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森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


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第39話:真実の露呈と、白亜の裁き

カルゼル子爵の私兵部隊を傷一つ負わせずに完封した衝撃は、瞬く間に王都全域へと駆け巡った。


「あの三姉弟が、子爵家の騎士団を『生活魔法』で完封しただって!?」


「それだけじゃないぞ! 神殿のヒーラーでも治せなかった『魔力腐敗症』を、貧民区で何十人も治しているそうだ!」


民衆や冒険者たちの口コミは波のように広がり、これまで権力と恐怖で真実を覆い隠してきた子爵の手口は完全に瓦解しつつあった。


貧民区の廃教会前には、噂を聞きつけた中央区の市民や商人、さらには真相を確かめようとする王都冒険者ギルドの幹部たちが殺到していた。


「一葉さん、二葉ちゃん、三葉君!」


人込みを割って駆け寄ってきたのは、王都冒険者ギルドの支部長を務める女性・セリアだった。


その表情には驚愕と、これまでの無礼を恥じるような色が混ざり合っている。


「噂は本当だったのね……! あなたたちが、本当に魔力腐敗症を無力化し、治癒させているなんて……!」


「セリアさん。私たちは目の前で苦しんでいる人を助けたいだけです」


一葉は胸元の緑のペンダントをそっと握りしめ、まっすぐな瞳で答えた。


「この病気は自然に発生したものではありません。カルゼル子爵が王都の権力を握るために、人工的に作り出して撒き散らした毒素なのです。子爵邸にいる患者様の治癒に成功した時、子爵自らの口からその事実を聞きました」


「なんですって……!? 子爵が自ら病を……!?」


セリアが息を呑む。周囲に集まっていた冒険者や市民たちからも、激しい怒りと不快感のどよめきが湧き起こった。


「証拠なら、ここにあります」


三葉が静かに一歩前へ出た。

「僕の【三途の葉落】で解析した、腐敗毒素の構成魔力データです。この毒素の分子構造には、一般の大気中には存在しない『カルゼル子爵家の密売魔導具』特有の不純物反応がはっきりと刻まれています。僕の魔法でこの場で不純物を抽出し、ギルドの鑑定魔導具にかければ、すぐに証明できます」


「なんて精密な解析……! これなら言い逃れは不可能ね!」


セリアが強く頷いた、その時だった。


「そこまでだ!」


重厚な甲冑の擦れ合う音とともに、王都の正規軍である『王立騎士団』の精鋭たちが街道を埋め尽くした。


先頭に立つのは、黄金の飾りが施された純白の鎧を纏う男——王立騎士団長のレオンハルトだった。


「騎士団長様……!」


市民たちが固唾を呑んで見守る中、レオンハルトは威厳に満ちた眼差しで一葉たちを見つめ、静かに問いかけた。


「森羅家の一葉、二葉、三葉だな。カルゼル子爵より『テロリストの即刻処刑』を求められたが……ギルドからの緊急通報と、街の惨状を見れば、どちらが真の実情か理解できる。……一葉、お前たちの言葉に偽りはないか?」


一葉は一歩も引かず、背筋を伸ばしてレオンハルトの瞳を見つめ返した。


「ありません、騎士団長様。私たちの言葉が真実であること、そして私たちの生活魔法が病を治せることは、ここにいるすべての人々が証明してくださいます!」


「そうだ! 一葉ちゃんたちは命の恩人だ!」


「子爵の嫌がらせから僕たちを守ってくれたんだぞ!」


貧民区の人々が一斉に叫び、三人の前に進み出て庇うように手を広げた。その温かな絆の光景に、レオンハルトの厳格な表情がふっと緩んだ。


「……見事なものだ。民の心がこれほどまで一向に束ねられていることこそ、何よりの証拠だな」


レオンハルトは剣を鞘へと収めると、周囲の騎士たちへ朗々と命じた。


「これよりカルゼル子爵ジュリアンを、国家叛逆および人工毒素散布の嫌疑で緊急逮捕する! 全隊、子爵邸へ突入せよ!」


「「「ハッ!!」」」


騎士たちが一斉に動き出し、王都の暗雲を一気に払い去るように駆け抜けて行った。


それから数日後。


カルゼル子爵の身柄は拘束され、地下研究室からは『魔力腐敗症』の原液と大量の不正な証拠が押収された。


子爵の企みは完全に暴かれ、カルゼル家は没落。王都に平和と正義が戻ったのだった。


そして、王都冒険者ギルドの大ホール。


光り輝くシャンデリアの下、大勢の冒険者や関係者が集まる中で、一葉たち三姉弟の特別表彰式が執り行われていた。


壇上に立つのは、ギルド支部長のセリアと、騎士団長のレオンハルトだ。


「森羅家の一葉、二葉、三葉。あなた方の未曾有の功績、および王都を救った救世の働きを称え、ギルド本部より特別推薦が下りました」


セリアが笑顔で三枚のプレートを取り出す。


それは、これまでの銅色(Eランク)とは異なる、眩いばかりの銀色の光沢を放つ『Dランク冒険者』の証だった。


「本来ならば数年かかる飛び級昇格ですが、あなた方の実力と功績は文句なしのものです。本日より、三人同時に『Dランク冒険者』へと昇格といたします!」


「「「Dランク……!!」」」


二葉が「やったぁぁぁっ!」と飛び跳ね、三葉も感無量の面持ちで銀のプレートを手に取る。


一葉は胸元のお守りのペンダントと、新しく授与された銀のプレートを慈しむように触れた。


(どんなにランクが上がっても、私たちがやってきたことは変わらない。お店を手伝い、二人と一緒に磨いてきた『生活魔法』……)


「おめでとう、一葉ちゃん! 二葉ちゃん! 三葉君!」


客席からは、Aランク冒険者のクロードや、故郷から駆けつけてくれたバルガス、さらには救援に協力してくれた大勢の市民たちから、割れんばかりの歓声と拍手が送られた。


「一葉さん、素晴らしい決断と強さでしたね」


レオンハルトが深々と頭を下げる。


「いいえ、騎士団長様。私たちが勝てたのは、二人との絆と、故郷で両親から教わった『暮らしを慈しむ心』があったからです」


一葉は空中を通じて蔓を巻くように優雅に指を動かした。


手のひらに灯る淡い緑の魔力が、表彰式の会場全体を温かく包み込み、人々の心へ穏やかな安心感をもたらしていく。


【一輪の秒芽】——変えさせない、みんなの温かな日常を。


王都の事件を見事に解決し、Dランクへと躍進を遂げた森羅家の三姉弟。


生活魔法という名の小さくも逞しい芽吹きは、今や誰もが認める確かな大樹へと成長し、次なる新たな出会いと冒険の舞台へ向けて、さらなる輝きを放ち始めていた。

「少しでも面白い、続きが気になると思ってくださったら、ページ下部の【ブックマーク】や【評価】(★★★★★)で応援していただけると励みになります!」


前作もあわせてお楽しみいただけると嬉しいです!


前作はこちらから読めます。

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