0.プロローグ
前まで別名義で活動していた時の小説を改稿して投稿しています。
ようこそ、紳士淑女の諸君。
この世界では、魔素を吸わないと生きていけないんだ。
魔素と同時に大気中に“空気“というものがある。空気は魔素を入れるためのもので、空気だけでは何もできない。
でも、そんな常識を覆した1人の人間がいたんだ。その少年は、『空術師』と呼ばれて、今も世界を見守ってる。
僕が今から話すのは、この世界の記憶と、その少年の旅の、儚い記憶。
ーーさぁ、行こう。
視界が暗転する。
俺の名前はラティエル。俺の親は戦争に行く前に、孤児院の院長に俺を預け、失踪した。
そこから俺は、孤児院がある地域を治める伯爵様から支援を受けた。
伯爵様によると、俺は魔力量が人と比べて多いらしく、将来は凄い魔法使いになれるかもしれない、とのことだ。
ーーでも、この幸福もすぐに壊れた。今日で俺はもう15歳。今まで育てて貰った恩を返そう。そう思っていたのだが、俺に宿っていた魔法は、神官様によると『空気』という名前だった。
神官様は、激怒する伯爵様を止めようとしながら。
「固有魔法なので十分価値はあります、こんな子供を追い出すなど、閣下の評判に関わります!」
だが、そんな神官様の説得も無意味に終わり、俺は孤児院を追い出され、馬車に乗せられた。
馬車からは見慣れた街の風景が見えた。
しばらくすると、俺は馬車から降ろされた。そこは森の目の前だった。
「ーー。」
ここからどうすればいいのか。俺の頭をそんな考えがよぎった。
でも、ただ、悲しかった。伯爵様が見ていたのは俺じゃなくて、俺の魔力だったんだろう。
伯爵様の私兵は、俺を置いて馬車に戻って行った。
ーーまず、生き残る道は、『元いた街に戻る。』『森を通って別の街に行く』の二つが現実的か…。
いや、でも、流石に後者は現実的ではないか。だが…、街へ戻ってもまた追い出されるだけだろうし…。
まあ、どのみち、森に放り出された時点で生き残る可能性は少ない。よし、決めた。
ーー俺は、この道を通って、自由に生きる。
「ーーでも戦う手段がないよな。」
ラティエルは小さくため息を吐き、呟いた。
まずは使える魔法…。戦う手段がないと、この森を抜けることはできない。伯爵様に追い出されたけど…。魔法である以上、何か有用な要素があるはず…。神官様も固有属性と言っていたし。
「まあ、とりあえず、『ステータスオープン』」
名前 ラティエル
種族 人間
属性 『空』
性 男
Lv 2
HP20
STR E
VIT E
AGI C
INT A
DEX B
MND C
LUK D
「やっぱり魔法系のステータスに結構偏ってるな。これでもINT凄いんじゃないか?」
でも空気に関する情報がないな。
「ステータスデータオープン『空気』」
ステータスオープン。それは神が人類に与えた、自身の能力を可視化するもの。誰もが覚えることができる魔法である。
『空気』
固有属性で、空気に干渉することができる。
空気を動かす、固める、といったように、自身のイメージ通りに空気を変えることができる。
「ーー固める…?」
俺の口から不意をついて出た。
「『空気』。」
俺は目の前に手を伸ばす。
手をそれ以上先に、進めることができない。
俺の目には何も映っていない。ただ、何もないところに壁があった。
「これは本当に…弱いのか?」
俺の目に映るのは、『弱い』と表せるような内容ではなく、俺は自分の常識を疑うのであった。
「これなら…。」
俺は自分の手を握り締め、少し期待を持った。




