第四章
エメラルド色した瞳がわたしを捉える。
「ただの侍女が、俺になんの用だ?」
その瞳の中には、困惑して表情を強張らせるわたしの顔が映っていた。
「あ、あの…。わたし――」
「大変申し訳ございません!」
そのとき背後から声がしたと思ったら、直後、頭を鷲づかみにされた。
「エリオット国王、失礼いたしました…!この者、まだ侍女見習いでして、不躾な態度をっ…」
飛んで駆けつけてきた侍女長が、これでもかというほどにわたしの頭を押さえつける。
「ほら、早く謝りなさい…!」
侍女長が小声でわたしに話しかける。
なぜ謝らないといけないのか、よくわからなかった。
…わたし、なにかしたのだろうか?
でも、謝らなければ侍女長が噛みついてきそうな勢いだったので、わたしはごくりとつばを飲む。
「も…、申し訳ございませんでした…」
そう言ってチラリと視線を上にやると、エリオット様は無機質な表情をして、わたしを見下ろしているだけだった。
「どうでもいいが、俺に気安く話しかけるな。目障りだ」
エリオット様はわたしの頭上で吐き捨てると、側近たちを引き連れて奥の部屋へと入っていった。
わたしはというと、未だに状況を把握できなくて、その馬にぽつんと突っ立っていた。
あれが、エリオット様…?
全然わたしが知ってるエリオット様じゃなかった。
エリオット様はいつもやさしくて、柔らかい声でわたしに話しかけてくれたのに――。
いくら前世と姿が違うといっても、侍女に対してあんなふうに接するエリオット様は見たことがない。
そのとか、気配を感じて見上げると、侍女長が鼻の穴を膨らませてわたしを見下ろしていた。
「リシェル、あなたねぇ…。よりにもよって、国王の前で失態をさらすなんてやめてちょうだい!私の教育不足が疑われるじゃない!」
「す…、すみません。でも、つい体が反応して…」
「体が反応?…ったく、動くものにとりあえず飛びつく猫じゃないんだから」
その言葉に、わたしは心臓がビクッと跳ねた。
バ…、バレてないよね?
わたしが元猫だってことは…。
「とにかく、身勝手な行動は慎みなさい。これ以上、侍女長である私の言うことが聞けないのであれば、ここから出ていってもらっても構わないのよ?」
クビをチラつかせられ、わたしはすっかり萎縮してしまった。
せっかくエリオット様に会えたのに、こんなにも早く侍女見習いリタイアでお城から追い出されたくない。
「どうか…。それだけは、ご勘弁を…」
「じゃあ、私の言うことには従ってもらうわ。いいわね?」
「は、はい…!」
わたしは返事をすると、再び床掃除に戻った。
「ねぇリシェル、さっきはいったいどうしたの?」
友達が声かけてくる。




