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巫女さんえにしさま  作者: うらひと
第1章

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1/12

琥珀と蓮 ①

禁 複製転載・AI学習

  結はシャーペンを置いてため息をついた。

「……どうしたら男の人を好きになれるんだろう」

  周りは、(かれ)()が出来た別れたと(にぎ)わうお(とし)(ごろ)。いまいちピンときていない結は、その世間話を遠巻きに見ていた。

「女の子が()(わい)いのは分かるけど」

  机に()()してぼんやりとしながら(つぶや)く。そのことを日記に書いてみたものの、落としどころが思い当たらない。

「……『えにしさま 私に運命の人は現れますか』」

  そう最後に書き記して、日記帳を閉じた。


  翌日、『やっぱり書き直そう』と日記帳を開くと、『私でよろしければ、聞かせてくれませんか?』 そう筆文字で返事が返ってきていた。


  その人との(こう)(かん)日記はそこから始まった。結から見て、(もの)(ごし)(やわ)らかい人だと感じた。結も返事を書いた。

「男の人を好きになるならどうしたらいいですか?」

  翌日、返事が来た。

(りよう)(えん)というのは、必ずしも異性と、とも限りませんし、(こい)(なか)だけでもありませんね」

  その返事で、もしかして、と結は思った。

「えにしさま、ですか」


  翌日。

「はい。いつもお世話になっています」

『やっぱり』とつい口に出た。

(かみ)(だの)み、って()ずかしくて」

「構いませんよ。私はいつもささいな(こい)(なや)みから聞いてますから」

  不思議な経験だった。神様との交換日記だなんて、と。しかし、打ち明けずにはいられなかった。

「私って、変なんでしょうか。男の人を好きになれないなんて」

「『好き』の形が、たまたま(ちが)うことだってあります。『恋』の形も人それぞれ。多数派がいれば、少数派もいるものです」

「でも、周りから変な目で見られるのが(こわ)いし、お父さんたちがなんて言うか」

「ここだけの話、同性への思いを(かか)えた人がお参りにも来るんですよ」

  (やさ)しい人だった。それを、おかしいとも思わないなんて、と。


  不思議なことはそれだけにとどまらなかった。たまたま(あく)(しゆ)した観光客が、しばらくしてお礼に(おとず)れたのだった。

「お(かげ)(さま)(けつ)(こん)が決まりまして」

「それは良い(えん)(めぐ)()えましたね」

  観光客と、父親で(かん)(ぬし)の真との会話。1人(ひとり)だけでなく、それも何人も。しかも、決まって結と握手した人(たち)だった。もちろんえにしさまにもそれを報告した。それをえにしさまは「ええ、知ってますよ」と返事して。

  しかも、ただ異性同士だけでなく、同性同士の話も聞くようになったので、父親も首をかしげた。結もそればかりは心当たりがない。

  そんな日々が、しばらく続いた。

「私は(えん)(むす)びの役割を持っていますから」

 同性同士の話も打ち明けてみた、その反応がこれだった。

「『恋』って、男の人と女の人が」

 そう書きかけたとき、すぐに返事が来た。

「それも『縁』ですから」

  さも当たり前のように。


  父親の動きは速かった。「きっと神様が同性の人達も結婚して良いと(おつしや)っているのかもしれない」と、(どう)(せい)(こん)の神前式が出来ないか、と社務所の人達と話し合いを始めた。

  当然、そう簡単にうんと言ってくれるような人達では無かった。しきたりだとか、そもそも同性婚なんて、と首を縦に()らなかった。

「どうしたらいいですか?」

「こればかりは、見(もり)りましょう」

 えにしさまとのやり取りは、しばらく静かだった。


  そうした(ころ)、ある二人が神社を訪れた。

「あの、(うわさ)に聞いたんですけど」

  若い、大学生くらいの男性二人。

「はい?」

「あ、握手してくれませんか」

  少し気弱そうな方が、勇気を()(しぼ)って言う。

「は、はい」

  言われるがままに、握手する。もしかして、とあの不思議なことが頭をよぎった。

  気弱そうな方が、堂守琥珀。真面目そうな方が水畑(れん)と言った。

「実は(ぼく)たち、幼なじみで」

  そう(れん)は話してくれた。

(いつ)(しよ)に居るうちに、お(たが)い『家族みたいだな』って思って」

  琥珀も続けた。

「『ずっと一緒に居たい』って気持ちが本当か、確かめたくてきたんです」

  年下の結にも真面目さを(くず)さない(れん)が、少し()()ずかしそうに言った。

  おみくじの場所に案内すると、一緒にくじを引き、息の合った「せーの」のかけ声で紙を開いた。すると、とても(うれ)しそうに二人が結果を見せてくれた。

『良縁に(めぐ)まれます』


  (かえ)(ぎわ)にも、こんなことを話してくれた。

「なんか、女の人と()()くいかないというか」

「ピンとこないよね」

「でも、僕たちは息も合うし、手を(つな)いだって変な感じもしない」

「だから、『もしかしたら』って思ってたんです」

 そして、去り(ぎわ)に。

「決めたら、また報告に来ます」

  嬉しそうな二人の()(がお)が、なんとなく心に(ひび)いた。


(きずな)、って感じでした」

「でも、深い繋がりでしょう?」

  交換日記でえにしさまと話をした。

「たとえ恋というほどでなくても、その間を取り持つのが、私の役目なのです」

  そうえにしさまは続けた。

  ほどなくして、社務所がまた同性婚の話で持ちきりになった。

「まだ大学生だろう?」

「でもニュースになるなんて」

  気になって、(おも)()のテレビを付けた。そこに、見覚えのある二人がいた。


『一緒に居られるってだけで僕たちには十分なので』

『それを証明してくれる制度があるから、一緒に居られるんです』


  琥珀と(れん)だった。

  パートナーとして、役所に届けに来たというのだ。

『そうすることで、周りからどう言われると思っているんだ』と社務所の人達は言う。

  しかし、父親の真は。

「一緒に居たい、という気持ちはきっと一緒です。それを取り持つのも、私たちの役目では?」

  社務所の人達も、強気の真の言葉に(しぶ)(しぶ)首を縦に振った。

 

  ニュースのインタビューの最後で。

『その神社の巫女(みこ)さんには感謝してます。森宮神社の――』

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― 新着の感想 ―
私もいい縁に恵まれたいです。
2026/07/09 19:37 退会済み
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