第三話:その後の出来事と切っ掛け
お久しぶりです!
マーボーです。
とりあえず書いたので投稿しました。
その日の放課後、一輝は重い足を引きずりながら力なく帰路に就いていた。
頭の中はなんであんな事になってしまったのだろう? という事ではなく、ひたすら真由美の言葉と『なんで俺はあんな事を言ってしまったのだろう?』という後悔でいっぱいだった。
「はぁ。真由美も早退しちゃったしなぁ……」
その事実が余計に一輝の足を重くする。
大きくため息をついた一輝は一人残された昼休みの事を思い出した。
あの後、周りの生徒が一輝を取り囲み、何があったのかと問い詰められたのだ。
しかもその筆頭が、戻ってきた和樹だった。
(そこは普通、友人として止めるべきだろう……)
なんて心の中で愚痴るも、すぐに和樹だからしょうがないと処理をして一旦落ち着こうとする。
「……いや、無理だろ……」
一輝はもう一度大きくため息をつき、普段の倍近くの足取りで家へと帰っていった。
◇◆◇◆◇◆◇
深夜。
夜ももう遅い時間に一輝の元へ一通の着信が鳴った。
今日の出来事もあり、早く寝てしまおうとしていた一輝は気怠そうに携帯を手に取るが、すぐに顔を引きつらせる。
相手は――
「誠也かよ……」
今の一輝がもっとも相手にしたくない相手NO,2と言ってもいい相手だ。
ちなみにNO,1はもちろん真由美だ。
「やっぱり、真由美の事だよなぁ。うわーどうしよう……怒られるかなぁ」
携帯片手にグダグダと考える一輝。
いっその事このまま放置でもしようという考えが頭の中を過ぎるが、それはそれで明日会った時に気まずくなるだろう。
そんな思考の渦に埋もれ、必死に導き出した答えは――
「あー……もしもし」
一輝はなるべく声のトーンを落としながら、相手の出方を窺うように電話に出る。
「よう、遅くにスマンな」
だが、電話の相手は一輝の心配を余所に、何時も通りに話しかけてきたのだった。
その事に一瞬、ポカンと呆気にとられた一輝だったが、まだ油断できないと更に気を引き締める。
「い、いや気にするなよ」
しかし、気を引き締めても、緊張のせいで喉が少しだけ擦れる。
「んあ? なんだどうした、風邪でも引いたか?」
「ち、違うよ」
「じゃあなんだ? 町内一周マラソンでもしてきたのか?」
「それもちげぇよ!?」
と、いつものように本気で突っ込んでしまった一輝。
しまったなぁ、なんて思うも時既に遅し。
開き直り、ここはもう用件を聞き出そうと決意する。
「それで用件はなんだ?」
「あー昼休みの事なんだけどよぉ……」
(やっぱりキタかぁ!!!!!)
思わず叫んでしまいそうになるが、一輝はそれを何とか堪える。
けれど、次の誠也の言葉に一輝は更に拍子抜かれてしまう。
「あれは気にするな。んじゃそれだけ、おやすみー」
「は……?」
誠也はそう言うなり通話を切ってしまう。
ツーツーと音が鳴ったのがその証拠。
今の一輝には指を動かす事は出来ないから自分で切ったという事はないだろう。
何故なら、驚きにあまり固まってしまったからだ。
「は、ははは……はは……っ」
それからしばらくして、何とか出せたのは乾いた笑い。
だって自分の彼女を泣かせたんだぞ? なんて思考もあるべきだが、それよりも一輝の脳内はある単語でいっぱいだった。
「はぁぁぁぁあああああああ!?!?!?!?」
この日一番の驚愕だけだった。
◇◆◇◆◇◆◇
「学校、行きたくねーなぁ」
引きこもり願望抜群な言葉と共に、一輝はベッドから這い出る。
時刻は7時をまわったところ。
「母さん達はきっと出かけてるよなぁ」
一輝の両親は自分で会社を立ち上げて仕事をしている。
それのせいで、朝は早く、夜は遅くまで会社にいる。
実質、家にいるよりも会社に居る時間帯の方が長いと言っても過言ではない。
「一人気ままに過ごせるのはいい反面、面倒くさいよなぁ」
家事はもちろん、ゴミ出しや買い物なんかは一輝の仕事だ。
この生活も長いため、慣れた物だが、やはり面倒くさいという気持ちは捨てきれないらしい。
「ま、ちゃっちゃと済ませて、さっさと学校に行って、とっとと仲直りしよう!」
◇◆◇◆◇◆◇
なんて言いつつ放課後。
「……びっくりするくらいに時間の流れが早かったなぁ」
一輝は学校を出て、近所のスーパーに来ていた。
目当ては夕飯の材料だ。
ちなみに献立はニラ玉。
お手軽で栄養もある優れた一品だ。
「しかも安い! と言いたいが……」
ここで今日の出来事を思い出す。
まだ怒っているんじゃないかという不安を抱えながら登校した一輝。
しかし、その不安は無駄に終わった。
なんと真由美の方から昨日の謝罪があったのだ。
何が何だか理解できない一輝だったが、すぐに一輝の方も謝り、その場で和解。
一輝の謝罪の言葉を聞いた真由美は、どことなく嬉しそうだった。
「あれだな。今夜は手の込んだ物でも作って、真由美の家にでも届けに行くか」
そして、作るのに足りない材料を買い、帰路に就く一輝だった。
◇◆◇◆◇◆◇
一方、真由美は誠也と一緒に帰宅していた。
二人の間に会話らしい会話はない。
付き合いたてというのなら初々しさがあって、会話がぎこちなくなってしまったりする物であるが、二人の空気はそういうものではない。
それに二人は付き合って半年は経っている。
つまり、これがこの二人にとっての日常なのだ。
「…………」
しかし誠也はそれに納得をしていなかった。
誠也と和樹、一輝と真由美という仲良し四人組は小学校の頃から続いてきたものだ。
たまたま名前順が近かった一輝と誠也。
そこから一輝経由で誠也は真由美と出会い、誠也はその時に一目惚れをした。
ちなみに和樹は気が付けば隣にいた。
曰く、
「いやぁ、だって真由美と話す誠也は普段と違っていて面白くってよ~」
それで一輝たちといれば面白いと直感した和樹は連むようになったのだ。
良く分からない理由だが、それも和樹らしいと言えるだろう。
そうして四人は小・中・高校まで過ごしてきた。
そして誠也は、この四年間を一輝や真由美と過ごすうちに気が付く。
――真由美が一輝しか見ていない事に。
別に一輝だけを贔屓しているわけではない。
真由美は皆とも話はするし、付き合いも良い。
ただし、一輝の事を見る目だけは皆と少し違っていた。
いつもはお互いに言い合う仲だが、二人ともそれが当たり前のように過ごしている。
それはある意味当たり前の事だ。
一輝と真由美は幼稚園、その前からお隣同士という事で付き合いがある。
その年月だけ一輝と真由美は共に過ごしてきている。
誠也はその事に嫉妬していたのだ。
そして高校に上がった誠也の心情は嫉妬から焦りに変わっていき、半年前の告白に至る。
結果は恋人という関係になり、誠也の望む通りに進展したわけだが……。
「な、なぁ真由美ちゃん。手でもつながないか?」
「…………」
「真由美ちゃん?」
「……え? あ、なに?」
「…………いや何でもない。それより一輝とは仲直りできたのか?」
進展したはずなのに距離が相変わらずな事を気にするも、真由美の事を想ってすぐに話題を変える誠也。
そんな誠也の問いに、真由美は笑みを浮かべながら今日あった事を伝える。
「うん! あのね、昨日の事、一輝から謝ってくれたんだよ! 私が一方的な感じで悪かったのに。でも、一輝は謝ってくれたんだ!」
「そ、そう……なのか」
話しながら思い出しているのか、その笑みは少しだけニヤニヤとしている。
誠也は普段見せない真由美の笑顔に更に嫉妬を覚えてしまう。
「……っ」
誠也は嬉しそうに話す真由美に我慢が出来なくなり、そっと手を繋ごうと身を寄せる。
「それでね、一輝が……っ!」
話を遮るようにして真由美の手を握る誠也。
真由美の手は男の手とは違って小さく、柔らかかった。
その感触に誠也の動悸は早まる。
(こんなにも小さく、愛らしい存在が俺の彼女なんて)
と気分も高揚していた。
だが、そんな浮かれている誠也も、違和感に気がつく。
握っている真由美の手が若干震えているのだ。
誠也達の交際はその辺のカップルと比べても極めて珍しく、未だにキスをするまでの清い交際を続けてきている。
満足していると言えば嘘になる。
誠也だって健全な年頃の男子だ。
キス以上の事だってしたいと思っているし、もっと真由美にも触れたいと思っている。
しかし、真由美がそれを望んでいないように見えるのだ。
実際に真由美が声に出して拒んでいるというわけではないが、誠也は態度でその心情を察したのだ。
自分とキスをする時も、決心したように瞳をギュッと瞑ってから。
今みたいに手を握る時も、本来なら確認をしてからじゃないと、あまりしてくれない。
故にこうして急に繋ぐと、心の準備が出来ていない真由美は怯えてしまう。
(……なんでだ……。一体なんでなんだ……!? 一輝にはこんな態度とらないじゃないか……!)
その真由美の態度は、誠也に焦りと嫉妬を生み出させるには十分な物だった。
(くそっ……こうなったら……!)
そして、その焦りと嫉妬は誠也から正常な思考を奪っていった。
……どうでしたかなぁ。
感謝コーナー!
龍賀様、夜神様、感想ありがとうございました。
もしよろしければ、読んでくださった方々も今話の感想などをくれるとありがたいです。
では、次回もまたよろしくお願いしますね!
ps.どうしてこうなった?! の方は、ただいまアスラクライン編ですので、エロトの出番はありません。
ですので、アスラクラインが終わるまでエロトの件は保留します。
ご了承ください。