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巨神兵と7人のミニスカ侍  作者: 紅頭マムシ
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第十五話 Middle Attack

 ミニスカ侍三人が出揃ってから一週間、三人は巨神兵討伐のための基礎トレーニングとして走り込んでみたり、空き地でノックをしたり、公園でバスケをしたり、庭でバドミントンをしたりで楽しん……もとい体を鍛えていた。

 

 そして今日は8月20日、ミニスカ侍三人はこしのりの部屋に集まって、たわいもない話に花を咲かせていた。

「いや~ 学校がお休みになってからというもの、これっぽちも運動をしていないから、久しぶりに体を動かすと当然疲れるんだけどさ、この疲れ具合ってのがなかなかどうして悪くないんだよね。運動をしてからというもの、日々の同じ晩飯が家でゴロゴロしてから頂くのと違って美味く感じるよ。昔見たドラマでさ、登場人物の不良がラグビー部に入って更正してから食った飯に対して僕と同じような感想を言ったことがあったんだよ。今なら更正した不良の気持ちがわかるようだよ」

 こしのりの自室で扇風機の風を浴びながら、ここ一週間リア充でした的な報告をするこの男は丑光である。


「ワイも二本足で自由に動けるのは新鮮でええわ。ミニスカを穿いてからというもの、世界が変わって見えるで」と言っているのは、ミニスカを穿いてからまず背丈が変わり、見た目も凶暴な感じから緩いタッチへと変貌を遂げた熊の室である。


「この一週間、随分体を鍛えたが、結構楽しかったな。巨神兵のいるところまで歩いただけで息を切らしていたあの頃の俺達よりは随分逞しくなったんじゃないか」

 こしのりもここ最近のトレーニングにそこそこ満足していた。


「それでだ……」

 こしのりが言う。


「なんだいこしのり、まるで何かグッドアイデアも浮かんだみたいじゃないか」

「その通りだ。まぁ聞けや」


 こしのりが話を続ける。

「俺達さ、この一週間で随分、いや、か~な~り強くなってんじゃねぇか。俺はそう思うんだ」

「確かに。今なら僕、100m走のタイムが絶対に上がっている気がするんだ。体が軽くなったようだよ」

「ワイもいまやったら砲丸投げの記録が絶対上がってる。肩が軽くなったようだ」

 この愉快なミニスカ侍達は皆、自分がレベルアップしていると感じていた。


「これは三人の意見が一致したら実行しようと思うんだが、どうだろう……もう行ってみないか、巨神兵をぶっ倒しにさ」

「なんだって!スカートはあと三枚残っているじゃないか。それなら後三人仲間を作って殴りこむのが順当なところを、既存のセオリーをぶち壊してショートカットしようなんて……こしのり恐ろしい子!」

「まぁ、聞けよ丑光。俺が小学校の頃にさ、お前から『澤田の伝説~ムラムラの少女鉄仮面~』という大作ファンタジー&アドベンチャーの神ゲーを借りたことがあったよな」

「ああ、ムラムラね。確かにアレはタイムマシンなんかで未来を見なくとも後世に語り継がれること間違い無しの神なる一作だったよね」

「あのゲームの内容ってさ、確か世界のどこか四箇所にそれぞれ巨人が封印されていて、全ての封印を解き、四人の巨人を呼んでラスボスにアタックするみたいな流れだったんだよ。まぁゲームにこういう私情を挟むのは無粋なんだが、それでも俺はあの時思ったんだよ。それというのが、本来四人揃ってアタックのところを、四人揃えずとも、二人、三人を解放した段階でアタックして勝ったら、パワーを残した余裕の勝利って感じで何かカッコイイってね」

「ああ~ ゲームにそれを言っちゃダメだけど、分かるよ。骨を折って半年入院が妥当なところを、大幅に短縮して三週間とか三日で帰ってきたりした奴が何かカッコイイって思うアレだよね」

「あ、それだわ」

 こしのりと丑光は私にはついていけない価値観を分かち合っている。


「君の考えは無謀なことなのかもしれない……だが…・・いいね、それ。僕はね、君のどこかを壊してどこかを新たに動かすという破壊的なようであって、その一方建設的でもある考え方が頗る気に入っているのさ。僕は乗るよ。室はどうするんだい?」

「ワイが行かんでどないすんねん。付き合ったらぁ」

 室は何だかおじさん臭い喋り方をする熊であった。そして、世故や地理に疎い私には一体何処だかわからない地域特有の地方弁を扱っているようである。


「じゃあ、決まりだな。今から乗り込もうぜ!ポイズンマムシシティの夜明けは近いぜ!じゃあ、いつものいくぜ」

 気合十分のこしのりがいつものを始めようとする。


「ミニスカ侍~~~」

 こしのりが言う。

 あとに続いて三人同時に合わせて言う。

「ファイア!」

 

 今ではすっかり「いつもの」になったコレは、ここ一週間のトレーニング活動の内に自然に生まれた彼らの掛け声であった。ダサいと笑ってくれて結構。それでも彼らは世界を守る選ばれし戦士であることをお忘れなく。


 三人の相談がまとまったその時、お隣のスミレの家二階のスミレの自室の窓が勢い良く開いた。こしのりの自室も二階にあり、その気になれば屋根を伝って二人の部屋を行き来することも可能だ。私もこういう女子のお隣さんがいる所に住んでいれば良かったといつも思う。そんな私は、周りに人家と人気ひとけが無い寂しい高台に家を構えている。


 そういう距離感ゆえに、お隣のスミレちゃんが放った当然ともいえよう一声をお聞き頂こう。


「うるさい!このミニスカバカ共!」

 スミレはバシンと音を立てて窓を閉めた。


 これに対するミニスカバカ一同の反応がコレだ。

「……」


 団地で暮らすなら、特に暮らしのマナーを忘れてはいけない。

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