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ワンダー・クロニクル  作者: Erde
第一部【出会いと別れ、そして旅立ちと】
35/76

Episode 035【真理のコンパス】

 三人を見て、笑うダビド。


「とっておきって何や? もしかして、ここにある防具でええもんを俺らにくれるって事か?」


 Trashの言葉を聞いて、首を横に降るダビド。


「ほんらな、何かちゃうもんをくれるぅいうんか?」


 Dの言葉を聞いても、首を横に降るダビド。


「それじゃあ、一体プレゼントって何の事だよ?」


 意を切らして、フェルがダビドに言い寄る。そんな三人にダビドが笑顔で話掛けた。



「お前さん達は、まだ一人前のモンスタースレイヤーじゃないだろ?」



 ダビドの言葉の意図が分からない三人。


「それは俺らのレベルが低いって事?」


 Dの言葉を聞いて、また首を振るダビド。


「違う」


 ダビドの言葉にイライラしだすフェル。


「もう!! だから、一体何だって言うんだよ!?」



 フェルに気圧されるダビド。


「悪かった。悪かった。とっておきってのは、お前さん達にモンスタースレイヤーの真理ってのを教えてやるって意味さ」

「真理?」

「そう。誤解のないように先に言っておくが、今から話す真理は全てのモンスタースレイヤーに共通する事だが。その全てが、その真理に辿り着けるとは限らない。俺からの "とっておき" ってのは、そこに辿り着けるようにする為のきっかけであって。旅をする為に必要なコンパスの様な物だと思ってくれ」


 いきなりの話に固まる三人。


「ちょ、ちょ、ちょう待って。いきなりの話で頭がついていかん」


 ダビドの話を聞いて、頭を抱えるTrash。その横に居るDの目は、もう既に遠くの方を見ていた。


「その、全てのモンスタースレイヤーに共通する真理って、一体何なんや?」


 Trashの言葉を聞いて、ダビドが質問を投げかけた。


「俺が何で、お前達モンスタースレイヤーに防具を売らないと思う?」

「ダビダビがモンスタースレイヤーを嫌いだからでしょ?」


 フェルの言葉に「違う」と答えるダビド。


「ほんじゃあ、何やねん?」

「お前達、モンスタースレイヤーは武器や防具に頼らなくても、十分に強いんだよ。だから俺は、モンスタースレイヤー以外の人間に防具を売っているんだ」

「何言ってんだよ。僕達にだって武器や防具は必要だろ?」

「何も俺は要らないとは言ってはいない。ただ、お前達は自分達自身の能力に気が付いていないって言ってるんだよ。」

「能力?」

「こればかりは、俺もはっきりとした事を言えないが。俺が知る本当のモンスタースレイヤー達は、己を刃に、そして己を盾として戦っていたんだ。」

「どういう事や?」

「さあな? それは、お前達自身が見付けなければいけない事なんだろうな」




 〈ヴォルケファーデン〉から出て来る三人。


「アカン。何の話やったんか、全っ然分からへん」

「結局、防具は普通に買ったしね」

「俺は途中から全く記憶がないわ」


 ダビドの話が一体どういう事だったのか、理解出来ない三人でいた。


「格言的なもんやったんかなぁ?」

「目的の防具は手に入ったんだし、もう良いんじゃない?」

「考えてもあかんもんは、なるようにしかならんしなぁ」


 そして三人はダビドの話について考えるのをやめ、食料品を買いに酒場に向かい始めた。酒場に向かう途中、ビッグ・ベンに似た時計塔が目に入った三人。


「ここに来て、今日まであっちゅう間やったな」

「確かに早かったなぁ」

「だね」


 今日までに起きた事を思い返す三人。


「フェー、気を付けろよ」

「うん? 何が?」

「フェルは一人で旅するからな。心配やわ」

「何言ってるの? 僕、一回も一人で行くって言ってないじゃん」



 フェルの話を聞いて、きょとんとするTrashとD。


「え……?」

「フェル、一人で旅するんちゃうかったん……?」


「違うよ」


「えっと……。フェー、どういう事や?」

「ツバキンと一緒に行くんだよ、僕」

「ツバキンって、椿さんの事か? フェル」

「そだよ。僕の事が心配だから、ツバキンが旅についてくるんだって。そのついでにグアダルに飛ばされたフレにも会いに行くって」

「椿さんって、確かメイジやったし。一緒に行ってくれるんやったら安心やな」

「フェーが心配でってのは嬉しいけど、フレさんをついでって。変わった人やな」


 そして三人が〈ギオールの酒場〉に着くと。ベルキン達、〈English.Cafe.Coccon.〉のメンバーが酒場に来ていた。


「あれ? ベルキンさん、ここで何しとんの?」


 Dの言葉に振り返る、ベルキン。


「Dさん、やっと来まし……」


 D達に話しかけるベルキンを押しのけて、椿が駆け寄ってきた。


「フェルちゃあん!!」


 フェルに抱きつき、フェルの頭を撫でくりまわす椿を目にするTrashとD。



「おい、D。この人、こんな感じやったか?」

「いや、俺も少ししか会った事ないから。よう分からん」


 小声で話し合う二人、そして二人して思った。


(この人、完全にフェル狙いで旅に行くんやな……)



 そこに押しのけられたベルキンが近寄ってきた。


「私も最近まで知らなかったんですけど。椿って、小さいものが好きらしいんですよ」

「なるほど……。」

「ところでベルキンさん達は、何でここに居るん?」

「あ、そうそう。実はです……」


 二人に話し出そうとしたベルキンが、また押しのけられた。



「椿……、その子がアンタの言ってた……、フェルちゃんなのか……?」


 腰に剣を携え、背中に盾を背負う女性が椿に話し掛けた。椿は、その女性の方に振り返りニヤリと笑った。


「どうだ、ジャンヌ!? 可愛いだろう!?」


 フェルを担ぎ上げ、ジャンヌに見せびらかす椿。そしてジャンヌは我慢出来ずにフェルに飛びかかっていった。そんな二人に対して、全く無反応なフェル。



「えっと……。ベルキンさん? これ一体、どういう状況?」


 床に倒れているベルキンを起こしながら、Trashが尋ねた。


「ですよね…。いきなり、こんなの見させられたらびっくりしますよね」

「E.C.C.でフェルって人気者なん?」

「いや、あの二人が熱烈って感じなんで。他は大丈夫ですよ」

「あのジャンヌって綺麗な人も、ちっこいもん好きなん?」

「いえ、Dさん。ジャンヌはレズなんですよ」


 ベルキンの話に固まる二人、そしてベルキンに聞き返した。



『はい……?』






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