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森羅家の生活魔法は伊達じゃない! 〜カフェの雑用と蔑まれた三姉弟、不遇魔法で世界最強へ〜  作者: いぬの名前はあとむ


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第30話:芽吹く光と、新たな誇り

白銀の光が弾け飛ぶ。


ヴァルターの大剣から放たれた極大の一撃と、冒険者たちの全魔力を注ぎ込んだ攻撃魔法が、一葉の【一輪の秒芽】によって崩壊状態を完全固定された『歪みの核』を真っ直ぐに貫いた。


パリィィィンッ……!!


空間を揺るがすガラスの割れるような不協和音が響き渡る。


巨木ほどもあった漆黒の結晶に幾重もの大亀裂が走り、次の瞬間、内側から眩い光が溢れ出した。


「グガァァァァッ……!!」


黒い泥で形作られていた影の異形たちが、悲鳴を上げながら次々とチリへと変わっていく。


核の砕裂とともに、森を支配していた不気味な紫黒色の霧が洗われるように薄れ、空を覆っていた重苦しい暗雲が裂けていった。


「やった……のか……!?」


バルガスが大剣を地面に突き立て、荒い息を吐きながら叫んだ。


崩れ去る結晶の中心から、黒い濁流ではなく、清らかな温かい風が吹き抜ける。


枯れていた大樹たちの表面に柔らかな緑の芽が吹き始め、大地を覆っていた漆黒の粘液は綺麗な土へと戻っていった。


「核の消滅を確認……! 大気中の異常魔力、急速に減衰していきます!」


手帳を構えていた三葉が震える声で報告する。


「やったぁぁぁっ! ひと姉! 三葉! 勝ったんだよ私たち!」


二葉が木剣を掲げ、一葉へ飛びついた。


「二葉、危ないわよ……ふふ、でも……本当によかった」


一葉は抱きついてくる二葉を優しく受け止め、胸元で力強く光り続けるペンダントに手を添えた。


手のひらを通じて伝わるのは、やり遂げたという確かな手応えと、温かな魔力の余韻だった。


「見事だ……。君たち三人がいなければ、この核を討ち払うことは不可能なことだった」


ヴァルターが歩み寄り、三人の前に膝をついて深々と頭を下げた。


「ギルドマスターとして、そしてこの街に生きる一人の人間として、心からの感謝を捧げる。……ありがとう、一葉さん、二葉ちゃん、三葉君」


「ヴァルターさん……!」


周りを取り囲むベテラン冒険者たちからも、次々と歓声と惜しみない拍手が沸き起こった。


「ハハッ! 生活魔法で大森林の危機を救っちまうなんて、前代未聞の快挙だぜ!」


「Fランクの三姉弟が、俺たち全員の命と街を守ってくれたんだ!」


称賛の声に包まれながら、一葉たちは顔を見合わせ、照れくさそうに笑い合った。


夕暮れ時、調査隊は無事に街へと凱旋した。


大森林の異常事態が収束したという報せは一足早く届いており、街の広場は救援隊の無事を喜ぶ大勢の住民たちで溢れかえっていた。


「おかえりなさーい!」


「ありがとう、冒険者のみんな! 三姉弟ちゃんたちも!」


歓声の波を潜り抜け、三人が真っ先に向かったのは、見慣れた我が家——『グリーン・リーフ』だった。


店の前には、浅層での撤退路確保を終えて一足先に帰還していた父の一二三と、母の葉が待っていた。


「お父さん! お母さん!」


二葉が駆け出し、両親の胸へと飛び込む。


三葉もその後に続き、一葉はゆっくりと二人の元へ歩み寄った。


一二三は三人の顔を慈しむように見つめ、大きく温かい手でそれぞれの頭を撫でた。


「よく頑張った、一葉、二葉、三葉。三人で力を合わせて、大切なものを守り切ったね」


「おかえりなさい。怪我はなさそうね、本当に良かったわ」


葉が優しく微笑み、三人を取り囲むように抱きしめた。


家族の温もりに包まれ、一葉の目から自然と安堵の涙が溢れ出した。


「お父さん、お母さん……私たち、守れたよ。『グリーン・リーフ』も、この街も……みんなの日常も」


「ああ、分かっている。お前たちは、世界で一番誇らしいよ」


一二三の優しい言葉が、一葉の胸に深く染み渡っていった。


翌日。


『グリーン・リーフ』は営業を再開し、朝から店内は満員御礼の大盛況となっていた。


今回の功績を称えるため、特別に店を訪れたヴァルターは、満面の笑みでカウンター席に腰掛け、革袋から三枚のプレートを取り出した。


「さて、一葉さん、二葉ちゃん、三葉君。ギルドからの正式な伝言と、報酬だ」


ヴァルターが机の上に並べたのは、これまでの鉄色(Fランク)とは異なる、鈍い銀の光沢を放つ銅製のプレート——Eランク冒険者の証だった。


「今回の『歪みの核』粉砕における決定的な貢献、および後方支援・現場での実戦実績を鑑み、ギルド本部の特例決裁が下りた。三人同時に、正式に『Eランク』への昇格とする!」


「「「Eランク……!!」」」


二葉が目を輝かせてプレートを手に取り、三葉も感無量の面持ちで金属の質感確かめる。


一葉は空中を通じて蔓を巻くように優雅に指を動かし、胸の前で静かに手を組んだ。


(ここまでの依頼やお店での日常、少しずつ重ねてきた経験……。二人と一緒に特訓して、……ついにEランクとして認められた)


Fランクという一番下のランクから、日々の暮らしと知恵で紡ぎ上げてきた生活魔法。


それが今、確かな「冒険者としての誇り」として形になった瞬間だった。


「おめでとう、みんな」


厨房から顔を出した葉が優しく微笑み、一二三も誇らしげに頷いた。


「よしっ! Eランクになったからって浮かれずに、これからもお店の手伝いも冒険も、三人で頑張ろうね!」


「うん、ふた姉。僕たちの連携も、もっと磨いていこう」


「ええ。私たちの生活魔法は、これからもっとたくさんの人を笑顔にできるわ」


三人は真新しいEランクのプレートを胸に掲げ、最高の笑顔を弾けさせた。


窓から差し込む温かな木漏れ日が、三人を、そして『グリーン・リーフ』の穏やかな日常を優しく照らしている。

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