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シュクルはどうしておっさんばかりに出会うのか

 とりあえずおっさん冒険者の衣を剝がしている変態とは他人の振りをして九階層に向かった。

そこは大きくて豊かな川が流れている階層だった。


「この階層に精霊はいるかな?」


「精霊達はあまり水を好みませんので、ここにはいないかと思います」


皆遊びに集中しているのか念話への返事がない。シュクルは陸地を少し歩いてみる事にした。

水鳥が緩やかな流れの川の水面に浮いている。鴨や白鳥だろうか。ここは少し肌寒いが、川の中にはきっと沢山の魚が泳いでいるのだろう。


「川に来ると釣りをしたくなるよね。少しだけしてもいいかな?」


おっさんの趣味といえば釣りも外せない。シュクルの中に眠る初老男性の魂が息吹き出す。


「もちろんですよ。私が代わりにこの階層にうさぎがいないか見てみますね」


優しいぴーちゃんにうさぎ探しを任せて適当な大きさの枝を見つける。その枝にバッグから取り出した釣り糸と重りと、針を結び、近くの石の下にいたミミズを針に固定する。


「よし行け!」


釣り糸は放物線を描いて川面に沈んでいった。


「あ~ルアーが欲しいよね~」


佐藤好みのダ〇ワ製のルアーさえあればもっと釣りの幅が広がるのだが⋯⋯そんな事を考えていると、いきなり釣り竿が引っ張られた。


「えぇ?! 大物か?」


こんなに簡単に釣れていいのだろうか。きっとここで釣りをする人など今までいなかったので魚達に警戒心が無いのかもしれない。


シュクルは慎重に糸を引き寄せていった。


「おっしゃやぁ!! おお~? 鯉かなあ⋯⋯?」


シュクルは鯉っぽい見た目の魚を釣り上げた。鱗がグレーっぽい魚で丸々と太っていて美味しそうである。


「こりゃいい。新鮮なうちに焼いて食べるぜ~まずは火をおこ――――」


「こらあ!! 儂のお魚に何をしとるんじゃ!」


「⋯⋯?」


シュクルは声がした方に振り向いてみると、そこにはシュクルの通例通り、変なおっさんがいた。


「ここのお魚はすべて儂のじゃ! 泥棒め!」


「⋯⋯いや、ここダンジョンじゃん⋯⋯」


ダンジョン内で泥棒とか言われても⋯⋯シュクルはシュクル帝国で自身のお宝を冒険者に盗まれてキレていた事はすっかりと忘れていた。


「お魚を返せ!」


「うぇ⋯⋯」


川の中にいたおっさんが岸まで歩いて来たが、素っ裸だった。このおっさんは以前見た幻獣のおっさん共とは少し違って、真っ白なドーナッツハゲ頭にかなり瘦せ型の神経質そうなおっさんだった。


「早く儂のお魚を渡せ!」


「はぁ? その前に服着ろよ。キモイんだよ」


可愛い大うさぎを見に来たのにどうして爺さんの萎れた裸なんぞ見なきゃならんのだ。


これはやっぱり生前佐藤の目の前に裸の異性が現れる事が無かったからこそ、頻繁に起きている珍現象なのだろうか?


いや、でもどうしていつも年配者ばかりなんだろう。⋯⋯あれ? もしかしてこの正反対の事象は私の魂の年齢に合わせて起きているのか⋯⋯?  魂が同年代の異性達とのラッキースケベ⋯⋯?


シュクルは今気づきたくもなかった事実にようやく気づいた。


「キモイとは何じゃ! 儂の体を無料(ただ)で見よって! 最近の若い女は助兵衛だな!」


「え? むしろお前が私に迷惑料を払えよ⋯⋯」


爺さんはプンプンと怒りつつ、木の洞の中から服を取り出して身に着け始めた。


「その穴が爺のロッカーなのかよ?! うぇぇ生着替え⋯⋯」


シュクルは魂が同年代である異性の濡れた裸と、生着替え見学ポイントをゲットした。 大変不名誉であった。


昔佐藤が健康ランドに行って、更衣室にいた爺さんがヨロヨロと着替えをしていたのを思い出した。意外と黒のボクサーとか履いていて、最近のご老人はおしゃれだなぁと思ったのだったが⋯⋯


「着替えたわい」


「えええええええええ?!?!?」


なんとシュクルの目の前には若い女の子が着そうなフワフワの着ぐるみパジャマを着た爺がいた。フードも被り、顔と手と足先だけ出ている状態だ。


そして驚くべきはその色と形状。爺さんは⋯⋯


「白い⋯⋯うさぎ⋯⋯」


何とシュクルが求めていた大うさぎはこの爺だったのだ。 どっと疲れを感じた。


「うつけ者! これはうさぎじゃないわ! 白馬じゃ!」


「どこがだよ?!」


どこからどう見ても白馬には見えない。馬にしては耳が大きすぎるからか?  多分ロバだろ?


「あ~あ。結局またこのパターンじゃないか。いつもおっさんと爺ばっか!」


佐藤が同年代や年上の女性にモテなさ過ぎたしわ寄せが最悪な形でシュクルに襲い掛かる。

少し自暴自棄になってきた。


「お主は先ほどから実に失敬だな! 儂はまだ若い! 永遠の若者だ! 見よ、このきめ細かい肌を」


「その発言がすでに年配者なんだよ!」


若者は自分が若いなんて言わない。『永遠の若者~』とか絶対に言わない。

まぁ シュクルは言うけど。だって本当に若いから。


「こら! 儂の魚を勝手に焼くでない! 儂の話を聞かぬか!」


「うるさいなぁ! 食わなきゃやってられないんだよ! 酒も欲しいくらいだわ!」


可愛い大うさぎとの癒しライフが⋯⋯木端微塵に夢は砕けた。 真逆の人生というか最早これは呪いだろ? 爺ばかりと出会う不幸な呪術がかけられているんだ。


てか、シュクルは場末のスナックのママじゃねーよ。そんなに爺にばかり周りにいても⋯⋯ん? スナックを始めたら⋯⋯売れそう⋯⋯? あれ? 悪くない気がしてきた。


「全く、儂のダンジョンで好き勝手しよって! 最近の若者は酷い事ばかりしよる!」


「⋯⋯え? このダンジョンって爺のダンジョンなの?」


驚く事にここのダンジョンのマスターがこの爺だった。

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