00(プロローグ)
【 まえがき 】
■pixivからの再掲です(00~02話分)
pixivの方は削除済み
■性転換されて(渋々)アイドルをがんばるぜ!というお話です
いろいろご都合主義だと思われます
■主人公は総可愛がられ。マスコット的な感じ
2015.2.20
袖裏まで響く歓声に、落ち着き始めた心拍数がまた上がっていく。歌い踊る間でも、どうしてここまで熱くなれるのか不可思議なのだが、それでも多幸感が湧き上がっていた。そして、悪くはないなと思ってしまう自分がいる。
「――やればできると言っただろ?」
「そうだな。だけどいまも、納得はしてないから」
「それはお前の顔を見れば解る。だが、その顔もいい! 最高だ! 萌えてしかたがないぞ!」
「解った解った」
「ゆいちゃーん!」と背後からリーダーに呼ばれた【彼女】は興奮ぎみに語る男の話を切り、リーダーに走り寄った。
「アンコールいくよ!」
「はいっ!」
「はいはーい」
「もうっ! ゆいちゃんは相変わらず返事が悪いっ」
「すんません」
ゆいちゃんこと由比藤環は、元気よく「はいっ!」と紡いだ4人の女の子に視線を遣った。キラキラ飾り立てられた同じカラーリングの衣装を自分も身に纏っている。今日は2DAYコンサートの最終日。先ほど全10曲を歌い終わったところだというのに、「アンコール!」といまだに響く。
円陣を組む彼女たちはいまをときめくアイドルグループ『8月のカモミール』のメンバーである。ファンの間での愛称は、どうやら『ハチル』で浸透しているらしい。3年前の8月に結成され、リーダーとなった女の子がカモミール好きなことからグループの冠となった。実に単純ではあるが、その単純さがグループ名を覚えてもらうのに必要だっただろう。現にこうして、コンサートまで成し遂げたのだから。
ただひとり――由比藤を除いた彼女たちは、一生懸命アイドルを務めている。由比藤も必死であるが、彼女たちとはまた違っていた。由比藤がここにいる意味はただひとつしかない。
――メンバーになり『サイン』をもらうこと。
マネージャーを担う男・野出春のお蔭で、由比藤はアイドルをせざるを得ない状況に陥ったのだ。
それもこれも――全ては『8月のカモミール』の新規メンバー募集が行われていたからである。




