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森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


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第46話:凱旋の宴と、新たな風の予感

アルトリスでの激闘を終え、鉱山都市の誇りを取り戻した森羅家の三姉弟。


数日の旅路を経て、三人が見慣れた街道の曲がり角を抜けると、夕暮れ時の淡い茜色に染まる故郷の街並みが目に飛び込んできた。


香ばしい焼き立てパンの匂いと、爽やかなハーブの薫香が鼻腔をくすぐる。


「ただいまーっ! お父さん、お母さん!」


二葉が一番に『グリーン・リーフ』の重厚なドアを押し開け、清々しいドアベルの音を響かせた。


「おかえりなさい、二葉、一葉、三葉。無事に帰ってきてくれて安心したわ」


厨房から手拭いで手を拭きながら現れた母・葉が、包み込むような温かな笑顔で三人を出迎える。


カウンターの奥からは、愛おしそうに目を細める父・一二三が静かに歩み寄ってきた。


「ゴルドンからギルド経由で早馬の知らせが届いていたよ。アルトリスの『大魔脈』を傷一つなく鎮め、鉱山を救ったそうだね。……実に見事な手際だったよ」


一二三の言葉に、三人は顔を見合わせて嬉しそうに微笑んだ。


「お父さん、お母さん! 私たちの『生活魔法』、大地の底でもバッチリ通用したよ! 【二生の根張】で荒れ狂う大地の脈動を包み込んで落ち着かせたんだから!」


二葉が背中の木剣をさすりながら胸を張る。


三葉も言う。

「アルトリスで採取した不純魔力のサンプルと、魔脈の波長データも完璧に記録したよ。僕たちの【三途の葉落】による微細分解は、大地の過剰圧力に対しても極めて有効であることが証明できたんだ」


一葉は胸元で眩く光る銀色のDランクプレートと、父から託された緑のペンダントを優しく包み込んだ。


「【一輪の秒芽】で、大魔脈の核が本来持っていた綺麗で健康な状態を定着させることができました。……どんなに巨大な異変でも、私たちなら、崩れた調和を元通りに戻せるんだって確信できました」


一葉が空中を通じて蔓を巻くように優雅に指を動かすと、手のひらから解き放たれた清廉な緑の光が、疲れの残る店内の空気を一瞬で清々しいものへと塗り替えていく。


「…立派になったね」


一二三は一葉たちの頭を順番に大きな手で撫で、力強く頷いた。


「今夜は三人の凱旋祝いだ。葉特製の料理をお腹いっぱい食べて、旅の疲れを癒やすといいよ」


「わーい! お母さんの料理だーっ!」


二葉が大歓声を上げ、店内に温かな笑い声が弾けた。


その夜の『グリーン・リーフ』は、三人のお祝いに駆けつけた常連客やギルドの仲間たちで大賑わいとなった。


「一葉ちゃん、Dランク昇格に続いてアルトリスでの大活躍、本当におめでとう!」


「生活魔法で大地の不純物を分解して、魔脈を元通りにしちまうなんて、相変わらず桁外れの雑用魔法使いどもだぜ!」


大剣を背負ったBランク冒険者のバルガスが豪快にジョッキを掲げ、ギルドマスターのヴァルターも満足そうに目を細めている。


「王都での噂に続き、アルトリスでの救済劇か。ギルド本部の幹部たちも、森羅家の三姉弟の快進撃には目を見張っているよ。君たちは、すでにこの国全体の希望となりつつある」


「ありがとうございます、ヴァルターさん。でも、私たちがやっていることは、ここで教わった暮らしの延長に過ぎません」


一葉は焼き立てのハーブパイを客席へ運びながら、控えめだが芯のある笑顔を返した。


宴が最高潮に達した頃、ドアベルがカランコロンと静かに鳴り、一人の旅人が店へと足を踏み入れてきた。


旅人は深いフードを目深に被り、全身を薄汚れた防沙マントで覆っている。


その腰元には、見慣れないエキゾチックな装飾が施された湾刀(シムシール)が揺れていた。


「いらっしゃいませ。申し訳ありません、本日は貸し切りとなっておりまして……」


一葉が優しく声をかけると、その旅人はゆっくりとフードを外した。


現れたのは、日焼けした小麦色の肌と、燃えるような緋色の瞳を持つ美しい少女だった。


少女は店内の温かな空気と、一葉が放つ澄み切った魔力の残り香を感じ取ると、すがるような眼差しで一葉の手を両手で強く握りしめた。


「お願い……! あなたが、森羅一葉様ですね!?」


「え……? はい、私ですが……」


一葉が驚くと、少女は喉を詰まらせながら、切実な声で訴えかけた。


「私は南方の砂漠都市『サフィール』から参りました、見習い錬金術師のレイラと申します! 私たちの故郷が……広大なオアシスが、正体不明の『漆黒の砂嵐』と枯渇現象によって滅びかけているのです!」


「サフィールのオアシスが……枯渇!?」


三葉が記憶のデータを引き出す。

「サフィールといえば、南方の砂漠地帯を支える最大の交易都市。広大な地下水脈と古代の精霊樹によって保たれているはずですが……」


「はい……! 水脈が突如として不純な黒い砂に汚染され、水が失われ、街の人々が乾きと異臭に苦しんでいます! 王都の神官様も、高位の魔導士様も『原因不明の呪い』だと手を引いてしまいました……!」


レイラは涙を浮かべ、胸元から一瓶の小瓶を取り出した。


そこには、どろりと濁った紫黒色の水と、怪しく明滅する砂が入っている。


一葉、二葉、三葉の三人がその小瓶に視線を落とした瞬間、三人の表情が同時に引き締まった。


「この魔力の澱み……アルトリスの大魔脈や、王都の魔力腐敗症の時と同じ『過剰な不純物の結合』の気配がするわ」


一葉が静かに告げると、三葉が手をかざして光を当てた。


「間違いない。自然の枯渇ではなく、何らかの巨大な不純物や異常魔力が地下水脈の循環構造を破壊している。僕たちなら、水脈の不純物を分離し、大地の脈動を再整列させることができるよ!」


「サフィールの人たちが乾いて苦しんでいるなら、放っておけないよ!」


二葉が木剣を握り直し、毅然とした声を上げる。


一葉はレイラの手に優しく自分の手を重ね、あたたかな笑顔を向けた。


「安心してください、レイラさん。私たちで、サフィールの美しいオアシスと、みんなの温かな日常を取り戻してみせます!」


「一葉様……! 二葉様、三葉様……!」


レイラが感涙を流して深々と頭を下げる。


故郷のカフェ『グリーン・リーフ』での束の間の安らぎを経て、Dランクへと躍進を遂げた森羅家の三姉弟。


暮らしを慈しみ、人を救うために磨き上げられた三人の芽吹きは、今度は熱砂の風が吹き荒れる南方の巨大都市サフィールへ向けて、さらなる広がりと新たな冒険の翼を広げようとしていた。

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