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森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


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第83話:ダンジョンテロの阻止と、芽生える覚悟

精鋭工作部隊『黒の猟犬』を速やかに無力化し、自発的な脱走ができないよう強固に拘束した三姉弟は、洞窟のさらに深い場所、ダンジョン全体の魔力を一手に制御している『コアの間』へと足早に向かっていた。


「さっきの工作員たちが持っていた手記や指令書によると、すでに本隊の幹部である将校がコアの間で暴走の最終術式を展開し始めているみたいだね」


三葉が走りながら、回収した書類に記された複雑な暗号を目にも留まらぬ速さで読み解いていく。


「急ぎましょう。ダンジョンのコアが完全に暴走してしまえば、この霊峰全体に棲まう膨大な数の魔物が狂乱し、一気に麓の街へと押し寄せてしまうわ」


一葉が周囲の暗がりから漂う不穏な魔力の気配を察知しながら、しなやかな身のこなしで回廊を疾走する。


長い回廊を抜け、最奥に聳え立つ重々しい石造りの扉を潜り抜けると、そこは青く幻想的に輝く巨大なダンジョンコアが空間の中央に浮遊する、広大な地下空間だった。


しかし、その美しいコアの周囲には、不気味な赤黒い魔法陣が幾重にも蜘蛛の巣のように敷き詰められており、その中央に立つ一人の男、ヴェルザ帝国軍幹部の重魔導士が、勝利を確信したような狂気的な笑みを浮かべていた。


「ハッハッハ! 遅かったな、愚かなネズミどもめ! すでにコアへの汚染術式は最終段階へと入っている! たかが田舎町の冒険者がいまさらしゃしゃり出てきたところで、この暴走の連鎖は誰にも止められんのだよ!」


将校が手にした極太の魔導杖を高く掲げると、杖の先端から溢れ出した赤黒い禍々しい魔力がコアへと一気に注ぎ込まれ、ダンジョン全体が凄まじい地鳴りを立てて激しく揺れ始めた。


コアから溢れ出した狂乱の魔力が形を成し、無数の影の魔獣となって三姉弟へ向かって一斉に襲いかかってくる。


「二葉、影の魔獣群を食い止めて! 三葉は核心の暴走術式へ!」


「任せて、ひと姉!」


二葉が真っ先に前方へ跳びだし、両足を強く洞窟の大地へと踏みしめた。


「二生の根張!」


ドズゥゥゥンッ!


彼女の足元から目に見えない無数の根が神殿の地下深くへとどこまでも広がり、空間と大地そのものを強固に固定する。


襲いかかる無数の影の魔獣の鋭い爪や牙、そして激しい魔力の濁流が二葉の身体を容赦なく直撃するが、彼女は一ミリも後退することなく、木剣一本で全ての攻撃を受け止め、発生した膨大な衝撃を足元の大地へと逃がし続けた。


「バ、バカな……あんな軽装の小娘一人が、暴走したコアの猛烈な魔力濁流を完全に耐え切っているだと……!?」


将校が信じられないものを見る目で目を剥き、恐怖に激しく戦慄する。


「隙だらけよ」


一葉が空中で指先を優雅に舞わせる。蔓を巻くように指先を空中へ走らせると、将校を取り巻いていた防衛障壁と攻撃術式の事象そのものがぐにゃりと捩じ切られ、跡形もなく綺麗に消滅した。


「な……私を護る絶対の防御魔法が一瞬で無効化されたというのか!?」


「これで終わりだよ」


三葉が滑らかな足取りで隙間を縫って滑り込み、将校が手にしていた触媒である極太の魔導杖と、コアに巻きついていた赤黒い暴走魔法陣の結界へ、そっと自らの素手を触れさせた。


「三途の葉落」


触れた瞬間、将校の持つ伝説級の魔導杖が凄まじい速度で黒ずみ、枯れ木のように乾燥して脆い灰となって砕け散った。


さらにコアを直接汚染していた赤黒い暴走術式そのものが、三葉の持つ腐食と老朽化の力によって概念ごと枯れ果て、一瞬にして元の綺麗な青い輝きへと戻っていくのだった。


空間を揺らしていた猛烈な地鳴りがピタリと止まり、洞窟内に澄んだ静寂が戻った。


「ぐ……あぁぁ……我が帝国の至高の術式が……こんな子供たちに崩されるとは……!」


魔力を完全に失った将校はその場に膝をつき、絶望に打ちひしがれて顔を伏せた。


数時間後。


連絡を受けて駆けつけたギルドの増援部隊に帝国軍幹部の身柄を正式に引渡し、無事に大きな事件を解決した三姉弟は、茜色に染まる霊峰の山道を穏やかな足取りで下りていた。


「ふぅ……なんとか街やみんなへの被害を防げて本当によかったね、ひと姉!」


二葉がホッと胸を撫で下ろし、ニコッと爽やかに笑いかける。


「ええ。私たちの力で、大好きなみんなの平和な日常を守ることができて本当によかったわ」


一葉が優しく微笑む。


「うん。僕たちの生活魔法の力、ちゃんと誰かを守るために役に立っているね」


と三葉も深く頷いた。


国家規模の巨大な陰謀すらも退けた三姉弟の確かな実力と、深く固い絆。


彼らは温かな家族が待つ、自分たちの愛するカフェ『グリーン・リーフ』へと、誇らしい足取りで帰っていくのだった。

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