『降り立つ双蓮 ― 千手観音と虚空蔵』
千手観音の光が咲き、虚空蔵の星が降りる。
ここから始まるのは、二輪の蓮が並び立つ初戦。
戦いと心理ダイブ、そのすべてが“心界”で交差します。
――そして、もう一輪の蓮が、虚空に芽吹こうとしていた。
慈孝和尚は、影のように、鎮座していた者に問う。
「おぬしも行くのだろう?。
天ノ宮 澪、虚空蔵菩薩の蓮華姫よ。」
「もちろん行きますよ。
私は戦闘からっきしなので、助かりました。」
澪も続いて、炎に飛び込んで行った。
「――虚空、展開開始。」
澪の声が静かに響いた。
その瞬間、周囲の空間が音を失う。
世界が呼吸を止め、
ただひとつの心臓の鼓動だけが聞こえた。
青い光子が空間を満たし、
少女の輪郭が、夜空の星座のように点滅を始める。
「識よ、我が内に満て。
空よ、我が身を包め。
無限の記憶、虚空蔵の名において――顕現せよ。」
光の帯が彼女の足元から立ち昇り、
藍色の法衣が音もなく形を変える。
袖口から星々の粒が零れ落ち、
背中に七重の輪光が開く。
それは、宇宙そのものの断面のようだった。
髪が淡く透き通り、銀河の光を帯びて流れる。
瞳の奥に、星雲がゆっくりと回転する。
「記憶界接続――
認識領域、開放率七十二パーセント……
虚空蔵菩薩、覚醒。」
静寂が弾ける。
青い蓮の光が咲き、少女の足元から宙に浮かび上がる。
周囲の景色が無限の曼荼羅に変わり、
虚空の中心に、澪が立っていた。
「わたしは虚空。
すべてを記し、すべてを赦すもの。
星々よ、真理を照らせ。」
両の手を広げると、千の光点が指先から舞い上がり、
それぞれが祈りの形をした“手印”へと変わる。
やがてその光が融合し、
虚空蔵菩薩の紋――
**「宝珠曼荼羅」**が浮かび上がった。
澪は目を閉じ、深く息を吸う。
「虚空蔵、起動完了。
心界座標、観測開始――。」
青白い光が走り、足元に蓮華の花が咲く。
澪は、蓮華に包まれ、蕾となって、世界に
降り立って行った。
澪と梨花──この二人の出会いが、
後の蓮華姫たちの絆の原点となります。
次回、初めて“悪縁鬼”が姿を現します。




