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episode.16



早く医者を呼んでくるようにと騒ぐセレネを落ち着かせ、シュナは夢の中で女神ガイアと話をした事を説明した。


シュナの話しを、幻覚では?とセレネは疑ったが、聞く者の能力者であるエドガーが、神からのお告げと一致すると証言した事で、一旦は落ち着いた。


とは言え、輪廻の魔女が今後誕生しないかどうかは、実際にシュナがこの世を去るまでは誰にも分からない。


記憶する者の能力が返上されるとは言え、シュナが持つ記憶までも返すには至らず、能力の返上が本当に成されるのはシュナが天寿を全うした時という事になる。


つまり、シュナとしてはなんの変化もない。


「うん、やっぱりよく似合うね。綺麗だよ」

「……………ありがとう、ございます…」


もちろん、ロウェルが選んだドレスを着た姿をロウェル褒められる事を簡単に受け入れられるはずもない。


今夜はロウェルも正装用の騎士服を完璧に着こなしていて目のやり場がない。直視すると失明するのでは?と目を泳がせまくっているシュナに、ロウェルはくすくすと笑いながら手を差し出した。


「行こうか」

「………あ、はい……」


馬車に乗る、それだけなのにエスコートされてしまい心臓が痛いほど高鳴っている。


千年祭を眠りほうけてすっぽかしたシュナは、ロウェルに送られたドレスに袖を通す機会をすっかり失い、着ないのならば返すべきか?などと考えていた時に演劇を見に行く事になった。


場所は、ドレスコードが必要な知る人ぞ知る高級劇場。


「君が嫌じゃなければ、あのドレスを着て一緒に行ってくれない?」などと甘ったるい声で誘われて断れるはずもないのだが、なぜあの時断らなかったのかと後悔もしている。


誇り高き宮廷騎士である事を示す制服姿のロウェルがずっと隣にいるのだ。演劇に集中出来るとは思えない。


加えて、シュナはドレスに慣れていない。


シュナは貴族の産まれでは無いし、普段は動きやすさを重視しているし、そもそもなんでもない日にドレスだなんて小っ恥ずかしくて着られない。


そんなシュナが、あれよあれよと城のメイド達によって変身させられ、自分が自分では無いようで落ち着かない。


ロウェルから送られたドレスは、肩口が大きくあいたデザインだが、その上からローブを羽織る事を想定されたデザインのようで、魔女であるシュナを考慮して選んでくれたのだろうと思う。


馬車で揺られる間、視線を感じてふと視線を上げると、上機嫌そうに笑みを浮かべているロウェルと目が合ってしまう。


「あの、変なところがあれば教えてください。こういうの、着慣れていないので……」

「大丈夫。本当によく似合っているよ。今夜、1番美しいのは間違いなく君だ」

「…………それは…過大評価すぎます…」


シュナの容姿は極めて平凡だ。特別にスタイルが良いわけでも無く、珍しい髪や瞳の色を持っているわけでも無い。


ドレスは1番に美しいかもしれないが、それを着た人間が残念なばかりにドレスが持つ価値を下げているようにしか思えない。


それに比べて、ロウェルはいつにも増して完璧な姿だ。普段は洋服を楽に着崩している事が多いのに、今日は全てのボタンを閉めてきっちりしている。髪も整えられていて、周囲にキラキラが見えるほどだ。


どこかの王子様の間違われるんじゃなかろうかと心配になる。ぐぬぬ、と顔に力を入れていなければ、眩しくて目が開けていられない。


「ロウェル様も、素敵です。正装姿をこんなに間近で見る事は無かったので」


遠目でなら見た事があるのだが、ストーカーと思われたく無いので余計な事は言わないでおく。


ロウェルがくすくすと笑う。


「君にそう言ってもらえたら、着て来た甲斐があったよ」


そうこうしている間に馬車が動きを止め、外側からガチャリと鍵が開けられる音が聞こえてくる。


ドアが開けられると、ロウェルは慣れた様子でスッと馬車を降り、当然の如くシュナに手を差し出してくる。


残念ながらシュナはその手を取らなければ、この長いドレスを着て階段を降りる事が出来ない。


緊張しながらも馬車を降りると、劇場の付近では既に多くの人々で賑わいをみせていた。


「き、緊張します……」

「そんなにかしこまる必要は無いよ。劇場のオーナーがファッションが好きでドレスコードを条件にしているだけで、皆んなもっと気軽に楽しんでいるから」


どこか慣れたように話すロウェルに、シュナは僅かに首を傾げた。


「来た事があるんですか…?」


その問いに、ロウェルは僅かに笑みを浮かべる事で肯定した。


「付き合いでね」

「そう…なんですね………」


ズキっと胸が痛むのを感じたシュナだったが、なんとか平静を保つ。


ロウェルの生家は辺境とは言え爵位のある生まれだ。加えて、宮廷騎士で皇女の護衛を務めるほどの実力者。周囲の人間が彼を放っておくはずが無い。


今みたいに女性をエスコートしていたのかと思うと、どうしても心にモヤがかかっていくようだった。



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