13.剣聖
「ーー笑わせるなよ。」
そう、アルノードが魔力を迸らせる。
「ッ!」
ラティエルは、何か大いなるものの視線を感じた。
「ーー星よ、我が意思に応えろ。」
「ーーお待ちを、アルノード殿。」
そう、ソーダ大臣の魔法を剣で斬り裂き、アルノードを止めたのは緋色の髪の青年。
「ーーシュラ、何かな?」
「ーーここは、ボクが納めましょう。アルノード殿もここで無駄に手札を晒すわけにはいかんでしょう。」
「ーーふむ、なら頼むよ。」
「ええ、お任せを。」
「ーー王の間での不敬。貴様を拘束するッ!」
シュラが、剣を構える。
「ーーッ、私の魔法がッ…。こうなれば…。」
ソーダが何かをしようとし、シュラがそれを察する。
「ーーさせませんよ。」
「ーーもう遅い!全てを破壊せよ!」
「ーー降臨せよ、『破戒の竜』!」
王の間を光が埋め尽くす。
「ーーチッ、面倒なことを…。」
シュラは低く呟き、闘気を迸らせた。
『ーー血を、肉をォッ!』
竜が吼え、足元にいた貴族に向け、爪を振り下ろす。
「ーー。」
シュラが、指で宙に十字を描く。
『ッ!?』
竜の腕は、十字に裂け、落ちた。
『小さき者。貴様の仕業か…。』
「ーー骨が折れるなぁ。ま、やらせていただきますよ。」
『我は破戒の竜。この国を食うとしよう。』
「うーん、そうですねぇ。」
「ーーボクの名前は、シュラ・ファリオス。『剣聖』の名の下に、あなたを斬る。」
目を光らせ、駆け出した。
刹那、鋼鉄がぶつかり合う音がした。
爪と、剣がぶつかり合う。
『我が爪の前に刃こぼれせぬか。良い剣だ。』
「あはは、評論してる余裕、あります?」
「ーーッ!」
『グウッ。』
竜は必死にシュラの連撃を受け止める。
「そらっ!」
目を狙った一撃、かわせず、剣が目に刺さる。
轟ッ!
竜の口から熱気が吹き荒れ、シュラを飲み込む。
「ッ!ほんと、骨が折れますねぇ。」
炎に身を灼かれながら、背中の剣を抜く。
ブンッ!
炎が霧散し、聖なる魔力が迸る。
「ーー『小聖剣』。」
小聖剣。それは、原初の時代、勇者が振り続けた剣を模した一振り。
『聖なる魔力…。』
「御名答。それじゃあ、いきますよ。」
王の間に、雷光が轟いた。
『グゥッ。』
「痺れるでしょ?」
竜の動きが鈍る。
『ーー雷かァッ!』
雷の属性を宿す聖なる剣。
シュラが不敵に微笑み、竜の首に剣を振り下ろす。
「それでは、おやすみなさい。」
バリバリィッ!
ーー剣が竜の体を捉えた。
竜の体に雷が走り、崩れ落ちる。
「ーーさて、おしまいです。」
そう、シュラは竜に背を向け、剣を鞘に収めた。
『ーーまだだ。』
轟ッ!
「ーーッ!」
シュラはその息吹の威力を身をもって体感している。
剣聖の加護を持ち、強靭な肉体を持つシュラ。
その体を灼いた炎。
(剣聖の加護は発動不可ッ、身では受けれない、死ッ…。)
「ーー『敵穿つ星の意思』。」
ーー守護者の詠唱が、王の間に轟いた。
「珍しいね。油断とは君らしくない。」
星の光が巨木を生み出し、炎を防ぐ。
『木?どういう仕組みだ…?』
「ーーこんにちは、殺戮者さん。」
銀髪の青年が、そう微笑んだ。
『ーー喰らう。』
牙が、アルノードの眼前に迫っていた。
「あはは、やんちゃだね。」
アルノードが手で牙を止めた。
『なッ!?』
「魔法を使えば国が壊れるからね。こっちで行こうか。」
そう、拳を魔力で纏い、疾駆する。
『ッ!まさか、星のッ…』
アルノードは答えず、不敵に微笑む。
アルノードの拳が右頬に突き刺さり、吹き飛ぶ。
吹き飛んだ先で、眼前にアルノードがいる。
「ーーせーのっ!」
アルノードの拳が、顎に直撃し、上に吹き飛ぶ。
(理外の化物ッ…。)
白目を剥き、無防備な姿を晒す。
「ーーそれじゃあ、さようなら。」
星の輝きが、アルノードを照らした。
「ーー『星の掌底』。」
竜の腹を、地盤を揺らす一撃が貫いた。
竜の口から、血が溢れ、崩れ落ちた。
王城の床にヒビが入る。
アルノードが人差し指と中指を口に当て、何かを紡ぐ。
ーー光が世界を白く染めた。
「ーーッ!」
その場にいた貴族が、逃げようとするが、アルノードが手で制す。
「星が戻しているだけだから、安心して。」
ラティエルは理解した。
この場の支配者は、王でも竜でも、剣聖でもない。
ーー目の前に立つ、規格外の魔法使いだということを。




