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episode.18



観劇を終え、このまま帰るかと思われたが、宮廷所属を意味する騎士服を着ていた事もあってか、偶然居合わせたお偉い様にロウェルが声をかけられ足止めをくらっていた。


どうも、無碍には出来ない相手のようで、表面上は気前よく言葉を交わすロウェルを、邪魔にならないようにと少し距離をとったところで眺めていた。


美しいドレスやタキシードを着た人々がシュナの前を横切っていくが、ロウェルが1番にしか思えない。


「お嬢さん」

「………」

「そこの素敵なお嬢さん!お一人ですか?」

「…………え?」


ぼんやりとロウェルを眺めていたシュナの前に、1人の見知らぬ男がずいっと割り込んできた。


上機嫌な上に頬が赤らんでいて、ほんのりアルコールの香りがする。


「劇場は初めてですか?」

「まぁ、はい……」

「そうですか!良ければ俺が案内しましょうか?」

「……え?…」

「美しいドレスですね!貴女によく似合ってる。このまま帰るだなんて勿体無いですよ。近くに良いバルがあるんです!よかったら一緒にどうです?」

「いえ、私は………」


会話は完全に相手のペースだった。シュナの話しを聞いているのかいないのか、どんどん話しが進んでいく。


「ここで出会えたのはきっと運命ですよ。きっと僕の心が、貴女を求めていたんです!」

「…………………」


酔っている。酒にも、自分にも。


どうやって断ろうかと考えていると、突然男がシュナの手を取った。


「どうか、あなたの時間を僕にください。少しで良いですから。きっと満足させてみせます!」

「えっ!?」


そのまま手を引かれそうになった時、シュナは背中から誰かに抱き止められた。


「待たせてごめんね、愛しい人」

「っ…………!」


その声や香りをシュナが間違えるはずがない。


途端に呼吸もままならなくなったシュナが固まっていると、ロウェルは視線を男に向けた。


「彼は知り合い?」

「いえ、あの………」


その視線が刺すように鋭い事をシュナは知らない。


そしてそんな刺すような視線を向けられた男は、途端におどおどし始める。


「そ、その、制服……。まさか、宮廷騎士……?」


気高く誇り高き宮廷騎士は、自らの剣と命を国に捧げている、騎士の中の最高峰。人々はそんな彼らに敬意払い、同時にその強さに恐怖する。


「彼女に何か用だったかな?」

「い、いえ……その……。1人なのかと、思って…」

「そう?彼女は今夜、僕と一緒なんだ。特別な用が無いからその手を離してくれないかな」

「はっ!?し、失礼しました……!で、では俺はこれで!」


逃げるように立ち去った男をぼーっと見送っていると、頭上からため息が降ってくる。


「そんなに寂しげに見送らなくても良いんじゃない?それとも、僕より彼と一緒にいたかったとか?」

「ち、違います!なんだかちょっと、気後れしてしまって…」

「ん?」

「私なんかが、誰かの目に止まる事なんて無いと思っていたので」


それが、長年の恋心を拗らせて来た今代の輪廻の魔女シュナが持つ本質なのだ。千年、輪廻の魔女はその運命の魂を持つ人の目に止まる事はなかった。だから、誰の目にも止まらない。


ロウェルは、そんな思いを抱くシュナの手を取る。


「綺麗だよ、シュナ。本当に、誰の目にも止まらないように隠しておきたいほどにね」

「え…っと……」

「だけどそんな事は君も望まないだろうし、セレネにも怒られそうだからやめておこうかな。その代わりに、これを受け取ってくれない?」


そう言ってロウェルがポケットから取り出したのは、小さな魔石が輝くネックレスだった。


魔石は色や大きさ、付与する魔法にもよるが、そもそもが貴重で高級品だ。


何よりこの国では、異性からアクセサリーを贈られるのは告白と同義だ。


「え、で、でも、ドレスと一緒に用意して頂いたばかりなのに…」

「それはそれ、これはこれだよ。こっちは普段使い出来るように」

「ふ、普段使い!?こんな貴重な物をですか?」

「君に似合うと思って」


似合うわけがない。普段はおしゃれのおの字も無いような地味で陰気な魔女なのだ。今日は特別に魔法にかかっているだけなのだ。


「………………私に?」


疑心暗鬼になり尋ねると、ロウェルは一瞬驚いたような表情をして、でもすぐにクスクスと笑い始めた。


「君は、まだ僕の気持ちを疑ってるの?」

「あ、いや、その…」

「なら、受け取ってくれる?君には必要ないかもしれないけれど、君を守るように魔法付与がしてあるから、出来るだけ身につけておいてほしいんだけど」


異性から贈られたアクセサリーを受け取ると言う事は、相手の想いを受け入れるつもりがあると言う事だ。しかもドレスの時に引き続き、2度目。


もう、逃れられない所に来ているのはシュナも分かっているし、本心では逃げたいとも思っていない。


「良いのですか?私みたいな面倒な女で」

「君以外はありえないよ」

「これを受け取っても、まだ貴方から逃げるかもしれませんよ?」

「大丈夫、絶対に逃げきれないから」


自信満々に言う所が悔しいが、今回ばかりは逃げずにありったけの勇気を振り絞った。


「じゃあ………つけてください…」


全身から汗が吹き出しそうな程に熱く、赤くなっているシュナをロウェルは驚いた目で見て、しかしすぐに微笑みに変えると、シュナに近づいた。


首元にネックレスのチェーンが当たる感触がくすぐったかったが、間近にロウェルがいる事も恥ずかしくて、シュナはぴくりとも動かないようにと神経を集中させた。


程なくして、ロウェルが一歩距離を取る。


「よく似合ってる」


満足げな笑みを浮かべるロウェルを直視できるようになるのは、まだまだ先の話。








最後までお付き合い頂きありがとうございました!

これといった修羅場もなく、私の「ただひたすらにイケメンに言い寄られたい!」と言う欲まみれの願望を詰め込んだだけの作品ですので、退屈だったかもしれません。


またいつか、次回作はもっともっと頭を使って、キュンキュンするお話しを書きたいなと思っていますので、その時はまたお付き合いいただけるとうれしいです!


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