佐藤は雨男だが、水も滴るいい男ではない
「ねぇシュクル、お腹は一杯?魔力はどれ位回復した?」
「そうですね、まだまだ食べられますが魔力はよくわかりません」
体に意識を集中するが魔力量などよくわからない。
「所で⋯⋯シュクルは水魔法は使えるの?」
「いや、使えないですね。父は土と風魔法を使えるので私も同じだと思います」
ノエルが魔法の適正は遺伝だと言っていたし、学校での魔法訓練ではコップに水を発生させるどころかコップを粉々にしてしまった。
「ではきちんと属性の確認はしていないのね?」
「はい。でもどうやって確認するのです?大きな町とかに行かなくては駄目ですか?」
正直言って遠出して大金を払ってまでは確認したくない。近場で安ければいいが⋯⋯
「学院にもあるし、簡易的な物ならギルドにもあるわよ~?それと教会ね」
「教会――」
「あ~私達獣人にはアレよね~でもシュクルは学院に通うまであと五年あるし、正確に把握する為には行った方がいいかな~と思うのだけれど⋯⋯?」
私が住むパックの町に教会は無いが、ギルド長の口調からしてあまり獣人に対して良い場所ではなさそうだ。人間達の宗教なのだろうな。属性を確認できるのだからきっと魔法と教会は密接に違いない。ならば魔力の多い王侯貴族を敬い、魔力の少ない獣人を差別する可能性は大いにある。
そんな所勘弁だ。私は獣人の中でも最下位のうさぎ獣人だから用心した方がいい。
だって教会は禁欲そうに見せかけて酒池肉林で無法地帯の可能性がある。いや、絶対にそうだ!教会へ足を入れた瞬間、赤い縄の魔法で変な亀甲模様の拘束をされてしまうのだろう。
『君がうさたん獣人かぁ??なんて人間と野獣の挟間の卑しい生き物だ!神への冒涜だ許すまじ!仕方がない神の使徒である、わ、わしが責任を持って隅々までレロレロ清めようではないか!』
『んーんーんー!!(まだ子供です!!)』
なんと恐ろしい⋯⋯
「いえ、学院まで待ちます⋯⋯」
「⋯⋯いきなりしょんぼりしてどうしたの?教会に嫌な思い出があるのね?なら仕方ないわ」
「ギルド長は私が水魔法を使えると思っているのですね?でも一度授業で水が出せるか試したのですが使えなかったのですよ」
「それは微妙ね。魔法は確かに遺伝が強いけれど、練習無しに初めから使いこなせないわよ~?もし出来たら子供達が日々魔法絡みの事故を起こしているわね~」
確かにそうだな、では試してみるか。こぶつきラクダになれるかもしれないし。だが馬車内にあるコップはガラス製だな。う~ん⋯⋯
「シュクル馬車内では止めてね!暴雨竜巻は嫌よ!」
コップ一杯の水すら出せなかったのに暴雨とは大げさだ。多分虎獣人であるギルド長は水があまり好きではないのかもしれない。
「ギルド長、魔法は生まれつきの属性以外使えませんよね?」
前から気になっていた事を聞いてみる。家に帰ったらもう少し魔術や魔法の勉強を学院入学もあるし、した方がいいと焦っている。
「使えなくはないわよ?でも効率が悪いというか⋯⋯そうねぇ~あそこに川があるでしょ?川の流れに合わせて使うのが属性魔法ね、逆に流れに逆らって無理やり行使するのが反属性魔法かしら?要は魔力量のごり押し次第よ~」
「分かるような分からない様な」
「そ、その⋯⋯シュクルは闇魔法は知ってる?⋯⋯暗黒的な?」
「はい?闇魔法ですか?」
闇魔法?何だか中二風なかっこいい響きだな。魔王が世界破滅とか出来そうな暗黒感がある。
「あれ知らなそう?あのね、シュクル位の年頃の子はやっぱり色々羞恥心が出て来るのかな~なんて?」
「ん?」
ギルド長は何を言ってるのだろう?闇魔法?暗黒的?お年頃?羞恥心?
あぁわかったぞ!
「前にそういう人に会いました」
「えぇ?!どこで?!」
「ギルドの新人研修会でした。その時から不穏な空気だとかダークサイドだとか言っていて、怪しい包帯を巻いていたんです。その日を境に毎日私の前に現れる様になったんですよ」
「えぇ?!なぜ?!」
「いつも北は不穏な空気を感じるとか、南で悲鳴を聞いたとか言ってましたね。その報告をしに通学路で私を待ち伏せしていたんです」
「はいぃ?怖!」
「それで人生苦労の形も色々あるんだな、私の知らなかった事もこの世には一杯あるんだな⋯⋯と思う体験をしまして」
「⋯⋯⋯⋯シュクル(頭のおかしなストーカーに何かされちゃったの?まさか⋯⋯)」
「今は彼も生まれ変わった様に真面目に生きているみたいですよ。でも闇とか黒とかの単語を聞くとたまに思い出してしまって⋯⋯」
「⋯⋯シュクル、もういいわ(辛い思いをしたのね。鬼畜ストーカー許すまじ!)」
シュクルの知らぬ間に暗黒尻尾を見られた事による魔力暴走事件の件がストーカー暴行事件の後遺症による魔力暴走となり同情された。




