今朝から教室を見れば空席が二つあるじゃないか。ほら、廊下側の後ろの方の席と黒板前の教台に一番近いあの真ん中の列の一番前の席さ」

「で、それが?」

「それがなんだけど、一学期からクラス替えもしていないし席替えもしていないのにあそこの二つの席は誰が座っていたのか全然思い出せないんだけど」

「えっ……あそこね……本当だ、おかしいぞ。今日は休んでるんだろうけどあそこに誰が座っていたのか俺もわからない。え、何?怖いんだけど。もっと言えば、あんな所にあんな席あったっけ?まさか俺達のクラスに知らない間に二人追加されてるとか。皆は気づかない姿無き転校生みたいな」

「何をバカなことを言ってるのさこしのり。君に前に貸した学園ホラー小説みたいなことになってるじゃないか」

「ああ、あれな。怖いけど面白くてはまってんだよね。新刊出たらまた読ませてな」

 一学期中は一日も休むことなく登校した二人だが、周りにあまり興味がいかないゆえに、こうして人がいない状態のクラスの机を見ると誰がどこに座っているか案外思い出せないでいた。


「うん、これは気になる。今日の謎は今日の内に解く。これが丑光の鉄則さ」

「宿題はそうはいかないみたいだけどな。でも俺もそれは気になる」

「よし、こういうことはあそこに座っているクラス一巷のあれこれに通ずる男深町君に聞いてみよう。彼はカブトエビって冬場はどうしているの?って事以外はだいたい知っているからね。全く頼りになる生き字引ってやつさ」

「へえ~、大辞林とか広辞苑みたいなもんかな」

 

 彼ら二人が運動場側窓際の席に陣取っていたのと逆に一番廊下側の列に座っていたのが深町君であった。丑光がそこまで歩いていく。

「やあやあ、深町君御機嫌よう」

「ああ、丑光君御機嫌よう」

 深町君は短髪で眼鏡をかけ丸っこい顔をしている中肉中背の男である。これ以上彼を表現するのに用いる言葉もないであろう。その気になれば一筆書きで似顔絵が描けそうなくらいに随分簡素な顔面をしている。あ、これは別に悪口ではない。私は彼の人となりがとても好きである。


「深町君ちょっと教えて欲しいんだけどね。あそことあそこの席って誰が座ってたっけ?」

「ああ、あそことあそこね。まず、真ん中の一番前の席は根岸、そして後ろは堂島という生徒の席さ」

「あれ、知らないな……それは男性かい、それとも女性?」

「どちらも男子生徒だよ。というか君は同じクラスなのにそれも知らないのかい?」

「うん、今日始めて名前を知ったよ」

「まぁあの二人はね何も一度も顔を出さなかったわけではないのだけど、入学式からほとんど学校に来たことはないよ。僕は二人と話したことはないし、顔も今では思い出せないくらいだよ」

「なんだ、一学期から空席状態だったのか」

「丑光君も無関心だね。もう少し周りに興味を持ったほうが良いと思うよ」

「だってさ、こしのり」

 丑光は振り返って席に着いたままのこしのりに言う。


「で、深町君、二人は登校拒否生徒みたいだけど、それぞれ一体どういった奴なんだい?」

「うん、僕も詳しいことまではわからないけれど、まず根岸の方はとにかく金持ちの坊ちゃんだということだよ。そして堂島の方はね、まぁ所謂(いわゆる)チーマーてやつ。あれの一員でチームボスらしいよ」

「なんだって! 一学期の間、僕らに存在すら知られていなかった連中が揃って中々はっきりしたキャラ設定がなされているじゃないか。しかし坊ちゃんと不良とはまた極端だな」

「何も知らなかったのは丑光君とこしのり君だけだと思うよ」


 このように毎日の生活の中で気づいて当然と思えるにも拘わらず見落として気づかないことって結構ありがちなのである。私も何回と通っている定食屋で、昼は無料コーヒーサービスがあり、勝手に汲んでいってもいいのにどうゆうわけかそれに長いこと気づかなかった。コーヒーは通路の目立つ所にあり、サービスの看板も立っているし私が初来店した遥か前から続いていたサービスであったのにも拘わらずだ。私はコーヒーが大好きなので、今までかなり損をしていたわけだ。

 ちょっと良く見れば日々の生活に意外な発見があるかもしれない。これだから人生は面白い。

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