1章5部
僕と翠、紫は会議に参加し、各界の専門家だらけの中、それぞれの考察と懸念される事項、必要だと考えられる物等を意見していく。ただ、会議は丸1日使った長丁場になったのでここでは割愛。
ここで決まったことを簡潔にまとめると、1週間後の金曜日の夜にここに一度集合し、現地へと向かう。ただし、調査の内容等はここ以外では口外しないこと。調査内容については各々の専門分野の調査という名目で行くこと。あくまで、行ってみたらおかしな状況にありましたよ。という体をとるらしい。そもそも、ここにいる人以外にはまだ気づかれていないことなのだ。騒ぎを大きくして、パニックにしたり、起きてませんでした。無駄足でした。ということにならないようにするためでもあるらしい。そして、紫に関しては調査チームと最初の2日間だけ同行し、そのあと1日自由時間を取った後帰国するそうだ。紫に関しては観光と専門家の調査の手伝い、下見と言った体を取るようだ。それと、僕達にとっても有益な情報が得られた。CHAOSについて文学者達の中でクトゥルフでは無いかという仮説が立てられていたということクトゥルフが宇宙生物であることが発覚した。クトゥルフとの相違点、類似性を考え、詳しい発見地点及び鮮明な写真等もお願いした。ついでに、個人的なお願いもしたのだが、これは翠や紫にはまだ秘密だ。
「出発の日時も今後の予定も粗方決まったことだし、私達はそろそろ帰りましょうか。」
紫はそう言うと同行予定の方々に挨拶し、僕達は部屋を後にする。
「紫、本当に行くの?人がいなくなってるかもしれないんだよ?僕は紫にも空にも居なくならないで欲しい。」
翠は珍しく不安が隠せない様子。顔真っ青にしながら紫を引き留めようとしている。まぁ、多分引き留めても行くとは思うけど。
「気を付けてな。僕も翠と同じ考えだけど、紫1回決めたらやる子なのは知ってるから、引き留めないよ。」
「2人ともありがとう。気持ちだけ受け取っておくわ!杞憂に過ぎないと思うわよ?」
さっきまでちょっと血の気引いてた割に元気そうである。紫らしいと言えば紫らしいのだが。
「あ、そうだ。空、帰ってきたら話があるから。」
嫌な予感しかしない。背筋が凍りつくのを感じた。翠ほどでは無いが僕のこういう予感はそこそこ当たるのだ。
紫と家の前で別れてから、翠と臨時会議を開くことにする。危険なのは紫かもしれないが、何かあってからでは遅いのだ。情報共有と意見交換を兼ねてしばらくの間は定期的に行おうとも考えている。
「さて、翠君。今回こうして集まった理由は分かるかね?」
「情報共有と意見交換。と言うか僕の意見を聞きたいって感じ?」
「いいや、違うよ翠君。私が話したいのは明日のお昼ご飯についてだ。」
「え?そんなこと?」
もちろんそんな訳は無い。でも、当てられちゃうとなんとなく……ねぇ?気分的な問題?
「いや、ごめんあってる。」
「それで?何かあった?」
「なんとなくだけど。嫌な予感というか……。なんと言うか、変な感覚なんだよね。」
「背筋が凍りつくみたいな?」
「そう。まさにそんな感じ。」
それなら心当たりあると言わんばかりの翠に心でも読めるのかこの子……、と思いながらも口には出さない。いつも口に出すせいでちょっとバカにされるからとかそういう訳じゃない。違うからね!
「心当たりというか、僕の嫌な予感する時もそんな感じだからさ。何となくわかるというか、経験談と言うか……、なんと言うかそんな感じ。」
「事の発端の時も?」
CHAOSの研究所の周辺のことを調べ始めたキッカケも翠の嫌な予感がしたからだったはずだ。
「そうだよ。今は更に嫌な予感がするんだよね。あの場でそんなオカルトじみた事言えなかったけどね。あの会議の前は全くって言っていいほど無くなってたの。まるで嫌な予感が消える。逆に怖いよ?嵐の前の静けさとでも言えばいいのかな。そんなかんじ。」
特にヤバい時は一瞬又はしばらく全く嫌な予感がしなくなるらしい。つまり、今回は相当やばいのかもしれない。ついでに、地味に気になっていた件についても聞いてみる。
「ついでだから聞きたいんだけど…。」
「うん、何?」
「紫のあの言葉どういう意味だと思う?あの辺から嫌な予感がしたんだよね。」
「ん?……あぁ。あれね。まるで死亡フラグみたいなやつね。」
「え、死ぬの?」
アニメとか漫画とかによくあるこのキャラ次死にますよ的なあれである。いや、実際に言ってるの初めて見たけど。
「いや、紫の事だから生きて帰ってくるんじゃない?死亡フラグ立てても死なないなんてこと結構あるし。」
アニメそこまで詳しくないからあんまり知らないけど、そういうこともあるらしい。確実性の無いものならいいんだけど。予想外の指摘だったが、聞きたかったのはそこではない。
「ならいいんだけど、僕が気になってたのはそこじゃなくてね……?」
「内容の方?」
「そうそう。そっちの方が気になってた。」
「うーん。告白でもされるんじゃない?知らないけどね。」
何故か少し膨れ面でそう答える翠。何、どゆこと?
「何、翠、紫のこと好きなの?」
「確かに好きだけどさ!あくまで友達としてだよ!」
なるほど、よくわからないです。まぁ、これ以上この話を続けてもいい方向には行かなそうだ。
「空は紫のこと好きなの?」
お前が広げるんかーい!と心で思いっきりツッコミを入れながら、僕は正直に答えることにする。
「んー……。好きだよ。あくまで、僕も友達としてだけど、翠と紫は僕にとって大切な友人だし。2人とも同じくらい好きだし、かけがえのないものだと思ってる」自分で言ってて恥ずかしくなるので正直勘弁して欲しい。
「そっか。もしほんとにそうだったらちゃんと今みたいに本当の気持ちを伝えてあげてね。」
「まじで……もっかいやんの?これ……。」
正直1回でもかなり恥ずかしかった。やらなきゃダメ?ほんとにダメ?翠先生代わりに……。
「本当に告白だとしたら、の話だから!あと、ウヤムヤにしたり、ちゃんと答えてあげられないのは紫が可哀想だよ。断るにしろ、受け入れるにしろちゃんと話さなきゃダメ。」
「わかったよ。その時はちゃんと話すし、答えも出す。違うのが1番いいんだけどさ。」
正直に言います。告白だなんて全く考えてませんでした!ちょっとお金貸してくれる?的なやつかと……。持ってません!って答えたら、ジャンプしてみ?ちゃりんちゃりん。ってなる奴だと!体育館の裏とかに呼び出された気分だったよね。
「告白じゃないと思うけどなぁ……。金出せ的な?」
「ないね。紫に限ってそれはないよ。」
「ないよなぁ……。」
自分でもそんな事は分かってた。でも、告白こそないかなと思ってたよ。特に僕になんてない。紫は多分翠のことが好きだと思う。なんの根拠もないし、聞いた訳でもないけど。
「で?告白だったらどうするの?」
「……どうしよう。大切な友達だけど、そんな風に考えたこともないよ。」
失いたくない。けど、それは翠の事も紫の事もだ。あくまで大切な友人として。恋人になんてなるとは思ってもいない。そもそも、全く無縁の話だと思ってた。そんなこんなでこの調子のまま翠はこの話題から変えることも無く、不毛な誰も得のしなそうなまま夜も更けていく。
「空、もうすぐ日付変わるし今日はここまでにしない?」
翠はとっても眠たそうな様子でそう言った事により、この争いは幕を閉じた。長かった……。




