第18話 内緒だよ。本当のことは
1時間目終了後の休み時間。
俺は喉が渇いたため1階の自動販売機が並ぶ人気のない場所に向かう。
財布から小銭を準備する。
150円ほど。
3つのうちの真ん中の自動販売機に小銭を投入する。
チャリンッチャリンッと機械の中に落ちる音がする。
購入できる飲み物の下のボタンに青いライトが灯る。
俺は炭酸のジュースの下のボタンを押す。
ガタンッゴトンッ。
500mlのペットボトルが自動販売機から吐き出される。
俺はペットボトルを取り出す。
ペットボトルの冷えた温度が掴んだ手に伝わる。
ペットボトルのキャップを開ける。
喉を潤すためにジュースを体内に流し込む。
冷たく刺激のある炭酸が渇いた喉を潤してくれる。
3分の1ほど飲み終えてペットボトルのキャップを閉める。
「あ! いたいた! 」
後方から背中に聞き覚えのある声が届く。
声だけで主の顔を想像できる。
俺は振り返る。
「前川さん、どうしたの? 」
俺は笑顔で手を振る前川さんに尋ねる。
「伝えたいことがあってね」
前川さんは俺の目の前で立ち止まる。
真っ直ぐな瞳を俺に向ける。
うん。かわいい。
「昨日の件に続いて、今日も私を助けてくれて本当にありがとう!! 私の方が借りを作っちゃったね」
えへへっと自分の頬をなぞりながら笑みを浮かべる前川さん。
「いやいや。そんなことないよ。それに前川さんに助けて貰った借りはまだ返せてるか分からないから。前川さんは借りのことなんか気にしなくていいよ」
俺は遠慮するように首を左右に振る。
謙遜なんてしていない。
「そういうこと言うあたり、本当に大江君は優しいね」
前川さんはどこか嬉しそうにクスッと笑みを浮かべる。
「私ね、過去に父親が浮気して両親が離婚してるの」
前川さんがポツリッと呟く。
過去を思い返すように目を伏せる。
「その元父親はね、浮気がバレて謝りもせずにね、私の母親を浮気される魅力のない女だと馬鹿にした上、自分は金も稼いで家族を養って女を選んで遊べる人間だと自慢したの。それで離婚。最低でゲスだよね」
前川さんが過去を思い返すように上を向く。
今、何を考えているのだろう?
「その事実が背景にあって父親と大江君の彼女を奪ったことを自慢した渡辺が重なって見えて関わるのをやめたの。渡辺から大江君を守ったのも、それが理由」
前川さんが渡辺と距離を置いた理由を打ち明ける。
そうなのか。だから俺を助けたのか。
前川さんの言葉に納得してしまう。
「でも、また同じことが起こっても今度は関係ないけどね。そんな理由なくても助けるけどね」
前川さんは真っ直ぐな瞳を俺に再び向ける。
俺とバシッと目を合わせる。
「…そ、それはどういうことなのかな? 」
俺は恐る恐る尋ねてみる。
「内緒だよ。本当のことは」
前川さんはニコッと満面の笑みを浮かべながら、揶揄うように言う。
そのままクルッと俺に背を向ける。
「これからもよろしくね。大江君」
前川さんは顔だけ振り返って俺に微笑んだ。




