第48話 遊びに行ったことないの?
「それでね。真春君のお母さんと帰ってきたの」
学校の教室において。
朝のホームルーム前に俺の席を囲うように前川さんと後藤さんが集まる。
最近では日常化した光景。
「前川さん、大江君のこと名前呼びしてない? 」
「そうだよね。最近、ずっとそうだよね」
「もしかして付き合ってるとか? 」
「ありえそう。前川さんがゾッコンそうだし」
ヒソヒソと女子を中心に俺と前川さんの話題が上がる。
女子たちは夢中になってるようだ。
「へぇ〜。それでそれで? 」
後藤さんも興味ありそうに前川さんに話を促す。
「挨拶もして話をたくさんして、都子ちゃんって呼んでくれてるんだよ? ね、真春君」
前川さんが俺から証拠を引き出そうとする。
「そうだね。お母さんと前川さんは凄い仲が良さそうだよ」
俺は事実を伝える。
実際に、お母さんと前川さんは仲が良さそうだ。
「そうなの! そうなの!! 真春君のお母さん、凄い優しくて私のことを良くしてくれるの!! 」
前川さんは興奮気味にお母さんの良さを後藤さんに伝える。
「へぇ〜、そうなの。お母さんとの関係も良好そうだけど。大江君との関係も良さそうだね。最近、名前呼びに変わってたし」
「七海、気付いてた? 真春君って呼んでるんだよ! 」
前川さんはパァァと嬉しそうに強調する。
「流石に気づくよ。こんなに何度も名前呼びしてたらね。逆に気づかない方がおかしいよ」
後藤さんは呆れた顔で苦笑いを浮かべる。
「そんなに呼んでた? 」
前川さんは不思議そうに首を傾げる。
「呼んでた呼んでた。まるで息をするようにね」
後藤さんは、さらに呆れながら説明する。
「確かに、後藤さんの言うとおりかもね」
俺は同調する。
「でもでも。真春君は名前呼びされて嬉しいんだもんね? お母さんが言ってたもん」
前川さんは焦った口調で俺に尋ねる。
もしかして不安になってるのかもしれない。
「そ、そうだね。嫌ではないよ。…嬉しいぐらいだよ」
俺は恥ずかしいと思いつつ、前川さんのために素直な嘘のない気持ちを伝える。
「そうだよね。だよね! ふふん、どう? 七海? 私と真春君の関係性は? 進展してるでしょ? 」
前川さんは得意げな顔を後藤さんに向ける。
「実際に関係性は十分に分かったけど。実際に遊んだこととかあるの? ショッピングモールとかで」
「え…」
後藤さんの疑問に表情が固まる前川さん。
「その反応。もしかして外出して遊んだことないの? 」
「ええっと。どうだったかな〜。あははっ」
前川さんは苦笑いを浮かべる。どうにか、この状況を誤魔化して切り抜けようとしている。
「その反応、図星なのね」
後藤さんはジト目を前川さんに向ける。
「…はい」
前川さんも観念して認める。
「ねぇ、大江君」
後藤さんの矛先が俺に向く。
「今日の学校終わりに、どこか遊びに行ってきなよ? もちろん都子とね」




