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森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


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第50話:還るべき緑と、紡がれる日常の光

熱砂の都市サフィールに清らかなオアシスの輝きを取り戻してから、数日。


果てしなく続いていた黄金色の砂丘を抜け、幾つもの街道を乗り合い馬車で越えた一葉、二葉、三葉の三人は、ついに見慣れた故郷の景色の中へと戻ってきていた。


どこか優しく、どこか甘い風が鼻腔をくすぐる。


青々とした木々の葉が擦れ合う音が耳に心地よく響き、旅先での張り詰めた緊張感が、身体の芯から解きほぐされていくようだった。


「ふぅぁぁぁ……! やっぱり、この街の空気が一番落ち着くね!」


二葉が背中の木剣を直しながら、両手を大きく広げて深呼吸をする。


胸元で揺れる銀色のDランクプレートが、西日に反射して誇らしげに輝いていた。


「うん。サフィールの暑さも貴重な経験だったけど、やっぱり緑に囲まれたこの場所が一番しっくりくる」


三葉が和かな表情で、言う。


「お店へ戻ったら、サフィールでレイラさんから貰ったハーブの成分分析データと、僕たちの【三途の葉落】による水質浄化の応用事例をしっかりまとめておかないと」


一葉は二人の楽しそうなやり取りに目を細め、そっと自分の胸元へ手を添えた。


父・一二三から授かった緑のペンダントは、故郷の大地と深く共鳴するように、静かで温かな脈動を返してくれている。


角を曲がると、夕暮れ時の優しい茜色に染まる一軒の店舗が見えてきた。


木製の小さな看板に描かれているのは、見慣れた一双の葉のマーク——『グリーン・リーフ』だ。


カランコロン、と清々しいドアベルの音を響かせて扉を開けると、そこには変わらない愛おしい香りが満ちていた。


香ばしい挽きたてコーヒーの深みある香りと、焼き立てのパンの甘い薫香。


「ただいまー、お父さん、お母さん!」


一葉、二葉、三葉の三人が声を揃えて挨拶を響かせる。


厨房の奥から手拭いで手を拭きながら現れたのは、母の葉だった。


その穏やかな瞳に三人への温かな愛情をたたえ、ふわりと優しく微笑む。


「おかえりなさい、一葉、二葉、三葉。……無事に帰ってきてくれて、本当に良かったわ」


カウンターの奥からは、父・一二三が、静かな足取りで歩み寄ってきた。


力強い大きな手で、一葉たちの頭を順番に、愛おしそうに撫でる。


「サフィールの警備隊とギルドから、早馬で報告が届いているよ。オアシスを蘇らせたんだね。……三人でよく力を合わせ、頑張ったね。」


一二三の重みのある褒め言葉に、二葉がニッと八重歯を見せて笑った。


「へへっ! お父さん、サフィールのオアシスはすごかったんだよ! でも、三葉の分解と私の根貼りで、黒い泥なんてあっという間に吹き飛ばしちゃったんだから!」


「それに、サフィールの見習い錬金術師のレイラさんから、お土産にサフィール特産の最高級ハーブティーの茶葉を貰ったよ」


三葉が大切に抱えていた缶を差し出すと、母の葉が嬉しそうに目を輝かせた。


「まあ、素敵な茶葉ね! 今夜のお夕飯のあとに、みんなで一緒に淹れていただきましょうね」


一葉は空中を通じて蔓を巻くように優雅に指を動かした。


手のひらから解き放たれた澄み切った緑の光が、旅の途中で持ち帰ったハーブの豊かな香りと、店内の温かな空気をやさしく包み込んで「固定」していく。


【一輪の秒芽】——変えさせない、この愛おしい家族の温もりを。


一葉の保持魔法が解き放たれると、店内はまるで森の中にいるかのような清々しい安らぎで満たされた。


「ふふ、一葉の保持魔法、また一段と光の輪郭が優しく、強くなったわね」


葉が嬉しそうに一葉の頬を撫でる。


「うん、お母さん。遠くの街へ行くたびに、色々なことがあったけれど……私たちの『生活魔法』は、誰かを傷つけるためのものじゃなくて、誰かの大切な暮らしを守るためのものなんだって、改めて実感できました」


一葉は胸のDランクプレートと、父のペンダントを強く握りしめ、力強く頷いた。


その夜の『グリーン・リーフ』は、三人のお祝いのために集まった街の仲間たちで、遅くまで温かな賑わいに包まれた。


ギルドマスターのヴァルターや、Bランク冒険者のバルガス、さらには街の商店街の人々が次々と訪れ、三人のサフィールでの活躍と、Dランク冒険者としての更なる躍進を祝ってグラスを掲げた。


「おいおい、Fランクから昇格してあっという間にサフィールの危機まで救っちまうなんて、お前たち三姉弟の快進撃はどこまで行くんだ!?」


バルガスが豪快に笑いながらハーブパイを頬張り、ヴァルターも満足そうに目を細める。


「ギルド本部からも、今回のサフィールでの救済劇について正式な感謝状と、さらなる評価の引き上げが検討されている。だが……君たちは相変わらず、その力を威張ることもなく、この店で誇り高く笑っているな」


「当たり前ですよ、ヴァルターさん」


一葉は客席へ温かいコーヒーを運びながら、凛とした、そしてとびきり優しい笑顔を向けた。


「私たちが冒険者になったのは、ランクを上げるためでも、有名になるためでもないもの。このお店の手伝いをしながら、目の前で困っている人の日常を守りたい……ただそれだけなんですから」


一葉の言葉に、店内の誰もが温かな拍手と誇らしげな笑顔を送った。


宴が終わり、常連客たちが満足そうに去っていった深夜。


静まり返った店内で、一葉、二葉、三葉の三人は、二階の窓辺から夜空を見上げていた。


故郷の街を静かに照らす月光が、三人の胸元に輝く銀のプレートを優しく包み込んでいる。


「ひと姉、私ね、冒険者になって本当によかったって思ってるよ」


二葉が木剣を膝の上に置き、遠くの街並みを見つめながら呟いた。


「私の【二生の根張】で、困っている人や大地を抱きしめて、守ってあげられるのがすごく嬉しいんだ」


「僕も」


三葉が手帳を開き、月光の下で自分の書き込んだ文字を撫でた。


「僕の【三途の葉落】で、目に見えない不純物や悪意を分解して、正しい状態に戻してあげられる。生活魔法の可能性は、僕たちが三人でいる限り、どこまでも広上がっていくのかな…」


二葉と三葉の言葉に、一葉はそっと二人の手に自分の手を重ねた。


「うん。二人と一緒だからこそ、ここまで来られたのよ。これからも、どんな場所へ行くことになっても……三人で知恵を絞って、私たちの『生活魔法』でたくさんの笑顔を咲かせていきましょうね」


「「うん!!」」


明日もまた、『グリーン・リーフ』の扉が開かれ、香ばしいパンの匂いと温かなハーブの薫香とともに、三人の穏やかで特別な日常が始まっていく。

「少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【評価】(★★★★★)で応援していただけると励みになります!」


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前作はこちらから読めます。

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