表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法世界の奴隷と主人  作者: 小山 優
36/75

型破りな掟破り 蛇には足があるか

二日連続の更新につき、御注意をば

「…演技とはいえ、飲み過ぎたかな…」

 よっこらせ、とフェルはお菓子の家のウエハースの屋根の上で立ち上がる。

 酔いが回って、ややフラフラするが、それを魔法による化学変化で軽減する。アセトアルデヒドを無茶苦茶してグリコーゲンにしておく。魔法って便利。

「年甲斐もなく、テンション上がって無茶しちゃったかも」

 あの流れで、あの子を泉に落とすのは少し無理があった。酒の力と演技力で出来たので問題はないが。

「…あれ、私、あの子にいろいろ説明したっけ?」

 世界システムとか、救世主の真実とか、あの子の正体とか…

「ま、いっか。所詮、あの子は『繋ぎ』の人材だし、この時代に救世主が再誕するなんてことはないかな」

 でも、と口の端が上がって、

「まさか、あの歌を知ってる人間がまだいたなんてね。『見下ろし山(エーデルブロッケン)』ですら喪失してたのに」

 あの歌。フェルが歌い、それに少女が合わせた歌は、幾千年も前の出来事を唄うものだ。自分が、『救世主』をやっていた時の内容も入っている。

「…みんな、元気かな」

 フェルは、かつて世界を救った『救世主』達の一人であり、聖人として蘇りを果たした者である。

 満月を見上げたフェルは、苛立つように溜め息をつく。

「あーもう、感慨になんか浸らせないでよね。こっちは、何とか来る人来る人に嫌われて、現世の未練をなくそうとしてるんだから」

 彼女が、どうして千年もの間、生き永らえ、そして次の『救世主』たる者を選んでいるかは、ここで語るべきではない。それは、彼女の努力を興醒めたモノにすることであり、何よりお話(・・)に要らぬ語りをつけ、蛇足を生むことになるだろう。早い話が面倒臭い、要らない、なくても大丈夫。

『フェル、今ちょっといい?』

 その時、フェルの頭の中に響いたのは声。テレパシーだ。

「いいわよ――あー、今は何て呼べばいいかな。『観測者』? それとも、昔みたいに…」

『『観測者』で良いよ。で、そんなことより、』

 そのテレパシーの主は、『観測者』。

『今、放り込んできたユリクラスの子だけど、全然説明してないよね? こっちとしては、教えるのは越権行為だから、力を与えるだけにしたんだけど』

 少しの苛立ちが、『観測者』の言動から窺える。

「うん。それでオッケー。その子、社会的な地位は高くないから」

 へー、とテレパシーで納得される。

『どこのどんな子なの? 一応、直系の『救世の末裔』みたいだけど』

「それがね、なんと十年前のハイルディ達の知り合いらしいの。しかも、学者クンのところで働いてるみたい」

 同じ役目を、知り合い同士で済ませているあたり、世界はなかなか狭いらしい。

『え、じゃあ、ちょっと待って…。僕、力を押し付ける対価に、あの三人の記録を教えたんだけど』

 予想しない事態に、目を見開いた。

「ちょっと何してくれてるの!? あんなの見せたら、確実に頭おかしくなるわよ!?」

『だって! 他人が見たらただの魔力暴走じゃん!』

 ああもう、と叫んだ『観測者』が、テレパシーを切る。事態の収拾をつけに行ったのだろう。

 自分の方も、やれやれと溜め息をつく。

「…これで良いのかな」

 自分達がやっているのは、世界の存続にために、人のために必要なことだ。だが、その所為で、自分を含めた何人もの人間が、背負う筈ではなかった運命と不幸を背負うこととなった。

「…どっちみち、私にはどうすることも出来ないけどさ」

 自分も、結局は世界システムの一つでしかないのだ。『観測者』も、ハイルディも、あの子も、『救世主』も。

 溜め息はつかず、諦めだけを胸に秘めて、満月に手をかざす。

「誰か、ぶっ壊してよこんな世界」



夢の二日連続更新。やったね妙ちゃん、アクセスが増えるよ!



小ネタ


①『賢人』ユリクラス

②『聖狼』ガルリア

③『迎地』ディコーゲン

④『白麗』イルリアレイアーノ

⑤『巨竜』シャフィーク・ターヒル


順に、エルフ、人狼、ドワーフ、オーク、竜人の聖人。伝承上、救世主の仲間として、世界を救ったとされる。①②⑤が男で、③④が女。


種族説明~

エルフ

北欧から東欧に住んでる種族。寿命は人よりちょっと長い。魔力量は人よりちょっと多い。

長耳尖り耳。別にエルフ全部が美男美女とかいうことはない。顔立ちはスラブ系民族。


人狼

バルカン半島に住んでる種族。寿命は人と同じぐらい。魔力量は人よりちょっと多い。

早い話が狼男。血の濃さによって獣度が変わってくる。人狼十割は、二足歩行でムキムキの狼みたいな見た目。強い(確信)


ドワーフ

トルコ~アジア~北アフリカに住んでる種族。寿命は人と同じぐらい。魔力量は人よりちょっと少ない。

アジアのドワーフは低身長醤油顔、ヨーロッパ寄りのドワーフは高身長ソース顔。手先が器用であることが多い。黄色人種やアラブ系な顔立ち。


オーク

シベリア~ウラルに住んでる種族。寿命は人と同じぐらい。魔力量は人よりちょっと少ない。

別に、豚鼻がついてて、『ぐへへ、エルフを襲ってやるぜ』みたいな種族じゃない。

二メートルぐらいの身長で、手足が長い。顔はスタートレックの耳の長い人を、彫りの浅い顔にした感じ。髪は、男女ともに坊主みたいな短い毛が芝生のように生えているだけ。モンゴル系な顔。


竜人

アフリカに住んでる種族。寿命は人より遥かに長い。魔力量は人より遥かに多い。

まず、素っ裸の人間を想像してください。その裸の手足先、局部や乳房を鱗で覆ってください。そして、他の部分を爬虫類チックな色で塗ってください。背中に腕に二倍ぐらいの大きさに翼を付ければ竜人です。服を着る文化はあまりありません。髪は黒が多いです。鱗・肌は、深緑色~黒系です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ